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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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高橋武

 盆休みの終わり。高橋武たかはしたけるは驚いた。千葉県南部の海辺から車で帰る途中、公園から独特な旋律が耳に入ってきた。重厚なベースと軽妙なドラムの響き。その二つが見事に混ざり合って空まで届いていく。晴天時の現在では胸が躍る。


 素人の耳では物足りなく感じるだろう。むしろ音楽だと認識出来ないかもしれない。しかし玄人にはこの旋律が類稀たぐいまれなる努力の結果だと分かる。一朝一夕で完成できる技術ではない。


 武は公園の駐車場に車を停めてギターを降ろすと調べが響く方へ向かった。ベースは電気が無いと大きく鳴らないので、アンプだけではなく充電器バッテリーも用意しているのだろう。


 速いドラムとそれに合わさるベース。大人になりかけの二人の若い女が音楽を響かせている。時折、ジョギングや散歩の高齢者達が興味津々と二人に振り返って通り過ぎていく。更には七人ほどの老若男女が立ち止まって聴き入っている。武もその人だかりの後ろに止まる。


 素人には分からないだろうが、これは現在日本で流行っている楽曲を再現されている。日本はベースは目立たないけれど、欧米では重宝されている。武以外は皆、不思議そうな顔をしている。


 二人が一曲終えると、急いで水分を摂取する。ベーシストが音の調節を手早く始める。ドラマーは自分の肩を揉む。再開する。今回は日本で昔流行った楽曲だ。


 武は人々から離れてギターをケースから出した。慣れた手付きで調節する。ギターは電気が無くても大きな音が出る。ベースよりも小さい。持ち運びに便利な楽器である。


 二人の旋律に合わせて武もギターを弾く。二人も観客達も驚いて武に振り向く。武は涼しい顔で続ける。二人は戸惑いながらも再会した。すぐに三人の足並みが揃った。


 速さも拍子も何も申し分ない。むしろ独演よりもやりやすい。武は内心、二人の技術に驚嘆した。ドラムもベースも旋律よりもリズムと速さが問われる楽器だ。二人はその基本を心得ている。


 一曲終えると、観客達もチラリと観て通り過ぎた人達も武に拍手した。しかし、武は納得いかなかったので、肩をすくめた。今回は若い女二人の功績だ。玄人には分かるが素人にはなかなか分からない。二人はポカンと武を見つめている。賞賛を奪った妬みというよりは、突然乱入してきた理由が分からなくていぶかしんでいる様子だ。


 武は、

「君達の方が俺よりも上手いよ」

 と、褒めた。二人はぎこちなく頭を下げた。

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