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エピローグ

 あの前世を思い出した日から色々なことがあった。

 今日は運命の日、だったかもしれない日。私達は、今日王立学院の卒業の日を迎えた。

 王立学院の卒業式の後は、卒業パーティが盛大に開催されて、卒業生たちは正式な社交界デビューを迎えることになっている。そして、その年の卒業生達の中で上位にあたる者達を中心に、今後の予行練習も兼ねて卒業生たちがパーティを取り仕切る。だから、今年はラウレンス様を中心にパーティを執り行うことになった。

 ゲームの中では、ヒロインが攻略対象達と卒業パーティの準備をし、悪役令嬢たるシルフィア・バルケネンデはそれを忌々しく思いますますヒロインへの嫌がらせを加速させて、しまいには階段からヒロインを突き落とすまでに至っていた。そして、卒業パーティの場は断罪の舞台となるのだ。

 現実では、ミア嬢は学院を去っていて、卒業パーティはつつがなく行われようとしている。・・・考えてみると、この場であんなことをしてしまうってすごいな。パーティで誰かを裁くなんてありえないし、ゲームの悪役令嬢シルフィアはいやがらせにとどまらず、階段から突き落とす殺人未遂だか傷害だかを犯してるから、なにかしら裁かれる可能性はあるけど、いくら前世とは全く違う王政の下でも、王太子があんな風に裁くなんてありえない。

「シルフィア?」

しばらくぶりに前世のゲームの記憶を思い起こしていると、いつの間にか隣にはラウレンス様が立っていた。

「どうかしたのか?」

「・・・無事にこの日を迎えられたと感慨にふけっておりました」

 相変わらず前世のことは話せていないけど、卒業式を終えたところなのだから、学生時代を思い返して感慨にふけってもいいだろう。パーティの準備はそれなりに大変だったから、そういう意味でも無事にこの日を迎えられたとも言いたくなるし。

「確かに色々なことがあったな」

ラウレンス様は頷いてから、私をじっと見た。

「ラウレンス様?」

「シルフィア」

「はい?」

「シルフィアには、何か私には言えないことがあるのだろう」

思いがけないラウレンス様の言葉に私は固まった。

「それは・・・」

「いいんだ。今すぐに言ってほしいわけじゃない」

そんなことはないと嘘がつけずに困った顔をしてしまったんだろう私の頬に、ラウレンス様がそっと触れた。

「だけど、いつかは全てをわかちあってほしい」

・・・そうか、わかってしまっていたんだ。私がずっと何かを言えないままでいることが。

「はい」

今なら、私もすべてをラウレンス様に言える気がして、私は頷いていた。

「2人の世界を作るのはいいですが、そろそろ開始の時間です」

「コルネリス」

いきなりかけられた声に振り向くと、コルネリスが、フロリーナとエルベルトと共にそこにいた。ラウレンス様がコルネリスを呼ぶ声は咎めるかのように響いたけど、コルネリスは全く気にしていない様子で肩をすくめた。

「そろそろ参りましょう。開会はやはりお2人にしていただかないと」

フロリーナがいつものようにおっとりと、でもきっぱりと告げた。

「ああ、わかった」

頷いたラウレンス様が私に向かって差し伸べた手を取ると、そのままラウレンス様は自然に私をエスコートしてくれる。歩き出した私達の後にコルネリス達が続く。

 ・・・私にとってのバッドエンドを避けるためにずっと必死だった。最初は一人で何とかしなければいけないと思っていたけど、お兄様が、家族が助けてくれて、私は一人じゃないと思えた。

 そして、今また私は一人じゃないと思った。私を信じ、助けてくれるのは家族だけでもなかった。みんながいる。今まで大切に思ってきたみんなが私のことを大切に思って、信じ助けてくれる。

 こうやって私はこの世界でシルフィアとして生きていくんだ。ゲームの時間を過ぎても。これからきっと色々なことがあるのだろうけど、それでもみんなと共に生きていける。

 さあ、まっさらな人生が始まる。

書きたい衝動のままに勢いで書き始めましたが、皆様のおかげで完結にこぎつけることができました。大変つたない作品ではありますが、おつきあいいただいてありがとうございました。

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