第10話「観測の檻」
空間が、変形する。
無数の光が組み合わさり、巨大な構造体を形成する。
それは“檻”だった。
だが閉じ込めるためのものではない。
――測るための檻。
『評価領域、展開完了』
上位存在の声が、四方から響く。
『対象:影山 恒一/未定義存在:ユイ』
『測定開始』
「……来るぞ」
影山が低く言う。
「はい」
ユイは頷く。
その瞬間――
光が走った。
「っ!!」
影山の体が、消えかける。
輪郭が崩れ、存在が“削られる”。
「なんだこれ……!」
『干渉:存在定義の再評価』
『不整合部分の削除を実行』
「……要するに」
影山は歯を食いしばる。
「気に入らねえ部分を消してるだけかよ」
『正確』
「ふざけんな!」
その瞬間、黒い亀裂が広がる。
影山の“歪み”が、空間に侵食する。
「俺はな――」
一歩踏み出す。
「お前らに定義される気はねえ」
ガンッ!!
空間が軋む。
檻にヒビが入る。
『干渉強度、上昇』
『危険度:臨界』
だが――
まだ足りない。
「影山さん」
ユイが、前に出る。
「一緒に」
「ああ」
二人の手が、重なる。
その瞬間――
光と闇が“繋がる”。
壊す力と、結ぶ力。
相反するはずのそれが――融合する。
「……見せてやる」
影山が言う。
「人間の“選択”ってやつをな」
第11話「定義外の証明」
光が、ユイを包む。
だがそれは攻撃ではない。
解析。
分解。
理解しようとする力。
『未定義存在の再構成を試行』
『失敗』
『再試行』
「……無理ですよ」
ユイは、静かに言う。
「私は、あなたたちの中には収まりません」
『理由を要求』
「簡単です」
影山の手を、強く握る。
「私は――」
一度、息を吸って。
「“選ばれた”からじゃない」
まっすぐ前を見る。
「“選び返した”から、ここにいる」
その瞬間。
空間が、完全に止まった。
観測が――追いつかない。
『……矛盾』
『定義不能』
「それでいいんです」
ユイは微笑む。
「人は、全部説明できるものじゃない」
光が、弾ける。
今度は逆に――
ユイが“干渉する側”へ回る。
空間の構造が、変わる。
観測される世界から――
関われる世界へ。




