第8話 驚きとの遭遇
翌朝、揃って朝食を食べたアーツたち。
アーツとレンクスの二人は、閃光剣と閃光銃を携帯し、外へと出ていく。
今日は昨日とは違った方向へと向かっていく予定だ。
「こっちの方は今日が初めてか」
「そうだな。とりあえず目印をつけながら進んでいくぞ。日が暮れるまでに帰らないと、何があるか分からねえからな」
「分かってるよ」
アーツとレンクスは航宙船が見えなくなる手前から地面に閃光剣で目印を付けていく。
最初は現地のもので印をつけようとしたのだが、困ったことにちょうどよさそうな棒が見つからなかったのだ。それで、仕方なく閃光剣を使って印をつけているのである。
ただ、この閃光剣でつけた印は思いの外効果的だった。
それというのも、閃光剣で刻まれた地面は焼け焦げてしまったからだ。よっぽどのことがなければしっかりと印が残るのである。
これなら、簡単に目印が消えることはないなと思った二人は、その方法で探索を行っているのである。
「にしても、どこに行ってもうっとうしいほどに見たことのない植物ばかりだな」
「学習プログラムで見たツルってやつだろうかな。実際に見てみるとこんな感じなんだな」
アーツはぶら下がっているツルをくいっと引っ張る。程よい弾力があって、引っ張っても元に戻ろうとしている。
それが面白かったのか、アーツは何度も引っ張って遊び始めた。
「おい、やめろ。さっさと探索を続けるぞ」
「おう、わりぃ。何か収穫があるといいんだがな」
「のんきなことを言ってないでしっかりと周りを見ろ。元の場所に戻るための情報を、なんとしても手に入れるんだ」
アーツたちは、少し進んでは印をつけるという作業を繰り返しながら、周辺の探索を行う。
どのくらい歩いただろうか。
空には明るい太陽が高く昇り、ほぼお昼だということを告げている。
さすがにお腹が減ったらしく、レンクスのお腹が鳴っている。
この時代の食事は効率化を優先したあまり、なんとも見た目の寂しい固形ブロックかゼリー状の飲料かで食事を済ませてしまう。
「歩き回ったが、これといったものは見つからないな」
「ああ、似たような植物が生えているだけで、辺りを調べても何も出てきやしない。仕方ないから、そこらの植物をサンプルとして持ち帰るか?」
「そうだな。それだけでも違うからな。食べられるものを見つけるっていうのも目的だからな」
アーツとレンクスは食事を済ませて話し合った結果、何もなかったとしても辺りに生える植物をいくつか採取して帰ることを決めたのだった。
時間的な関係で、そろそろ探索も引き返さないといけない。
二人は立ち上がって戻ろうとした、その時だった。
「ガアアアアッ!!」
巨大な咆哮が辺りに響き渡る。
「あれは、初日に見たでっかいトカゲ!」
「バカ野郎、でかい声を出すな。気付かれるだろ」
思わず叫んでしまったアーツを、レンクスが注意している。
ところが、そんな叫び声もかき消されるくらいの二発目の咆哮が放たれる。
「げっ、二匹目じゃねえか。隠れるぞ、レンクス」
「ああ、さすがに俺たちじゃ勝ち目はない」
アーツとレンクスは、今回も近くの植物の陰に隠れる。
巨大なトカゲたちは、どうやら戦っているようだ。大きな口を開けて互いにかみ合おうとしている。
その迫力はなんとも言えないものだった。
自分たちを一瞬で踏みつぶせるような存在が、互いを攻撃し合っているいるのだから。
「すげえ、恐竜とかいう連中の戦いってこんな感じだったんだな。くうううう、みんなに自慢してやりたいもんだぜ」
目の前で繰り広げられる戦いに、アーツはすっかり興奮しているようだ。
ところがだ。興奮してみていたのも少しの間だけだった。
自分たちの知識にないことが起きたのだ。
「なっ!?」
アーツとレンクスが目を丸くして、突如として起きたできごとに釘付けである。
なんていうことだろうか。戦っている巨大なトカゲの片方が、突如として口から炎を吐いたのである。
もう一方のトカゲは防御も回避もできずに近距離でまともに炎を受けてしまい、真っ黒に焼け焦げてその場に倒れ込んでしまった。
「グウォオオオオオオッ!!」
戦いに勝ったトカゲが勝ち名乗りのように大きな声で吠える。
かと思ったら、倒した相手をむさぼり始めていた。
「げえぇ……。そんなのありかよ」
目の前の信じられない戦いの結末に、レンクスは目を離すことができなかった。
「なあ、レンクス」
「なんだ、アーツ」
「恐竜って火を噴いたっけか?」
「……噴かねえな」
学習プログラムにある、古代の知識と照らし合わせても、恐竜が火を噴いたという記録はない。
となれば、ここは恐竜たちのいた時代にそっくりな別な場所とでもいうのだろうか。二人の中に妙な焦りが生まれ始める。
「早く戻ってニックに話をしなきゃな」
「ああ。あいつなら何か分かるかもしれない。とにかく、今見たことを絶対忘れんじゃねえぞ」
「忘れるとか無理だろ。インパクトが強すぎるんだよ」
巨大なトカゲが食事に夢中になっている間に、アーツとレンクスは急いでその場を離れた。
過去の世界なのか、それともそれによく似た別の世界なのか。今いる自分たちの世界に対して、疑問が膨らんでいく。
アーツたちが不時着した世界とは、はたしてどのような場所なのだろうか。




