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転生前

私は転生した。


私は日本でボディガードをやっていた。

身辺警護。つまり4号警備を専門とする民間の会社で働いていた。

その会社は、ストーカー被害を受けている人や有名人、企業といった社長といった警察の護衛を受けれない人。警察の護衛だけでは不安だと判断した政治家。時々どこの知らない国の大統領、国王。そして、警察からマークされているような怪しい人も護衛していた。


ある日、依頼が入った。

一日だけ、護衛をしてほしいとのことだった。驚いたことに有名な会社からだった。

そして、依頼を受けて護衛をすることになった。


1000

 スーツを着こなして、依頼主の会社に私と社長、他に3人が向かった。

 到着後、会社の社長室に案内された。

 社長室には、この会社の社長である女性社長と、秘書が待っていた。

「ようこそ。今回はよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 社長同士が握手をする。

 私は横目で見てすぐに目を逸らす。

「早速ですが、なぜ今回はご依頼を?」

「実を言うと、脅迫状が送られてきまして。」

 箱を机の上に置かれる。一枚の紙と、カッターナイフの刃があった。

 社長が刑事がするような白い手袋をして、確認する。

 内容は、ただただ社長を赤文字で殺害するという脅迫文だけだった。おそらく封筒の中にこの紙とカッターナイフの刃が入っていたのだろう。刃には誰かが指か手を切ったのだろうか。血が付いていた。

「うむ、イタズラの可能性もありますが、これはイタズラにしては度が過ぎてますね。他にもありますか?過去には?」

「いえ、特には。」 

「では、怪しい人物が来たり、車に追われたことは?」

 この質問に、依頼主の社長は何も言わなかった。

 こちらの社長は笑っているが、目は笑っていなかった。

「こちらは依頼があれば、最善を尽くして護衛します。ですが、できれば情報が欲しいのです。もし、他にも被害などを受けているなら教えて下さい。」

 今回依頼してきた社長の会社は、日本だけでなく海外にも名前が知られている。この会社は有名なアイドルなどを束ねる会社だ。会社の社員だけでなく、アイドルにも被害が及ぶかもしれない。

 ボディガードをする上で、情報はあった方がいい。特に守られる側の人は、守る側に対して情報を伝えて欲しいのだ。嘘をつかないでほしい。あとは、言うことを聞いて欲しい。 

「社長さん。」

 有無も言わせない表情と声で圧をかけていく。私達の社長のやり方だ。

 私達は特別何も言わないが、社長の隣に座る私や、ソファの後ろに立つ仲間の視線や無言でいることも、社長と合わさって圧が増しているだろう。

 最終的に、汗だくとなった依頼主の社長が正直に全てを話し始めた。秘書も共に話してくれたので、なぜ依頼をしてきたのか、全貌が分かった。

 脅迫として、文書やメール、落書きといったことや、ストーカーや待ち伏せ。アイドルや社員の乗る車の尾行、あおり運転といった命に関わる問題がある行為を約2ヶ月前受けていたという。

「警察には?」

「被害届を提出したのですが......。」

 すると、また黙った。

 うちの社長は今度は優しく尋ねる。

「大丈夫、話して下さい。大丈夫。」

 その言葉に安心したのか、顔色も良くなってきている。

 小声ではあるが、話してくれた。

「実は、包丁を持った不審者が会社の入り口に侵入したことが......。それと、警察に通報した時に、その警察官が返り討ちといいますか......死傷者が出たとか。」

「ほう、そうですか......。」

 空間がピリついた。

 死傷者が出た。これは、今まで以上の厄介な仕事だ。


1200

 約2時間ほど、警護などに関することを話し合った。

 依頼は長期の契約となり、社長と秘書にはボディガードが配置することになった。会社周辺と、会社の中にも配置して厳戒態勢になっている。また、警護にあたる職員は全員、スーツの下に防弾チョッキを着用し、拳銃などの装備を許可された。

 私達の会社は今までの功績もあり、色んな意味でも銃器の所持を見逃してくれている。

「えっと......貴方もお名前は?」

「はい、井伊虎夏といいます。以後、あなたの護衛につきます。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いしますね。でも、よかった女性の方で。」

 日本警察のSPにも女性は一定数はおり、主要女性大臣などの護衛を行っている。

 しかし、民間の場合は特に女性のボディガードは少ない。護衛対象が女性の場合、男性が護衛にあたると、ストレスを与えてしまったり、トイレや更衣室のチェックや護衛に難しいといった問題が起きてしまう。 

