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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
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白崎潤

 九月上旬に合作の連絡が来た。事務所のマネージャーを通じて白崎潤しろさききじゅんからであった。武は不快を覚えた。


 白崎は知名度が非常に高い男性アイドルグループのリーダーだ。武は彼等の為に一曲創って演奏したが、横柄な態度に辟易していた。特に白崎の素行は鼻につく。一緒に仕事したのは一度きりだった。白崎達も武を忘れていたようだった。


 虹倉姉妹の存在に気付いて再度近付いてきたのだろう。武は腹が立った。白崎は性的に軽薄な男だ。交際しているのに別の女と浮気をしたり一夜限りの関係を楽しんだりしている。未成年を誘惑したりファンと関係を持ったり更には性犯罪すれすれの事をしている。


 何度も訴訟を起こされているが、必ず勝訴する。白崎の顧問弁護士もマネージャーも敏腕だ。敗訴した原告の女達はネットで告発を続けても逆に茶化される。熱狂的なファンからは罵倒される。


 白崎の歌と踊りは確かに華がある。武や稲島よりも人を魅力する何かが有る。稲島は自分の全盛期以上だと認めている。武も白崎の才能を認めているが、人間性を嫌っている。


 虹倉姉妹と引き合わせたら誘惑して消耗品にするに違いない。武は丁重に断りの返信をした。


 けれども数日後に再度、誘いの連絡が来た。今度は白崎自身からであった。武は、

「申し訳ないけれど、俺と白崎君は相性が悪いと思う。期待に応えられない。俺はちまちまとやりたい事をやりたい」

 と、返信した。武と白崎は同じ歳の二十八歳。互いに敬語を使っていないが、武は少し遠慮している。


 勧誘は来なかったので武は忘れていった。練習に打ち込む。


 十月の下旬。渋谷にあるとある喫茶店。客は二十人ほど来たが満杯だ。劇場の照明を少し暗くしている。虹倉姉妹の顔を目立たせない為だ。今回の客層はいつもより落ち着いている。稲島と姉妹に全く抵抗がない。


 今回は姉妹の楽曲と稲島の楽曲も演奏した。最後に武も新曲を単独で演奏した。客達は満足そうに拍手した。用意していたCDも売れた。客達は四人に握手を求める。


 最後の客が出て行き、四人が店員達と後片付けをしようとする時、

「もしや稲島さんですか」

 と、声と共に二人の男が入ってきた。五十代の男と二十代の男。突然の進入に店員達も四人も息を飲んだ。優花が、

「あの人、サー・オーシャンの白崎潤に似てる」

 と、呟いた。実花は頷く。サー・オーシャンとは白崎が率いるグループ名だ。若い男は満面の笑みで、

「ハハハ、本人だよ」

 隣の初老の男は軽く頭を下げて、

「マネージャーの吉田です」

 稲島と武は目配せした。武は稲島に勧誘の話をしていた。吉田と白崎は笑顔のまま虹倉姉妹を見据えて、白崎は、

「俺は君達と組みたいんだけど、良いかな」

 姉妹は驚いて顔を見合わせる。

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