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さようなら はじめまして  作者: 鈴木 淳
第四部 安息
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安息3

 リリィを寝かしつけた後、机の椅子に座り、ランプの魔道具を点灯する。

魔闘気について。

この本は今の私にとってはかなり重要な本だろう。

なにせ、今まで全て魔闘気によってなんとかしてきたのだから。

魔法は使えなかったが、生き残れたのは魔闘気が使えた。

その一点しかない。



魔闘気について 

著者 アニカ=トール

ページを捲っていく。静寂の部屋の中に紙が捲れる音だけが響き渡る。


そうして、4分の一程、進んだところで一旦休憩することにした。


思わず熱中してしまった。

もう、2,3時間は見ていたのではないだろうか。

だが、収穫はあった。


まず、魔闘気とは魔法は使えないが、魔力を持つものが魔法使いに勝つために編み出した技法の事らしい。

昔も今も魔法が使える。それだけで、かなりの地位や名声、富を得る事が出来るその存在に打ち勝つ為に魔闘気は生まれ、そして、それに付随して剣術等が普及したらしい。


最初に魔闘気を纏う事。この状態の「穿(セン)」というらしい。これが魔闘気の基本形であり、身体に魔力を流し、全体的な身体能力を向上させる事らしい。この状態は全体を通してある程度なんでも出来る状態らしい。達人クラスならこれだけで他の応用技を使わなくても良いそうだ。


次に、目に魔闘気を集中して纏う応用技のこと。この状態は「観(カン)」というそうだ。より多くの魔力を目に集中させることによって、遠くの物体を見る事が出来る。

また、相手の魔力を見る事や、魔法の発動に必須な幾何学模様の魔方陣を視認することも出来るそうだ。

それは暗闇でも魔力の流れを見る事が出来る。

これは俗に言う暗視ってことだな。

物質に流れている魔力や自然界に流れている魔力も見る事が出来、主に精霊等の魔力だけで実体を持たない者もこの技で見る事が出来るらしい。

より、精錬されたら遠くの物を見る。少量の魔力で相手の魔力を見る事も出来るそうだ。


最後に、耳に魔闘気を集中して纏う応用技。この状態は「聴(チョウ)」だそうだ。人間の聴覚を強化し、より遠くの音を聴くことも出来る。

また、人間の耳では聴こえない音域も聴く事が出来るらしい。

これは蝙蝠とかの超音波も聴く事が出来るってことなのかな?

