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復讐の輪廻  作者: 大五郎
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第六章 復讐鬼

主人公は鬼畜になりました。

そして貴方は苛烈とグロの本当の意味を知る。

魔族討伐遠征軍五千が王都に帰還したのはそれから三ケ月後のことであった。

出立してより一年近くの月日が流れていた。

クラフト王子は正門より王都に入ろうとして宰相と名乗る若い貴族と数百名の近衛兵に阻まれていた。

「貴様が宰相だと?貴様は第一王子の腰巾着ではないか。本物の宰相はどうした」

「前宰相は引退なされました」

「ばかな。父王は止めなかったのか?」

「前国王は半年前に病死なされました。今は第一王子であったアラン様が即位なされこの国の王となられております」

「なんだと、そんな話しは・・・、貴様ら、父王崩御の情報を私に対して止めていたな。父王も出立前に病の兆候はなかった。もしや貴様ら・・・」

「口を御慎みください。それと貴方には遠征軍の大損害の責を問うため拘束命令が出ております。大人しく御同行願います」

「なにを言っている。貴様らの指図に従ういわれなどない」

「止むを得ませんな。近衛兵、元第二王子を捕えなさい!」

「なんだと!グレン!この不埒者共を斬り捨てろ!」

背後に立つグレンと顔や身体に包帯を巻いた負傷者が多いとはいえ五千の兵を当てにして

クラフト元王子が叫んだ。

いざとなったらこの戦力で王都を制圧する計算もあった。

しかしグレン達は動かない。

「な、なにをしている!早く斬り捨てんか!」

「御諦めください。既に魔王討伐を達成された勇者グレン殿には話しがついております」

「グレン!貴様裏切ったのか!」

グレンは一言も発せずただ冷たく見つめ返すのみであった。

近衛兵達がクラフト元王子を取り押さえる。

「は、離せ!この不埒者どもが!グレン、グレン、貴様!・・・」

暴れるクラフト元王子は手錠と魔封環をつけられ引き摺られるように連行されていった。

「それではグレン殿、後ほど」

「分かった」

グレンは短く返答をすると引き摺られるクラフト元王子を連行する宰相の後ろ姿を静かに見ていた。


凱旋パレードが大々的に行われたがそこにクラフト元王子の姿はなく凱旋パレードを行っている騎士達も王都近くの王国軍駐屯地から急遽かり出された五千の騎士達のみであり多くの騎士達が顔と身体に包帯を巻きつけた敗残兵としか見えない遠征軍五千は王都の裏門より密かに入り治療もされず王城内の騎士宿舎に放り込まれていた。

しかし凱旋パレードの先頭には白銀の鎧を身に纏ったグレンのどうどうとした勇姿があった。

王城に続く大通りの両側には魔王討伐を果たした若き英雄の勇姿を一目見ようと民衆が詰めかけグレンを称える歓声を上げ続けていた。

王城の大門前に凱旋パレードが到達し打ち合わせ通り騎士達が整然と立ち並ぶ中グレンが一人入城した。

魔法剣を預けそのまま謁見の間へ向かう。

今から勇者グレンの功績を称える栄誉式が行われるのだ。

遠征軍の司令官だった元第二王子については蟄居の上病死する予定である。

魔王や魔将を単騎で討ち破ったグレンについては遠征軍の大損害を糊塗するため必要以上にその功績が喧伝されていた。

遠征軍が魔の森を抜けアノー城塞都市に辿り着くと現宰相からグレン宛に使者と密書が届けられ前国王崩御と新国王即位により落ち目のクラフト元王子を切り捨て新国王側に寝返ることを持ち掛けられグレンが承諾したためこのような仕儀とあいなった。

今後の周辺諸国平定の重要な戦力としても期待されているのだろう。

途中の補給に立ち寄った街々の領主達は笑顔で補給だけは請け負ってくれたがクラフト元王子に前国王崩御も新国王即位も知らせなかった。

それ故にクラフト元王子も王都の正門前まで何も知らずに出向きあっさり拘束されてしまったのである。

そして謁見の間の大扉が開かれ栄誉式が始まった。


グレンは王の前に傅き目の前の宝剣を見ていた。

「王よ、アリーシャという娘を御存じか」

作法通りの行動と忠誠の言葉を待っていたガネーシャ国王はグレンの意味の分からぬ質問に戸惑った。

「では花遊びについては?」

途端に王の顔色が変わった。

「な、なにを言うのじゃ、気でも違ったか・・・」

ガネーシャ国王は後退り呻くように言った。

「三年前、当時王子であった貴様はそこの宰相となった男と一緒に花遊びと称し下町でアリーシャという娘を攫いぼろぼろになるまで犯し嬲って殺した」

グレンは現国王の公然の秘密とされている醜聞を言い募った。

ガネーシャ国王も宰相もいきなり暴露を始めたグレンを茫然と見ていた。

「アリーシャを守りきれなかった俺は力を蓄え復讐を行う最適な時期を待った」

グレンは一歩進んだ。

「こ、この乱心ものを捕えよ!」

宰相が叫び数名の近衛兵が駆け寄ろうとした時謁見の間の扉が大きな音を立てて開かれ王城警備の騎士の一人が飛び込んできた。

「申し上げます!突如現れた魔族が王城正面に待機していた王国軍五千に奇襲を掛けてきました。魔族は魔法装備を使用しており王国軍の騎士が次々と討ち取られえています。又、城内にも多数の魔族を確認、現在警備の騎士五百が交戦中ですが多勢に無勢、一刻も早くお逃げください!」

