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虹倉姉妹  作者: 加藤無理
28/50

場数を踏む姉妹

 虹倉姉妹は本番まで二回しか練習出来なかった。それも一回二時間ほどだ。どうにか歌いながら演奏出来たが、音程も速さも拍子も不自然だ。声量も足りない。その音声を稲島と武に送ってところ、稲島は、

「及第点だよ。失敗しても良いから思いきりやるんだ」


 当日。雨が降っていた。四人は楽器を濡らさないように職員に案内されながら中に入って行った。


 虹倉姉妹は緊張しているが刑務所内は意外と重苦しくはなかった。女囚達は落ち着いている。刑務官達も威圧的ではなかった。姉妹は安堵した。


 職員に誘導されて劇場に立つ。四人は準備を始める。調律もする。その間に職員が女囚達に四人を紹介している。


 女囚達は黙ってはいるが興味津々と四人を見つめている。姉妹は深呼吸した。稲島の小さな合図で演奏を始める。冷静さを保ちながら一曲一曲進めていく。焦って速く演奏をするよりも、通常の速さで演奏した方が良いのだ。音楽を教えた高齢者達も稲島も指摘してきた。


 手応えはあった。女囚達は笑顔で拍手した。声を出したり大きな動きがあると刑務官から注意されるので、女囚達も落ち着いている。


 最後の曲は虹倉姉妹の楽曲。姉妹は深呼吸すると武と稲島に合図した。表立って歌うのは優花、実花が支えるように歌う。武と稲島は低音を担当している。歌いながらの演奏は苦労する。しかし、姉妹は爽快感を感じた。初めての感覚だ。


 女囚達は更に拍手した。涙を流す者も何人かいる。


 四人は深々と挨拶する。片付けの後、職員にまた誘導されて劇場を後にする。


 稲島は朗らかな顔で、

「大成功だったな。凄いな。優花ちゃん、実花ちゃん」

「「有り難うございます」」

 姉妹も微笑む。四人は喫茶店で軽い打ち上げをする。稲島は断酒しているし、姉妹も人前で酒を飲むのに抵抗があった。武も下戸だ。喫茶店の店長は稲島と武を応援しているので半ば今回は貸し切りだった。


 刑務所内での録音は禁止されていた。武はそれを少し悔しがった。虹倉姉妹はどんどん成長していく。機会があれば再度集まって録音させてもらおうと考えた。姉妹は単に正確に奏でるだけではなく、情緒も滲ませている。練習を積み重ねてきた自信と楽曲への理解が深まってきたからだろう。稲島の影響も大きい。


 今では姉妹と稲島は和気藹々としている。最初は控えめの実花と豪胆気味な稲島はぎこちなかったが、音楽を通じて親睦が深まった。


 四人は二台の車で埼玉県内の喫茶店に向かった。到着した時には雨が止んでいた。

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