真実3
馬車は問題なく進んでいる。
まだ昼頃だが、道程に問題はなく順調な旅に見える。
昼食を取った後に気になっていた事をアルフさんに聴いて見ることにする。
「アルフさん。アルフさんは古代魔法文明時代について研究をしていると聴いたのですが、古代魔法文明時代について聴いても良いですか?」
アルフさんは片メガネを手で直しながら聴いてくる。
「ほう。アラン殿は古代魔法文明時代について興味があるのか」
「はい。出来れば、転移とかそういう魔法について興味があります」
「その歳で古代魔法文明時代について興味があるとは中々良い趣味をしているな。で、転移であるか。それは、国の機密になるので答えたい所なのだが、答えられないのだ」
「機密ですか……」
「うむ。どこにあるのか。どこに移動できるのか。そういうことが分かれば旅人にも商人にも喉から手が出るほど欲しいものであろう?」
そりゃそうだろう。移動時間を短縮できるのだ。誰でも欲しがるに決まっている。
「だが、反乱や戦争が起こった時にその転移や転送の場所が分かってしまえば、悪用されてしまう」
「なるほど。確かに、安全な人が使うわけではないですからね。悪用しようとする人にとっても利があると」
「そういう事だ。だから、一部の貴族や王族に、考古学者しか知らないのだ」
ふむ。考古学者ってことはアルフさんも知っているってことなのかな。
恐らくそうなのだろう。この口ぶりからすると。
「アルフさんもご存知なんですか?」
アルフさんは苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
「黙秘権を行使するのだ」
それは肯定しているのと同じことじゃないんですかね……。
それにしても、やはり転移や転送の魔法はある。ということが断定出来た。
これはかなりの収穫だ。希望が湧いて来た。
「理解しました。ありがとうございます」
アルフさんは未だにバツの悪い顔をしている。
まぁ、国の機密事項を冒険者にバレてしまったのだ。それもしょうがないだろう。
でも、その転移や転送のある場所を私は知らないし、別に問題はないんじゃないかな。
ギリギリセーフみたいな?
「失態を演じてしまったのだ」
「ははっ! 大丈夫ですよ。誰かに言いふらす事も場所もわかりませんからね」
「それもそうであるな。なら問題ないか」
「ええ、そうです。それよりももっと古代魔法文明時代について聴きたいのですが……」
アルフさんに古代魔法文明時代について多く聴いた。
それは本に載っていた内容と被っていることも多くてあまり収穫は少なかった。
でも、古代魔法文明時代がどれだけ栄えていたのかが分かった。
空を飛ぶ船が行き、外国へは簡単に行き来が出来るようになっていたとか。
家事を簡単にするための魔道具が開発されたりとか。
意外に、軍事的な運用以外にも一般市民向けへの魔道具が大量に作られていたようだ。
そんな多くの功績を残した国が滅びてしまうとは……。
「それは仕方ない事なのである。古代魔法文明時代には魔法が使える者が優遇され、魔法が使えない者は差別されていた。魔王との戦争があったとはいえ、反乱の火種は燻ぶっていたのだ。もし、戦争が無かったとしてもいつかは爆発して反乱が起きていたことは明白だ」
「そうですか……」
魔法が使えない私には実感が少ないけど、確かにそうなんだろうな。
魔法が使える者だけが優遇される社会だとしたら、それは生まれた時から差別されるということだ。
ただ、魔法が使える。それだけでだ。
そんな事に納得できる人なんてそうそういない。
反乱は確実に起きていたのか。
「今回行く遺跡も、古代魔法文明時代に関係している。ということですか?」
「いや、それは分からないのだ。古代魔法文明時代なのか……それよりももっと前の文明の時代の遺跡の可能性もある」
「そうですか。つまり、行ってみないとわからないと」
「その通りだな」
これは波乱が巻き起こりそうな展開ですね。
何も問題が無い事を祈るよ。
「そう言えば、アルフさん聴きたい事があるんですけど良いですか?」
ふと、気になったことを聴いて見る。
「何かな? 答えられるなら答えるぞ」
「古代魔法文明時代については聴いたし、本で調べた事もあるんですけど、それよりも前の時代ってのは何かわかっていたりしているんですか?」
「いや、正直に言うと全然わかっていないのだ」
え! そうなんだ。古代魔法文明時代については本が大量にあるのにそれ以前の事はわかっていないのか。
「ただ、魔力を使わない文明で会ったのにも関わらず、かなり栄えていた時代のようだ」
「魔力を使わない文明ですか……」
「そのようだ。ただ、その文明は何かによって破壊されてしまったようだ。なので、余りその時代についてはわかっていない。というのが正直なところだ」
「なるほど」
今回の遺跡がその遺跡かもしれないのだ。
気合も入っているんだろうな。
昼食を食べて夕方になろうとした頃だ。
ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
と、警笛の音が鳴った。
リリィが飛び跳ねて目を覚ました。
私は扉を開けて外に出る。
その後に続いてリリィと護衛の人も外に出てきた。
魔闘気を使って「観」を使う。
遠くに見える姿はオークが6匹だ。
ドスドスと小走りにこん棒を振り回しながら近づいてきている。
距離は200m程だ。
まだ、距離は離れている。
「リリィ。精霊魔法で敵を倒してくれるかい?」
「うん。任せて」
「零れた相手は私が倒すから気にせずやっちゃって」
「わかった」
敵が100mまで来たところで青い精霊が6体上空で氷塊を飛ばし始めた。
だが、まだ遠いみたいで当たっている気配はない。
50m地点まで来た。
ここまで来て、敵に氷塊が当たり始める。
一体が頭に拳大の氷塊がぶつかって倒れた。
他のオークにも当たっているが、致命的な一撃にはなっていない。
そのまま突っ込んでくる。
10m付近まできた。
流石に、敵が氷塊の雨に前進できずに足が止まった。
そして、二体、三体目が倒れた。
「リリィ。あとは任せて!」
「うん!」
氷塊の雨が止んだところで上段の構えで右袈裟にオークを斬り伏せる。
そして、逆袈裟にもう一体を両断。
最後の一体は首を刎ねて倒した。
「ふぅ……なんとかなったね」
「お兄ちゃんかっこよかったよ」
「ありがとう。リリィも大分助かったよ」
「えへへ」
丁度良かった。オークは食料にもなる。
正直、食べたくはないけど、保存食の節約だ。
6体ならかなり食料に余裕が出来る。
っていうか、そんなに持って行けないか。
精々、2体をもっていけるくらいだな。
とりあえず、魔石を取り出して、オークの死体を4体持ってきた。
馬車は止めている。今日はここより少し先で休むことにしよう。
「アルフさん。今日はここより少し先に行ったところで休みましょう」
「あい、わかった」
馬車のスペースにオークを乗せた。
護衛の人は少し嫌な顔をしていたが、気にせず少し進む。
そして止まった所で、オークを解体する。
リリィに焚火を点けて貰って、オークの肉を一口大に切ってから火に炙っていく。
肉の焼ける音とジュウジュウと油の炙られる音が響く。
思わず喉が鳴った。
そして、私とリリィは焼けた串を口をはふはふさせながら食べる。
うん。美味しい。
「ふむ。オークを倒してそのまま食べるとは冒険者とは豪快だな」
アルフさんは串を持ってはいるがまだ口にはしていないようだ。
護衛の人も同様だ。
気にしてないのは従者の人と私達くらいだ。
そりゃ、私もそうだったから言えないけど、保存食の節約にもなるし食べて欲しい。
「まぁ、食べてみてくださいよ。美味しいですよ」