騎士が述べ終わった瞬間、後方から振るわれた斬撃によってその首が刎ね飛ばされる。

そしてその後ろから現れたのは大きな魔力を持った魔族、魔将であった。

更にその後ろから魔人や眷属達が雪崩れ込んできた。

謁見の間の貴族達は阿鼻叫喚に包まれ逃げ惑った。

この場にいる上級貴族達は碌に鍛錬もせずに高い魔力と権力に胡坐をかいていただけで戦闘力は下級騎士にすら劣る。

近衛兵が立ち塞がろうとするが強化された魔法剣を使う魔人達にあっさり斬り倒されていった。

「グレン!これはどういう事だ!魔族は全てお前が討滅したのではないのか」

王が糾弾されていたことも忘れてグレンに叫んだ。

「魔王は討ったが魔族を全て討滅したなど一言も言っていない。それに今は俺が魔族を統べる王、魔王だ」

グレンは隠していた全ての魔力のオーラを解放した。

その厖大な魔力のオーラにガネーシャ国王は腰を抜かし尻餅をついた。

宰相も身体をがくがくと震わせ動けない。

謁見の間の貴族達も剣を突き付けられ皆床に座り込んでいた。

「王の花遊びに一緒に興じていたヤツはどいつだ」

グレンの問いに暫らく顔を見合わせていた貴族達は恐る恐る数人の貴族を指差していった。

「そいつらをここに連れて来い」

指差された貴族が助けを懇願しながら魔人に連れてこられた。

他の貴族達は引っ立てられなかったことに一瞬安堵の表情を浮かべるが次の瞬間凍りついた。

「残りは全て殺せ」

周囲を囲まれ逃げることも叶わず貴族達は一方的に屠殺されていった。

残った王、宰相、王の花遊び仲間達に向かってグレンは言った。

「さて、ここからが本番だ」


そこは地獄だった。

王城前の広場でガネーシャ国王と宰相を含む花遊び仲間達が魔封環をつけられ生かされたまま十字架に張り付けられていた。

そして王都を制圧した魔族によってその家族や親族達が次々に連れて来られまず親族達の首がガネーシャ国王達の目の前で無造作に刎ねられていく。

「や、止めてくれ」

「いやー、助けて」

「いやだ、いやだ、いやだ」

口々に泣き叫び命乞いをする貴族の男女や子供達の命を容赦なく断っていく。

ガネーシャ国王達の顔色は目の前で繰り広げられる凄惨な光景に蒼白を通り越して白面と化していた。

グレンの横に魔封環をつけられたままだが拘束はされていないクラフト元王子が連れてこられた。

「クラフト、これは貴様の企みか!」

ガネーシャ国王が叫んだ。

「ち、違う。我は知らない。こんなこと・・・」

大量の生首が転がり血臭にむせ返る状況に同じように白面となっていたクラフト元王子は否定した。

「クラフト元王子には色々役に立ってもらった。魔将を狩る間魔族軍の陽動を引き受けてもらったし予定外ではあったが遠征軍五千に扮装した魔族軍を王都に引き込む際にも注目を集めて貰ったお蔭でたいした問題もなくすんなりと王城に入ることができた。遠征軍の損害の責も負って貰って助かった。指揮官クラスで生き残りが俺一人なら俺が責任を被らされる可能性もあったからな。国王側との取引も有利に進められたし。これが礼だ」

グレンはクラフト元王子の首を刎ねた。

クラフト元王子の妻子も連れてこさせ同様に首を刎ねる。

「苦しませず一息に殺してやる慈悲だ」

親族達の処刑が済み次は家族の番になった。

ガネーシャ国王達の一人一人の前に其々の家族が連れてこられる。

「貴様達は平民をどう思う。こいつらのやっていた花遊びについては?」

その問い掛けに美しく着飾っていただろう王妃が今は連れて来られた時に抵抗して暴れたため乱れた姿で気丈に答えた。

「たかが塵芥の平民の娘達がどうなろうと知ったことですか。陛下の無聊を慰めることができたならむしろ喜ぶべきです」

「そうです。お母様の言う通りです。下賤な平民なぞ貴族の役に立てば本望でしょう」

「そうだ!お父様を離せ!この不埒ものが」

傲慢そうな年頃の王女と幼い王子も同調する。

「フム、なら俺にとって塵芥なお前達に俺の無聊を慰めて貰おう」

魔族軍に抵抗しない限りは手出ししないように命じて自由にさせていたため王城前の広場には多くの平民達が集まり広場を取り囲む魔族の向うから遠巻きに眺めていた。

グレンはその平民達に声を掛けた。

「おい、お前ら、王都は既に落ちた。王都周辺の王国軍の駐屯地も全て潰した。そして魔族軍二十万が魔の森より進撃中だ。間もなく王都を欠いた各地の王国軍は各個撃破される。貴族達にもはやなんの権力も無くなった。こいつらの魔力も魔封環で封じてある。貴族に恨みがあるヤツはこいつらを好きにしていい。ただし殺すな」

