表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/55

第11話 ライガー強奪 Bパート

アイキャッチ

「神鋼魔像、ブレバティ!」

「まずい!」


 僕もドラゴンのコクピットに乗り込んだのだが…


「ブレバティ・セットアップ、認証(サーティフィケート)、ノゾミ・ヘルム…ダメか!」


 やはり、ドラゴンの認証も初期化されてしまい、本起動ができなくなっている。再入力の魔法も、発動キーワード自体はさっき聞いた「入力(インプット)」でいいのだろうが、イメージ化の方をどうすればいいのかが分からない。父さんの手伝いをしているから、魔像(ゴーレム)の入力系統の魔法もいくつかは知ってるんで、それと似た感じでイメージすればいいのかもしれないが、ぶっつけ本番でできるか?


「おい、ヒカリいなかった…ノゾミ!?」


「何でライガーを外に?」


 カイとリーベが格納庫に入ってきた。あれ、第一種戦闘配置だったら、ロプロスの調整中のクーはともかく、お前らは自分の機体に乗ってるはずじゃないのか?


「どこに行ってたんだ!?」


 ドラゴンの中から尋ねた僕に驚く2人。


「どこにって、ヒカリが工場の方にいるからクーの援護に行けって言ったのはお前だろうが!?」


「用心のためヤマダさんには残ってもらいましたが」


 おいおい、お前らまでヒカリに騙されたのかよ!


「それより、何でお前がドラゴンに乗ってるのにライガーが動いてるんだ!?」


 カイが尋ねてくるが、既にその顔は引きつっている。自分で答えに気付いたな。


「お前らにその指示を出したのがヒカリ本人だよ! 姫様たちはともかく、お前らまで騙されんなよ!!」


「クソッ、とにかく追うぞ! 飛翔(フライト)


飛翔(フライト)


 僕の言葉を聞いて、カイとリーベも即座に自分の愛機のコクピットに向かうが…


「起動しねえ!」


「こちらもです!」


「わたしのペガサスもダメ!」


 姫様のペガサスも含めて、やはり起動できなかった。殿下のペガサスもダメだろうな。


 それを聞きながらも、頭の中で魔法のイメージを練る。認証(サーティフィケート)をかけて魔道具をロックする方法は分かっている。面倒がらずにリモコンにも認証をかけておけば…いや、同じように初期化されるだけだな。


 問題は入力(インプット)という初めて聞いた魔法のイメージだ。たぶん、在来型魔像(ゴーレム)へ命令を下す「命令(コマンド)」よりは、工業用魔像(ゴーレム)を自動制御する「定型動作命令(プログラミング)」の方が近いだろう。それと同じ感じでイメージを練って…


「『ドラゴン、僕を認識しろ、僕の力になれ!』 入力(インプット)認証(サーティフィケート)、ノゾミ・ヘルム!」


 あえて「詠唱」を追加する。「我は求める」だのといったような定型的な呪文詠唱でなくても、自分の気持ち、感情を言葉に乗せることで呪文の効果は上がるのが言霊(ことだま)というものだ。この場合は、ぶっつけ本番でも成功率が上がる。


 よし、スティックとペダルを通して僕の魔力が機体に浸透していく。成功だ!


入力(インプット)って魔法で認証を再設定できる! 定型動作命令(プログラミング)に近い感じでイメージを練るんだ!」


 他の3人にもやり方を伝えるが…


定型動作命令(プログラミング)なんて魔法、使ったことねぇよ!!」


 …そうだろうなあ。僕は父さんの仕事の手伝いで覚えたけど、普通はこんな魔法覚えないよ。


「父さん呼んで再設定してもらってくれ! 僕はライガーを追う!」


 再設定に時間を取られたし、そもそもヒカリなら瞬間移動(テレポート)で逃げることができる以上、既に詰んでいると言ってもいい。だが、まだ瞬間移動(テレポート)の魔法は感知していない。何をやっているんだ?