凄いのかどうかは分からないな。

これもまた、鍛錬で強化出来るらしい。


まだ、少ししか見てないが、思いの外に収穫はあった。

今まで正式名称を知らずに行っていた行為に名前があった事とその利用方法だ。

面白い事に龍のブレスは体内の魔力を口から放射する事で発現させていたらしい。

簡単に言えば、龍のブレスとは魔法の一種ということだろう。

ただ、その威力は幼龍でも簡単に焼き殺せるものだった。

だが、今ならそのブレスの予兆も観(カン)を使えば見れた事だろう。

あの時、それが出来ていれば、幼龍との闘いも死者が減らすことができたかもしれない。

今更、嘆いても仕方が無いが悔やまれる。


早くにこの事実を知っていれば良かったな。




さて、そろそろ寝るか。

ベッドにリリィを起こさないようにそっと入って、横になる。


「…………んぅ」


すると、リリィの両手が私の左腕に巻き付いてくる。

最近は、私がリリィの抱き枕状態になっている。


家族がいない寂しさを私で誤魔化しているのだろうか。

私も嫌ではないので好きにさせている。


それに、リリィはもう私の家族みたいなものだ。

リリィは記憶喪失だったし、それに気づいた時には奴隷にされていた。

思う存分、自分の好きなようにやらせてあげたい。

それが、私に甘える事だとするなら、私は全力で甘えさせるだけだ。


これもノインさんに聴かれたら「ロリコン」って言われるのだろうか。


まぁ、良いさ。

とりあえず、明日は宿屋でご飯を食べたら図書館に行こう。

リリィには退屈な思いをさせてしまうかもしれないけど、それは我慢して欲しい。


そんなこんなで直ぐに眠気がやってきて寝てしまうのだった。



 次の日、朝起きたら寝苦しさを感じる。

横を見るとリリィが顔の目の前にいる。

しかも両手で首に抱き着いている。


朝起きて、目の前に美少女この場合、美幼女がいると焦る。

なにか間違ったことはしていないかと一瞬、思ってしまう。

まぁ、そんな事はないけどさ。


鐘の音が聴こえる。

時刻は朝の6時かそれとも8時か。

この朝の静けさから6時だろう。

なら、このままリリィが起きるまで待つのも悪くはないかもしれないな。

どうせ、目的の図書館は二の鐘つまり8時からだ。


ぷにぷにと頬を突く。

柔らかくてしっとりしている。


「んんぅ……」


ちょっと、嫌がっているようだ。

だが、首の拘束は意地になっても離さない気らしい。

朝の日で光る黄金色の髪は煌びやかで神聖さを感じる。

ツインテールを解いている。そのストレートロングな髪もなにか魅力的だ。


また、ぷにぷにと頬を突く。


「ぅんん……ん?」


蒼い宝石のような目が薄っすらと開いて、私を見ている。

どうやら起きてしまったようだ。

目を擦っている。


「おはよ。お兄ちゃん」


リリィは私がいる事に喜んでいるかのような笑顔で挨拶をする。

まるで、太陽のような笑顔だ。

誰が見ても微笑んでしまう魔法。

そんな素敵な笑顔がこちらをみて微笑む。


「おはよう。リリィ」


そうして、私達の朝は始まった。




 私は服を着替えて直ぐに準備を終えてしまう。

街中で人に襲われる心配は少ないだろうが、一応、護身の為に片手半剣。片手剣。ホルスターの中のダガー8本を確認する。

一応、ポーションのホルスターも装着しておこう。

ポーションは2本固定されている。

ああ、後、お金だな。金貨は流石に持って行くのが怖いので、背嚢の中に入れておいて、

銅貨、鉄貨、青銅貨の詰まった小袋を持って行くことにする。

まぁ、これなら大丈夫だろう。

外套を着て、準備完了だ。


リリィは昨日は赤と白のエプロンドレスに赤いフードという赤ずきんな格好だった。

だから、今日は水色と白のエプロンドレスに赤いポンチョを付けた不思議の国のアリスのような格好だ。

髪も自分でツインテールにもうしてしまったらしい。

自分で自分の事が出来るのは偉い事だ。うんうん。


「お兄ちゃん。どう?」


どう? とはどういうことかな? 余りの可愛さに抱っこしたいとかそう言うことかな?


「今日も可愛いよ」


無難に返答する。


「えへへ、ありがとう。お兄ちゃんも恰好良いよ」


すると、笑顔になった。

良かった。間違えてなかったみたいだ。

リリィの機嫌を損ねるとブスーっと頬を膨らませて2時間くらい口を聴いてくれないから困る。


「さ、ご飯でも食べに行こうか。お姫様」


「うん。行こう。騎士様」


彼女は上機嫌に手を取って部屋を出る。鍵を閉めて、宿屋の食堂に行く。


今日のメニューはなんだろうか?


宿屋の店主に朝食を頼むと、玄米と味噌汁に焼き魚と漬物という一目惚れしそうなメニューだ。

うん。和食最高!


ただ、ナイフとフォークで食べるってのは使いづらいよね正直。

リリィも焼き魚を食べるのに苦戦している。


私はなんとかのんびりと20分程で食べたが、リリィはまだ格闘している。


リリィが食べ終わったのはそれから10分後くらいだ。

食器を片付けて、宿屋を出る。


さて、今日は何をしようか。

まず1つ目に図書館は確定だ。

だけど、まだやってない。二の鐘がなるまで1時間はあるだろう。


それまでに、武器屋でも見てみるか。

カラエドの冒険者ギルドのノックスさんから貰った片手半剣はまだ愛用しているけど、

ダガーとかはもう限界かもしれない。

砥石を使って、誤魔化してきたが、これまで何度も酷使してきたからね。

そろそろ買い替えたほうが良いかもしれない。

臨時収入も手に入ったし、そうしよう。


まずは武器屋に行こう。

そしたら図書館だな。

うん。今日はそうするか。


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