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久々だな

 ユウジの部屋を退室し、廊下でフリーシアの国王と王弟と挨拶を交わした後、オリヴィアはリアと共に用意された自室へと向かっていた。


「変わらないわね。あの人はあの人のままだった」


 隣のリアがポツリと、懐かしむように言った。

 胸の前に手を置いているのは、体の内側から湧き出る情を抑えるためだろう。

 久しぶりに見せるそのような友人の姿を横目に、


「そうですね。変わっていませんでした」


 そう言ってオリヴィアもまた、先程まで話していた青年の姿を浮かべ、想いを馳せる。

 

「けれど、やはりあの人からあの力を感じたわ」

「はい。私達だからこそ気づいたと思いますが、他の人ではどうなのでしょうか?」


 永い付き合いの二人の女性達は廊下を歩きながら、事情を知らなければ端から見て主と従者が逆転しているかのような会話を続けた。


「聖女ならとっくに気づきそうだけれど、もしかすれば気づいたことを隠しているのかもしれないわね」

「彼女が口止めさせているのかも?」

「考えうるわね。あの女ならやりそうなことだわ...」


 リアは一人の美女を思い出したのか、呆れながら言った。

 そんな永い付き合いの友人の様子を見ながら、オリヴィアは用意された部屋のドアを開けた。

 中はユウジの部屋とよく似た構造だ。

 部屋には一人の男が居た。これまたリアと同じく永い付き合いの男だ。


「久々だな」


 黒いフード付きのローブを纏い、頭を剃りあげた男、キュラスがオリヴィアに声を掛けた。


「久しぶりですね。元気でしたか?」

「見ての通りだ」

「それはなによりです」

「再会の言葉もいいけど、確認すべきことを早くしてしまいましょ」


 リアが二人に声を掛け、備え付けられたソファに座るよう促す。オリヴィアとリアは隣同士に座り、キュラスが対面に座った。


「サ...んんっ、リアから聞いていると思うが、こちらは概ね順調だ。厄介事と言えば最後の一つをどうするかだな」

「そうですか。竜に関してはどうするのですか?」

「レフィトとゴルトラは殺り合うつもりのようだ。私が記憶を取り戻したのはレフィトに彼を調べろという指示を受けてからだ、もっと早くに回収出来れば良かったんだがな...」

「仕方ないわ。記憶の欠如は目的の為に重要だったのだから」


 必要なことだったとはいえ、仲間達の記憶を消して行わせた数々の出来事を思い出しながらリアは言った。


「本当に彼らと戦うのですか?貴重な戦力を失うことになりますが」


 いつの間に準備したのか、各自に紅茶を注ぎながらオリヴィアは疑問を投げかけた。


「大丈夫よ、その前にあの女がアジトを襲わせるだろうから。その時にあの人を除いてみんなが記憶を取り戻すわ」

「そうなのですか?」

「そう言っておけばやってくれるわ。どうせ見ているだろうから」


 そう言って、リアは紅茶を口に含んだ。


「ならばあとはどれだけ味方を増やすかですね...」


 焼き菓子を摘みながらオリヴィアは呟いた。


「そうね、特にあの時に参戦しなかった種族。竜に人魚にドワーフ、そして天使」

「竜は別だが、当時は彼らには突出した存在が居なかったからな」

「けれど今は違うわ。ようやく、全種族で戦える。この世界を、そしてあの人を解放出来る」


 全ては世界を解放する為、とある青年が願った未来を掴む為に彼女達は行動してきた。

 その為に多くの犠牲を出すことになると理解していても、やらなければ確実に滅びの未来が待ち受けることを彼女達は知っていたからこそ、やらずにはいられなかった。






「そういえば、サティナの侍女のエルフは一体あの人とどういう関係なの?」

「ラティナは短期間ですが、彼の侍女をしていたそうです」

「訊き方が悪かったわ。あの人に対する行動は何?サティナは私達が仕向けたからある程度は分かるけれど、彼女は幾ら加護の影響を受けやすいエルフとはいえおかしいわ」

 

 リアの言葉でラティナの行動の異常性を理解したオリヴィアは「確かにおかしいですね」と考え始めた。

 キュラスは紅茶を飲みながら二人の様子を眺めながら、一人だけ思い当たる人物がいることに気づいた。


「エルフだと、彼女がいたな」

「彼女?いた?...まさかとは思うけれど、ララのこと?」


 リアがキュラスに問うた。


「ああ、彼女のことだ」

「どうしてララ姉さまのことを?」

「対面した時、懐かしい感じがしたのを思いだしてな。彼女なら生まれ変わってきても不思議ではないだろう?それに名前も似ている」


 飲み干したカップを置きながら、キュラスは言った。


「名前が似ているのは関係ないと思いますけど...」

「ララの生まれ変わり...」

「あくまで推測だ。頭の片隅に留めておくとくらいで良いだろう」

「そうね。ただ、生まれ変わっているのなら本当に嬉しいわ」

 

 かつての友人の姿を幻視しながら、リアは笑った。

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