 基本魔法をかけつつ、ドラゴン・ブレードを抜きながら格納庫を出ると、そこではリュー君のドラグーンがライガーと対峙していた。本来なら格納庫内でライガーの側に詰めているはずだが、やはり僕に変装したヒカリに騙されて外に出されていたんだろう。足止めできていたのか?


「このぉっ!!」


 気合いを込めてドラグーンの標準装備であるロングスピアを繰り出すリュー君だが、ヒカリはかなり余裕を持ってかわしている。いや、刃先から30センチの距離で避けているから、一見するとギリギリに見えるかもしれないけど、その距離でかわせるってこと自体が余裕があるって事なんだよ。


「なかなかの腕ですけど、あたしの相手をするには、あなたはまだ、未熟!」


 その言葉と共にスピアの柄がつかまれ、瞬時にドラグーンの懐に飛び込んだライガーの左肘がカウンター気味に相手の頭部に叩き込まれる。


「うわぁっ!」


 顔面を潰されて吹っ飛ばされるドラグーンの両腕両脚に、奪い取ったスピアの穂先を四連撃で突き立てるライガー。二の腕と腿に大穴をあけられて倒れ込むドラグーン。あれじゃあ戦闘能力はガタ落ちだろう。子供扱いしてやがる。僕たちの中じゃあ一番格闘戦能力が低いヒカリだが、一般レベルで言えば達人級なんだよな。


 それにしてもヒカリ「少佐」、ノリノリ過ぎだろ。「2号機」を強奪して、そのセリフかよ!


「あら、おにいさま、意外に早かったですわね」


定型動作命令(プログラミング)を参考にイメージを練ったら入力(インプット)にも成功したよ。それにしてもノリ過ぎだろう!」


「その方が魔法はよく効きますわよ」


 うそぶくヒカリ。だが、言ってることは間違えていない。


「弱い物いじめとは、お前らしくもない」


「久しぶりのライガーですから、慣らしの相手をしてもらっただけですわ」


「なら、僕も相手してやるよ、沈黙(サイレンス)!!」


「…!!」


 かなり魔力を注ぎ込んで効果範囲を広げた沈黙(サイレンス)をかける。これで瞬間移動(テレポート)飛翔(フライト)で逃げることはできないぞ。余裕を持ちすぎたな。魔法があるならともかく、純粋な格闘戦勝負なら僕の方が上。しかも万能型のドラゴンと遠距離攻撃型のライガーという機体の性能差を考えれば、沈黙(サイレンス)の範囲から逃すことはないだろう。


 先手必勝とばかりにスピアを突き出してくるライガーだが、さっきの逆で今度は僕が30センチで攻撃を見切り、ドラゴン・ブレードの間合いに飛び込んで斬りつける。


 だが、長年お互いに訓練してきた相手だけあって、ヒカリもこれは読んでいたらしい。あっさりスピアを捨てるとドラゴン・ブレードを両手で挟んで止める。真剣白刃取りかよ!


 だが、僕もドラゴン・ブレードにはこだわらず手放し、斬り込んだ勢いのままで上体をかがめてライガーの胴回りに腕を回してしがみつく。タックルの体勢に持ち込んで、そのまま地面に押し倒し、マウントポジションを奪う。挟み取られたドラゴン・ブレードも肘打ちではじき飛ばした。さあ、これでもう逃がさないぞ!


「やはり格闘戦ではおにいさまの方が上手(うわて)ですわね」


 何だと!? なぜ沈黙(サイレンス)がかかっているのにヒカリの声が聞こえる!? これは念話(テレパシー)じゃないぞ! 今までの格闘だって、すべて無音の世界だったのに。


「フフフ、接触していれば振動で音は伝わる。そうでしょう。沈黙(サイレンス)は風系魔法。外気の振動を止めて音を伝わらなくする魔法ですもの。外気とシャットアウトされているAG機内の空気の振動は止められませんわ」


「あっ!」


 僕自身の驚愕の声が自分の耳で聞こえる。そうだ、生身の人間なら沈黙(サイレンス)してしまえば、声帯から出す声も外気とは接触しているのだから止められる。だが、AGの中にはNBC魔法対応のため外気とは接触しない気密コクピットがあり、その中でなら音が出せる!


