1-20 どんな人? そうだ、司令ポジの人かも
さてさて、ちょっとこの二日間落ち着かなかったのは、そんな悠子さんから聞かされたことも原因のひとつといえばひとつだった。
この杜人の街を昔から守ってきた人。
わたしとゆうみたいな——鎮鬼と呼ばれる力を持った人がいる。
そうなんじゃないかな、と話を聞いて思ってはいたけど、やっぱりわたし達以外にもいるんだ。同じようにここを守って戦う人が。
わくわくとした気持ちがあるのが半分、一体どんな人なんだろう、怖い人かなぁ、という不安が半分。
こういうのはすっごい貫禄のあるおじさんとか、見た目は若いけど実はすごい年数を生きた経験深いお姉さんとか、いわゆる謎を秘めた司令官ポジションな感じ。
……会ってみたい〜、けど、あんまり迫力のある人だったら多分わたし、なにも話せなくなる。
……うん、その時はゆうに任せよう! なにせ相棒。相棒が困ってる時は助けるのが当然だよね?
にへ。
思わずにやける自分の頬をすぐに両手でもみほぐす。
自重自重! 今日は登校初日! あんまり変な顔してたら引かれちゃう!
前みたいに失敗しないようにするんだ。
「嬉しそうだな?」
思いだすわたしに隣を歩いてたなっちゃんが声をかけてきて、ちょっとびっくりする。
「え? そ、そう見える?」
「ああ。良いことがあったように見える。それとも学校が楽しみか?」
いつもぼんやりしているように見えて、なっちゃんはわたしのことを良く見てくれている。たまに見過ぎじゃない? って思うことはあるけど。
「ん〜、どっちもかな」
本当は学校は不安半分、期待半分って感じだったけど、なんだかゆうとのことを言うのが照れくさかった。
でも、うれしいのは本当で。
こっちに来てすぐ友達ができて、しかもヒーローの相棒。うれしいに決まってる。
もちろん、なっちゃんにはヒーローになったなんて言えないけど。
そして気づけば、まわりを歩く人並みに学生服の姿が多くなってきて、今日からわたしの通う高校の校門が目にはいった。
ぱっと見た感じ、校舎とか建物はそんなに元いた学校とすごい違いがあるわけじゃない。よくマンガとかなら、レンガづくりの道が敷地内にあったりとか、校舎がすごい研究施設のように整えられていたりとか、残念ながら実際にはそんなものはないわけで。
けれど、見た目は普通でも、敷地が広いのは本当みたい。
なんでも、この高校、隣にある市立大学とつながっているとか。
購買やら食堂は一応、別々に作られてはいるものの、高校側の生徒も大学側に出入りして問題ないとか。
なっちゃんからのうけうりだけど、高校の勉強だけにとらわれず、広く物事を見ることのできる環境を整えるため、とかなんとか。
なんだっけ……たしか、ちょっと有名な起業家とかお金持ちみたいな人からの援助もあって、なりたっているらしい。
あれ? それってなんかあんまりないんじゃない?
「また帰りに迎えに来る。もし予定が変わるようなら連絡してくれ」
とりあえずなっちゃんには職員室の場所まで連れてきてもらい、そこで別れた。
……やばい、また緊張が。
こんな時には、ギャンバーンのスーツ装着シーンを思い出して落ち着こう。
彼はわずか〇・〇〇〇四ミリ秒で——。
「なにやってんだお前」
ふわぁ⁉
思わず変な声が出た。後退りながらふりむくと、
「そんなとこで立ってると変に見られるぞ」
二日ぶりに見るゆうの顔があった。




