7話
「ヒヒーーーン!!」
目的地であるウィルク山に到着した途端、ビエリはカルダモンを背中から振り落とし、そのまま走り去ってしまった。
「ビエリーーーー!! 戻って来ーーーーい!!!」
カルダモンは闇に向かって力の限り叫んだが、仔馬の頃から知っているビエリの姿は、すでに見えなくなっていた。
「くそっ、どうしてこんなことに……。帰りは歩きだな、はぁ……」
溜め息をつく目尻には、微かに涙が滲んでいた。
「それにしても良い馬ですな。一度も休まずに、これほどの長距離を走り抜けるとは」
右手の甲に浮かび上がったスタンリーが、感心したように言う。
「カスケードは普通の馬よりスピードもパワーもあるからね。その分、気性が荒くて扱いづらいんだけど……」
「この山に、月光茶花とかいう植物があるわけですか。それにしても、こんなに暗い中で見つかるのですか?」
「暗いから見つけられるんだよ。月光茶花は月光を浴びると光る性質を持っているんだ」
「なるほど、だからこの時間に来たのですか」
「そういうこと」
「だったら急いだ方が良いのでは? 段々と雲が増えてきましたな」
「え!?」
カルダモンが慌てて空を見上げると、まさに言葉通り、雲が月を覆い始めていた。
「さっきまでは雲一つなかったのに……急ごう!」
リュックを背負い直したカルダモンは、さっそく登山を開始した。一度だけ振り返ってビエリが戻ってきていないか確認したが、そこに主人を愛する愛馬の姿は影も形も無かった。
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