その途端王妃達の言い分に憎しみの目を向けていた平民達が広場を取り囲む魔族への恐れも忘れて一斉に王妃達に襲い掛かった。

王妃達を殴り蹴り、服を引き裂き、犯し、髪を頭皮ごと引っ張って剥がし、指を砕き腕や脚を折り蹂躙の限りを尽くしていく。

「や、止めてくれ。頼む、どうか・・・」

ガネーシャ国王が血の涙を流し懇願する。

「貴様でも自分の妻や子供はかわいいか」

王妃達の様子を暫く眺めていたグレンは冷徹に言い王妃達を襲っていた平民達に近づいていった。

「それまでだ。死にたくなかったら引け、死にたいヤツは残れ」

グレンの命令に興奮していた男達が従わなかったため三人ほど首を刎ねた。

残りの連中は慌てて逃げ返るように人垣の方に戻っていった。

後には指や腕や脚があらぬ方に向き身体中殴られて痣や腫れで覆われ裂傷で血塗れになった無慚な姿を晒す王妃達の残骸があった。

最初は泣き叫び懇願し許しを乞うていた王妃達はもの言わぬうち捨てられた人形のようになっていた。

身体がときおりビクンビクンと微かに痙攣するのと引き裂かれ露わになった胸が微かに上下しているのでまだ息があるのが分かった。

「殺す、殺してやるぞ、絶対に殺してやる」

その姿を見て幽鬼のような顔で怨嗟の声を上げ続けるガネーシャ国王を視界の隅に捉えながらグレンはゆっくりと王妃達の残骸に更に近づく。

そして王妃達の腕と脚を斬り落とし耳と鼻を削ぎ落とし最後に腹を裂いて内臓を溢れさせる。

命が尽きるまでそう時間は掛からなかった。

「ウワーッ!ウワーッ!」

その光景にガネーシャ国王は血の涙を撒き散らし絶叫だけを上げる機械と化していた。

ガネーシャ国王の花遊び仲間の家族にも同様の処置を施していく。

中には小賢しく平民を如何に慈しんできたかを述べる者もあったがグレンが通り囲む平民達に問い掛け一人でも出てきてその言葉を否定したら王妃達の後を追わせ出てこなかったら一息に首を刎ねていった。

やがて家族全員の処刑が済むと突貫で王都のガラス職人に作らせた大きなガラスの水槽を持ってこさせた。

水槽の中には錬金術師に調合させた硫酸の希釈液が入っている。

そしてガネーシャ国王の花遊び仲間達を一人ずつその中にゆっくり浸けていく。

肩まで浸け皮膚が少しずつ溶けていき一定のところまで溶けると引き上げ更にじっくりと浸けていく。

ガネーシャ国王の花遊び仲間達は悲鳴を上げ続け死んでいった。

中には発狂して笑いながら死んでいく者もいた。

最後にガネーシャ国王を足からじっくりと骨まで溶かし一旦引き上げそれを何度も繰り返した。

ガネーシャ国王は下半身からゆっくりと溶かされる恐怖のために泣き叫び水槽に浸けられる度に狂ったように意味の分からない悲鳴を上げた。

グレンは無表情でガネーシャ国王が苦しみ抜き息絶え、そして身体全てが溶け終えるまでその様子を眺めていた。

取り敢えず復讐は終わった。

後始末として国内の地方に残っている貴族達を全て抹殺しこの国を魔族の王国とし周辺諸国を侵略して諸国の貴族達も同様に抹殺するだけだ。

当初の計画では魔王の魔力を手に入れ一人でガネーシャ王国の人間を平民も含めて全て皆殺しにして周辺諸国も同様に滅ぼす予定だったが魔族がグレンの傘下に入ったので修正することにした。

今まで貴族の贅沢のために搾取されてきた平民達が魔族の支配下でどう変わるのか見てみることにしたのだ。

魔族は魔獣の性質が強く闘争本能は高いが物欲は少ない。

故に暴力的な支配にさえ耐えれば搾取が減って貴族支配の時代より生活が楽になると考えられる。

魔族という重しがあるため平民の中から平民を搾取する権力者も出にくいだろう。

出たとしてもグレンが排除する。

後は適当に社会に手を入れ豊かで文化的な生活を送らせる。

“久我一郎”の知識から使えるものをピックアップするのもいいだろう。

その結果理想社会が来るのか家畜化され停滞した社会が来るのかどうでもいい。

心が虚ろになったグレンには人族がどうなろうが本当にどうでもよかった。

ただ魔王と同じく不老になったのならその永き寿命を使って暇つぶしのため人族の平民達の行く末を気長に見守ることにしただけだ。

その果てになにがあるのか今のグレンに知るよしもなかった。

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