56話『お盆』
今日からお盆だ。
お盆は実家に帰ることになってる。
親戚が集まりBBQをするのが毎年恒例だ。
「玲央君もまた大きくなったね~」
親戚のおばちゃんは毎年僕が大きくなったと言ってくる。
中学時代は1年で10cmくらい伸びた頃があったのでその時言われるのは分かるけど対して伸びなくなった今も言うのは辞めて欲しい。
「兄ちゃん兄ちゃん」
親戚には小さい子達もいる。幼稚園から中学生までの子が4人いる。
みんな、僕のことを兄ちゃんと呼び慕ってくれている。
今年もみんなで遊んだ。川遊び、僕は泳げないから浮き輪で流れるだけだけど、みんな知ってるのでそのまま浮き輪にくっついて流れてまた上流に行き流れるって遊びだけする。
みんな楽しんでるから気が楽でいい。
大体お盆の最初の日はこんな感じで終わる。
次の日。
今日は昼からBBQをやるので準備をする。天気も晴れで絶好のBBQ日和だ。
まぁ大人達も沢山いるので僕がやることは荷物運びとかくらいで後はちびっ子達の面倒見てるだけだ。
姉さんは受験生なので家で勉強してる。昼頃に呼べば来るらしい。
◇
「玲央、そこにある紅茶取ってー」
「はいよ」
昼になったので姉さんも呼びBBQスタート。
どんどん焼かれて行った肉、野菜をみんな食べていく。
話の話題は子供のことや最近の面白い番組などなど、そして姉さんが僕のことをネタにし出した。
「玲央ったらね2人の女子から告白されてるんだよ」
「なんだって!?」
「あらまぁ」
「兄ちゃんすげー」
三者三葉。それぞれ反応が違ってなんとも面白い。見てる側なら・・・。
「玲央!お前そんなに女の子にモテるのか!?父さん知らなかったぞ!」
うるさいぞこの親は。僕だってビックリしてる。
子供達は目がキラキラしてるしそのお母さん達はニヤニヤとして楽しそうだね。
「姉さん、なんでそれ話題にしたんですか?」
「だってーみんなも気になってるだろうし」
「なにが?」
「玲央の恋愛に関して」
「別に気にならないでしょ」
「そんなことは無いよ、だってもう高2だよ?あの学校に行ってるんだから恋愛に関しては気になるでしょ」
「それ姉さんもだからね」
「私の事はいいの!?」
いや良くないでしょ、姉さんもう卒業だよ?
受験勉強があるから無理ってことか?
「玲央・・・2人からの告白なんて凄いことだぞ、父さんだってそんなモテ方したことないんだぞ」
「いや、知らないって・・・」
「お父さんお見合い結婚だからね、玲央がモテてて羨ましいのよ」
「そうなんだ」
母さん達はお見合い結婚だったのか、知らなかったな。
姉さんもこのままだとその道辿っちゃうぞ。
その後も話題が今度は姉さんのことになったりと変わりながら昼の時間は過ぎていった。
◇
夜には珍しく父さんから話があると言われて呼び出された。
「父さんどうしたの?」
「そこに座れ、ちょっとした雑談だ」
「わかった」
そして縁側に父さんと二人で並んで座る。
なんの話だろ?
「最近どうだ?」
「どうって?」
「学校での事だ」
「普通だよ」
「そうか・・・2人からの告白なんて凄いな、どんな子達なんだ?」
「学年1の美少女とギャルっぽいけど真面目な子」
って僕は何真面目に返してんだ。
「そうか、すごい子達だな・・・・・・お前の今の気持ちはどうなんだ?」
「わかんない、二人とも僕のことが好きだって言ってくれて嬉しいし返事も文化祭まで待っててくれる。
でもその期日まで後少しだ、僕は今どう思ってるかわからない。恋愛って難しいね」
「そうだな、恋愛は難しい、そもそも恋愛に答えなんてあるのか?俺はないと思う。
自分がどう思ったか。その人とどうなりたいか、それでいいんじゃねぇかと思うんだ。
その人との未来で振り返ってみて、その時に感じた事が恋愛の答えになるんじゃねぇか?」
そんなこと考えたこともなかった。というかわかるわけもないか、いまの父さんだって見つけることの出来ない答えなんだろう。
でも言いたいことは伝わってきた。結局自分の心・・・感情が全てなんだね。
じゃあこの前のあれってそういう事なのかな?
まだ期日はある。ゆっくりと自分の気持ちを確認していこう。
「ありがとう、父さん、わかった気がするよ」
「そうか・・・彼女が出来たら連れてきてもいいからな」
「まぁ、報告くらいはするかも、じゃあ僕は寝るね。おやすみ」