潜地(グラウンド・ハイド)


 ヒカリの声と共に、ライガーの機体が地面に沈んでいく。機外には声が出ない以上、外に影響する魔法は効果がない。だが、機体自体に影響する魔法なら使える。そして、風系魔法である沈黙(サイレンス)は地中では効果が無い。


「追ってきますか、おにいさま?」


「地面の中でお前と魔法合戦するほど無謀じゃない」


 内心で歯がみしながらも、口調自体は冷静に抑えながら答える。


「あたしも、ちょっと遊びすぎましたから、これで失礼しますわ。次が本番ですわよ」


 地の底に去りゆくヒカリ。だが完全に没するまでには、まだ時間がある。せめて説得ぐらいはしよう。


「待て、今、他にこの会話を聞くヤツは誰もいない。だから言うぞ。ライガーを持って行くのは構わないが、()()は置いてけ。()()は遊び半分で使っていいモンじゃない。お前には、あんな『重い』代物(シロモノ)を撃たせたくないんだ」


「…ダメよ、お兄ちゃん。この世界の、いいえ、あたしたち人類の未来のために、今この時に()()を使っておく必要があるのよ」


 ヒカリの口調が変わった。仮面(キャラ)を外して本音で話している。


「ヒカリ!」


「父さんだって分かってるはず。『敵』の侵攻は早まっているの。『人類救済計画』は前倒ししないといけない。そのためには、今()()を試しておく必要がある」


「お前がする必要はないだろう。僕が撃ったっていい」


「…ありがと、お兄ちゃん。だけどね、あたしは自分の義務からは逃げない。それだけの力があるんだから。力ある者には、その力を有効に使う義務がある。高貴なる者の義務ノブレス・オブリージュの本来の意味は、そういうことでしょ」


「ヒカリ…」


「お兄ちゃん、あたしは感謝してるの。お兄ちゃんの秘密を知って分かった。お兄ちゃんの妹に生まれたから、あたしもこれだけの力をつけることができた。だから、あたしもこの力を使う。お兄ちゃんの果たすべき義務の端っこくらいは、きちんと担って見せる」


「すまない…違うな。ありがとう、ヒカリ」


 ヒカリの覚悟を知らされた。僕には過ぎた妹だよ。そこまで言われたら、もう止められない…いや、これも違うな。


「なら、見事に撃って見せろ。その()は僕たちで完全に止めてやるから」


「お願いよ。信じてるからね。それじゃあ、6日後、捕虜交換の日、お互い派手にダンスを踊りましょ」


「ああ、世界中に見せつけてやらないとな、僕たちの踊りを」


「それでは、おにいさま、ご機嫌よう。魔力波妨害(ジャミング)魔力波散乱(マジック・デフューズ)


 再び仮面(キャラ)を被り直したヒカリの別れの挨拶と共に、探知妨害をかける魔法をかけながら地面の中に消えるライガー。地中を移動する際の音や温度差は消せないから、音響探知(ソナー)温度感知(サーモグラフ)で位置を探ることは可能だろう。だが、地中を移動して沈黙(サイレンス)の範囲から出たら、すぐに地上に出て瞬間移動(テレポート)して逃げられるだろう。出てきた瞬間に攻撃すれば、腕の1本くらいは取れるかもしれないが、ヒカリが本気で逃げるつもりになった以上、もう阻止はできないだろうし、ヒカリの覚悟を聞いた今、ここで阻止するつもりはない。


 まだ沈黙(サイレンス)の効果が残っているので音はしないが、地面の震動からAGが近づいてきているのが分かる。振り返ると、父さんが再セットアップしたのか、起動に成功したポセイドンが歩いてきていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「悔しいです…騙されて、あしらわれて、何の役にも立てなかった!」


