記憶4
今日はお父様に呼ばれたので、屋敷の中を歩いてお父様の私室に向かっています。
もう私は一人で歩ける程度にまで復活していました。
長時間走ったりすることはできませんが、歩くだけなら普通の人と同じ程度には体力が付いたと思っています。
まぁ、そこまで厳しい訓練もしていませんからそうなんですけどね。
あれから、四ヶ月が経ちました。
春になって冬の寒さももう懐かしくなってきた頃です。
お父様が急遽呼ぶことだから何かがあると思うのですが、一体なんでしょうか?
あ、お父様とはまだ仲直りしていません。
アランの事については仕方ない事だと納得はしていますが、心は納得していません。
そもそも、お父様が追放しなければ私とアランは結ばれていたかもしないのに!
それを思うと余計腹が立ってきます。
お父様の私室に着きました。
ノックを2回してから声を掛けます。
「お父様。エリカが参りました」
「入っておいで」
扉を力強く開けます。
部屋の中にはアレンとギルド長が先にソファーに座っており、お父様もギルド長の隣に座っています。
「おいおい、ご機嫌斜めかよお嬢」
「う、うるさいアレン! ちょっと力んだだけよ」
「ちょっと、ね」
そう言って笑う。
全く、人を馬鹿にするのが好きなんだから困る。
子供か!
「とりあえず、二人とも話があるから聴いてもらえるかな」
「はい」
「あいっす」
お父様の声に返事を返す。
というか、慣れているとはいえ貴族相手にそんな返事でアレンは良いのでしょうか。
まぁ、ギルド長とは知古の中なので、その息子のアレンの態度には目を瞑っているのだろうでしょうけど。
「これから、一週間以内に星読みの巫女が来る」
その言葉にはっとする。
星読みの巫女とは女神の声の代弁者であり、女神の声を聴くもの。
時に、人に女神の言葉を伝えて導き、争いの火種を防ぐ。
間違いなく私が覚醒したことが関係しているのだろう。
「それは私に伝える事があるために来るということですか?」
「ああ、そうだね。でも、まず光の巫女が覚醒したら星読みの巫女が未来を視るのが昔からされてきた伝統だ。今回はそれをしに来るだけだろう」
「領主様。お嬢が覚醒したのは冬の始まりの頃だぜ。流石に遅いんじゃないか?」
確かに、あれからもう五、六ヶ月は経っている。
「東のオオエドにてなにかあったのだろう。それに、冬の間に星読みの巫女を連れてくるわけにもいかないから、寒さが厳しくなくなってから来ることにしたんだろうさ」
「なるほどな」
「それで、私は何をすれば良いのですか?」
「いや、特に何もしなくてもいい。星読みの巫女のお告げは代々、二人だけで行われてきた。だから、エリカは星読みの巫女と二人で対話をすれば良い」
「じゃあ、俺たちはその護衛をすれば良いってことか」
「そういうことだ」
ギルド長とアレンが頷く。
「星読みの巫女とは何歳の方なんですか? なにか、失礼をしてしまったら困るのですが……」
「歳は14歳だからエリカより1つ上なだけだね。まぁ、そんなに礼節に対して厳しい人じゃなくて大らかな人らしい。気にしないでいいよ」
「そうですか。安心しました」
これで、いきなり失礼な事をしたら大変な事になってしまうかもしれないからね。
貴族とは面倒くさいものです。
「とりあえず、来たら早馬が来るから準備はしといて欲しい。良いかな」
「分かりました」
「ああ、大丈夫だ」
「うむ」
三者三様に答え、立ち上がる。
星読みの巫女か……どんな人なんでしょうか?