 私達の会社に、女性ボディガードは私の他にも、2人いる。そして、その2人は私と共に女性社長と秘書の護衛につく。

 

1ヶ月後。

 特に重大な問題は、何も起こらなかった。

 あおり運転はあったが、警察に通報して終えられた。

 そう。この1ヶ月は、問題は起こらなかった。

 運命のカウントダウンは、すぐそこまで迫っていた。



1800

女性社長の会社への帰路

『こちら指揮官(社長)。全車両、報告を。』

 会社で待機している社長達から状況報告の連絡がきた。

 会社には社長らバックアップ組や、女性社長の到着に襲われないように出入り口などの警戒をしているチームがいる。

 私は、女性社長の直接護衛するチームで、女性社長と秘書の乗る車両に乗っている。私と運転手を合わせて、ボディガードは6名乗っている。前後に2台ずつ、SUVやセダンの護衛車両だ。各車両には防弾装甲とガラスがあり、武器や救急キット、無線機などが備えられている。

『1号車、問題なし。』

『2号車、問題なし。』

『3号車、OK。』

『4号車、異常なし。』

「クイーン、問題なし。」

 各車両の報告が終わる。クイーンは、女性社長が乗る、この車両のことだ。

 私は後部座席で、女性社長の横で窓際に座っている。 

 太陽が沈み、周囲は街灯の光で照らされている。仕事や学校帰り、お出かけや旅行の人もいるのだろうか。私とは、無縁の世界線だと思う。

「今日は車が多いわね。」

「そうですね。」

 普通の感想。普通ならそれで済んだ。

 しかし私は、これは変だと思っていた。小型のドローンや斥候にいるチームからの報告。日頃からここの道路は渋滞のすることもないし、事故や事件も工事もない。しかし、いつもはない渋滞が起きていた。

 考えすぎならいい。

 しかし、不自然なことには注視しておくべきだ。

「指揮官、渋滞の原因はなんですか?」

 全体を見れている指揮官に問い合わせる。

 返答は、なかった。

 繰り返し問い合わせるが、まるで元々いなかったように無線のノイズしか残っていなかった。斥候のチームにも、ドローンで警戒しているチームにも連絡を取ってみるがどこもノイズしか聞こえない。

「ドライバー、次の交差点でUターンして。」

「はぁ!?」

「罠よ、誘い込まれてる。」

 ドライバーが戸惑っている。

 殴って動かすように言おうとしたと同時。


 突然、真っ赤になった。

 少し遅れて、衝撃波。

「1号車が爆発炎上!!」

「前進、逃げるよ!」

 他のチームと指揮官にも連絡がつかない今は、私が指揮を執ることにした。現場での判断を優先して護衛対象を守る。

 そして、待ってましたとばかりに撃ってきた。防弾装甲とガラスに当たる嫌な音が車内に響く。

 この人は一体、どんな恨みを買ったのだろうか。

 Uターン禁止ではあるが炎上する1号車を押しのけていくようにしてUターンして、来た場所へと戻る。幸運なのか、罠なのかは分からないが反対車線は空いていた。

 ケースからMP5を取り出してもう1人の隊員に手渡す。

「各員、武装して交戦用意。」

 敵は民間人がたくさん場所でも構わずに手を出してきた。冷静でも、正気でもない。こちらも手を出さなければならないようだ。

「総員へ、こちらクイーン。敵と交戦に突入、死傷者数多数、支援を要請!」

 無線を使うが相変わらずノイズしか聞こえない。

 護衛対象に防弾チョッキを着させて、伏せさせる。

 敵は相変わらず発砲を続けていた。

「クイーン、予備車両のある場所に向かおう。」

「えぇ。急いで。」

 この状態だと、近くにいた民間人にも多くの被害が出ているのだろう。

 しばらくしてから思ったが、冷静に普通に思った私自身に恐怖した。

 予備の車両がある駐車場に到着した。似たような車両でも装甲はもっと厚く、耐えられる構造になっている。すぐに降車して乗り込んでいった。

「クソ、コンタクト!」

 敵が見失ったことを確認してからここに来たが、どういうわけか複数の敵がいた。全員、武装している。 

 

 応戦。

 援護。

 繰り返していった。


 なんとか敵を倒せた。 

 恐怖は消し飛んでいた。

 感情が消えていた。

 ただ撃って、リロードして、護衛対象を守って。

 戦闘ロボットみたいに。


 また移動して、また乗り換えた。


 戦闘。


 敵は通行止めにしてバリケードを作っていた。


 倒れた仲間を引きずり、陰に隠した。

 仲間のAR-50を借りて、撃つ。

 撃つ。

 撃つ。

 撃つ。


 マウスをクリックするように、単純に引き金を引く。

 防弾チョッキに被弾しても。


 撃つ。 

 