 リュー君が拳をブリーフィングルームのテーブルに叩きつける。さすがに叩き割ることはなかったが、表面が陥没したぞ。怪我はなさそうだからいいが。


「あ、すみません」


「いいさ、後で修復(リペア)しとく」


 我に返ったか。まあ、修理も大した手間じゃないし。暗く落ち込むよりは、物に当たれるくらい元気な方がいい。


「付き合いの浅いリュー君やヤマダさん、姫様が騙されたのはしょうがないでしょう。だけど、5年も一緒に暮らしてるリーベや、それこそ物心ついた時から家族同然に一緒にいたお前まで騙されるなよ!」


 と、口先ではカイたちを非難するが、本音じゃあない。これは姫様やリュー君の気分を軽くするための演技だ。このメンバーの中で、姫様とリュー君だけが、まだこのまやかし戦争(フォニーウォー)の真実を知らない。リュー君はまだ新人だからだが、立場上は知っていてもいい姫様の方も知らされていないのは、うかつに知らせたら即座にペガサスで帝国に飛んでいきそうな危うさがあるからだ。


「無茶言うな! ヒカリのヤツは、それこそ生まれた時からずっとお前と一緒じゃねえか! お前自身が気付いてないようなクセまで見て覚えてるようなヤツが本気で演技したら見抜けねえよ!!」


「むう…」


 カイに言い負かされた体で口ごもる。これが予定調和であることは、僕とカイとクーは分かっている。それこそ、家族同然の間柄だからね。


「とにかく、ライガーも()()も盗まれた以上、『スターダスト作戦』の阻止計画は第二段階に入った。明日中にはロプロスの調整を終えて、明後日には試験飛行する」


「了解。やるっきゃないよね」


 クーも気合いが入ってきた。頼むぞ。


「ああ、それに関してエリア51と52から共同で申し入れがあったんで、ちょっとやってもらう事がある。明日機材が届くから、その時に説明しよう」


 父さんが言って来たが、試験飛行と新エネルギー研究に何の関係が…ああ、()()のためだな。


「それと…」


 まだ何かあるのか?


「第一段階での阻止に失敗したので、これからは阻止計画ではなく本格的な迎撃作戦に入る。そこで作戦名を決定した。『スターダスト作戦』の迎撃作戦は、今後『レインボー作戦』と命名する。天空にかける橋ってことだな」


「待てや!」


 思わずツッコんでしまった。あんた、その作戦名は第二次大戦前のアメリカの戦争計画じゃねえか!! あと、某元祖合体ロボにもあった気がするが。


「僕的にその作戦名は許容しがたいものがあるんだが」


「む、個人的には『レインボー5号作戦』とか凄くイイ感じだと思うんだが、ダメか?」


「ますますもってダメだ! 米軍から離れろ!!」


「じゃあ、『レインボーダッシュ7号作戦』」


「どうしてインドの山奥で修行したヒーローになる!?」


 いや、「レインボー」だったらそれが出てくるのはヲタク的には当然なのは分かるんだけどね。アニメ版には巨大ロボも出てきたし。


「しかたがない、虹にはこだわりたいから虹の道ということにしよう。『レインボーロード作戦』これで決定! 司令官としての命令だぞ!!」


 あんた、ソレは金色のライターに変形するロボットの巨大化プロセスの名前じゃねえか!


「それも絶対に何か違うだろう!!」

次回予告


捕虜交換式が始まった。予想通りに会場上空に現れるライガー。ついに終末の炎が解き放たれる。


「人類救済のために! 世界統一の理想を掲げるために! イモータルよ、あたしは帰ってきたぁっ!! 食らえぇぇぇぇっ、水素熱核融合ハイドロ・サーモニュークリアフュージョン!!!」


 だが、それを阻止すべくノゾミの魔法も完成する。


「させるかぁぁぁっ! 中性子妨害ニュートロン・ジャマー!!」


 熱核融合の起爆剤となる「愚者の石」の反応を封じたが、止められるのはせいぜい数分間。地上での爆発を阻止するために、神鋼の怪鳥が天空高く駆け上がる!


次回、神鋼魔像ブレバティ第12話「太陽が増える日」


「これって何か違うんじゃね!?」


エンディングテーマソング「転生者たち」


この番組はご覧のスポンサーの…


来週も、また見てくださいね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