それから、3日後に早馬が来ました。
ついに、星読みの巫女がカラエドに到着したようです。
馬車は真っすぐにこちらに近づいてきているようだ。
私とお父様は玄関で出迎える為に、外で待機している。
アランとギルド長が先に来たようだ。
護衛として、私とお父様の後ろに控えている。
馬車が中に入ってきました。
貴族の馬車らしく、4人用の白い馬車です。
中から、護衛の男性が2名降りてきて、その後に少女が降りてきます。
白を基調にした豪華な衣装に杖を持っています。
顔はとても白く綺麗だ。顔立ちもとても綺麗だ。
蜂蜜色のロングの髪が光に当たって美しい。
歩くたびに杖がシャランと音を鳴らして近づいてきます。
「どうも、皆さま。私が星読みの巫女のエリナリーゼ=ラッセルと言います」
スカートの端を片方を摘まんで礼をする。
「ご丁寧にカラエドの領主。デニス=ランドと申します。こちらは娘のエリカです」
「エリカです。エリナリーゼ様。どうぞ宜しくお願い致します」
「あなたが、わずか13歳で覚醒したというエリカ様ですね」
「は、はい」
「では、伝えたい事があります。お部屋を用意してもらっても構いませんか?」
「はっ! こちらへ着いてきてください」
お父様が礼をして中に入っていく。
通された場所は客間の一室だ。
「こちらへどうぞ」
「ありがとうございます。では、エリカ様も一緒に」
「はい」
うう、緊張する。でも、仕方ないよね。これも貴族の務めの一つだし。
中に入って扉を閉める。
「ふぅ……エリカさん。疲れましたね。とりあえず、貴族としての礼節は結構です。お友達のようにお話ししましょう。幸い、歳も近いですしね」
「本当ですか!? 正直、疲れてたので嬉しい!」
「うふふっ私の事はエリナと呼んでください。エリカさん」
「私の事もエリカって呼んでよエリナ!」
「そうですか。わかりましたエリカ。とりあえず、座りましょうか」
ソファーに座る。なんか星読みの巫女っていうから堅苦しい人だと思ってたけど、優しそうな人で良かった!
「とりあえず、エリカは13歳で覚醒しました。その異常性はわかっていますか?」
「うん。アランの背中を触れたら気を失ってしまったみたいなの。あ、アランっていうのは冒険者の人なの」
「そう。それです。私も信託で聴きましたが、聖戦士が覚醒を促すと占いにでました。恐らく、その人が覚醒を起こした張本人。そして聖戦士の一人でしょう」
「アランが聖戦士? 聖戦士って良く分からないのよね。魔族と戦う光の乙女の側近って四英雄だし。聖戦士ってなんなの?」
「そう思うのも仕方ありません。ですが、星の救世主も現れたようです。光の乙女の覚醒に聖戦士。そして、星の救世主の登場。なにかがあるとしか思えません」
「待って。星の救世主って言うのは何?」
「星の救世主とは、星が滅亡の危機に瀕したときに現れる者です。その者は星を滅亡から救うために生まれ、この世界を救う為に行動します」
「何? ってことは、この星は今、滅亡の危機に瀕しているということ?」
「そうです。恐らく、魔王の復活が近いのでしょう。そして、それを防ぐために聖戦士、光の乙女の覚醒、星の救世主が現れた。そう取るべきです」
「具体的な女神様からの信託はないの?」
「女神様からは、闇が星を陥れようとしている。その時、聖戦士、光の乙女、星の救世主が現れる。彼らは星の危機を救う為、行動を開始し始める。と」
「うーん。正直、わからないわね」
アランが聖戦士ってことで、私が光の巫女ってのは分かっているけど、星の救世主っていうのは誰の事だろうか。
「それと、聖戦士と光の乙女を直ぐに引き合わせては行けないと。聖戦士は星の救世主を救う為、その行動を阻害することになるとも仰っていました」
「え! なにそれ!?」
それって、アランには直ぐに会うなってこと?
そんなのってないじゃない!
せっかく、私達のご先祖様が願ってた思いが叶うのに!
「詳しくはわかりません。でも、オオエドの守護龍様もそのように仰っておりました。なので、聖戦士と星の救世主については放っておくのが良いかと」
沸々と怒りが沸いてくる。
私達の事を本当に理解しているんだろうか?
変な事言ったら、ぶん殴ってやるつもりだ。
「ちょっと、その守護龍様に会わせて。言いたいことが出来たから」
「わかりました。それと女神からもう一つ。守護龍様と光の乙女を引き合わせるようにとの言伝もありました」
エリナは片目を瞑って、舌をペロッと出す。
その仕草に不覚にも可愛いと思ってしまった。
「では、話は纏まりましたね。とりあえず、オオエドに向かいましょう」
「ええ、そうね!」