 壊れている。

 私という、人間は。

 まるで、ロボットのように命令されて動くように。


 撃つ。


 そんな私の意識を取り戻したのは車両に乗り込んでしばらく走行していた時だった。護衛対象の社長と秘書の涙と泣き声によって、感情を取り戻せた。

 手は、血だらけ。誰の血なのか分からなかった。

 ドライバーが変わっていた。

 隣にいたもう1人の女性隊員がいない。 

 肩に止血帯を巻いた腕のない男性隊員。

 助手席には無線機で連絡を試みる血だらけの男性隊員。 


「ぁ。」


 声が出なかった。

 涙も出ない。


 ただ。

 銃の弾倉を変えた。


「クイーン。」

 無線機を投げた男性隊員。

 疲れ切っていた。目が開いてない。

 脈に触れる。


 

 彼の腰にあったグロックを抜いた。

 そして、私の腰のベルトの間に挟む。 

 よく見たら残りの車両はこの車しかいなかった。


 命令も出せない。

 アドレナリンが少しずつ切れてるようで、腰や腕が痛かった。 

 被弾しているみたいだ。 

 拳銃弾、貫通している。

 防弾チョッキにも複数の穴。


「そ、か。」

 言葉になっていなかった。

 声をもう一度出そうとした。 

 しかし、駄目だった。



 衝撃波。

 車両が横転した。


 覚醒した。車から飛び出していた。

 隣には目を閉じた、隣にいた男性隊員が倒れていた。

 ドライバーは、静かにハンドルに頭を当てていた。

 護衛対象の秘書は自力で抜け出したのか、近くの電柱に体を任せていた。 

 いや。前言撤回だった。

 黒い服を身につけた何者かが撃ち殺した。

 車にいる隊員にも無慈悲に撃っていく。 


 足音。 

 複数人。

 発砲音。

 体を引きずられる。

 乱暴に。

 乱暴になにかの壁に置かれる。

 秘書を撃った人間が私の顔を見てきた。

 顎をつかまれる。

 乱暴に離した。

 殴られる。

  

 何も感じなかった。


 目の前には護衛対象の女性社長。

 無惨。

 そんな言葉では足りないほどに、醜い姿に。


「手こずらされるとは。流石、千夏だな。」

 

 聞いたことのある声。

 匂い。

 足音。

 

「しゃ。しゃ、ちょ。社長?」

 目の前には私たちの会社の社長が立っていた。

 するとおもむろにズボンを脱がしてきた。欲求を満たすためではなく、隠している小さなナイフなどを取っていき反撃されないようにしている。他にも胸ポケットや服の裏に隠している武器を根こそぎ取っていった。


 なんで?

 どうして?

 疲労よりも、痛みよりも、恐怖よりも、怒りよりも。

 

 疑問。

 喪失感。

 悲しみ。


「どうしてと思ってるだろ?」

「すまないが、ノーコメントだ。悪いな。」

 銃口を向けた。

 逃げようとしても、他の敵に撃たれる。


 目を閉じる。

 覚悟。


 ベルトの裏にあった、カッターのようなナイフを抜いた。奇襲をかける。

 

 

 視野が狭い。

 左目が見えない。

 痛み。

 何かが、突き刺さっている。


「ナイフ術は、お前の方が格段に上だが。今は、もう無駄だな。勝てるわけがないだろ、俺に。」

 

 余裕の笑み。

 卑怯だが、敵の1人が先に撃ったことで体がよろけ、そのまま倒された。

 無力化された。


「っ。」

「すまんな、千夏。これも、また運命だ。」

 

 また銃口を向けられる。

 もう、この人も敵だ。

 裏切られた。

 捨てられた。

 無視された。

 もう、仲間でも家族でもない。

 恩師で、尊敬していた。

 



 命乞いもなし。

 最期の言葉もなし。

 言わせてもくれない。


 手を伸ばす。

 届かずに、落ちる。


 力が抜けていく。

 視界がぼやける。


 最期に。

 体にまた、突き刺さる。


 そして。




 何も、 


 見えなくなった。 


 聞こえなくなった。


 感じない。






 何も、なくなった。

 



新シリーズです。

感想など、評価ご自由にどうぞ。待ってます。

今後もよろしくお願いします。

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