第39話 地下空間
やがて梯子が終わる。
どうやら縦穴の一番奥に到着したらしい。
ブランの手を引いて、ノワールが何かを訴えている。
「ノワール、どうしたの?」
ブランが耳を傾ける。
「ニック、いる?」
話を聞き終えたブランは、ニックを呼んでいる。
「いますよ。どうしたんですか、ブラン」
ニックからの返事が聞こえる。
「ノワールが言うには、梯子から降りた横に何か突起があるそうなの。それを押してくれないかっていうの」
「分かりました。梯子の横ですね」
真っ暗闇の中、ニックは手探りでいわれたものを探す。
しばらくすると、何かが手にぶつかったようである。
「あまり段差のない突起……。これはスイッチですね」
ニックは突起を押す。
「わおっ!」
一気に中が明るくなった。どうやら突起は照明のスイッチだったようである。
「すげえな、これは……」
「そうですね。まるでコロニーや航宙船の中のようですよ」
そう、アーツたちの目の前に広がった空間には、機械のようなものがびっしりと並べられていたのである。
まさか恐竜たちの闊歩する古代の地球のような場所に地下に、自分たちの住む世界と同じような高度な機械文明が眠っていようなどとは、誰が想像しただろうか。
『奥に何かの反応がある。行くぞ』
「奥に何かあるって」
ノワールたちが激しく奥の方を気にしているようだ。
ブランの通訳で、アーツたちは周りに目もくれずに長い通路を奥へと進んでいく。
しばらく進むと、そこには大きな扉があった。自分たちの身長の倍くらいの大きさのある扉である。
「ここにいたのはまさか巨人ってわけじゃないよな?」
「ただ、趣味で大きくしただけかもしれませんよ?」
扉を前にアーツたちが話し込んでいる。
「それは後でいいだろ。ノワールたちが奥に行きたがっているんだ。扉をどうにか開けられないのか?」
レンクスが騒いでいる。
「お前の怪力はどうなんだよ」
アーツは冷静に返す。
「試してみたが、力を発動させてもうんともすんともだ。何かスイッチのようなものでない限りは開かないようだぜ」
どうやら、レンクスの怪力をもってしても開かない扉らしい。押しても引いても横にスライドさせてもダメだったそうだ。
仕方なく、ここはニックに任せることにする。
「ニックが言うには少し時間がかかるようだし、ここまでの通路を調べてみるか」
「そうね。先に進めないんだからそうしましょう」
「私も賛成ね」
「しゃーねえなぁ……」
レンクスは気が進まないようだが、アーツたちは通路を調べてみることにした。
ノワールとヴェールをニックのところに残し、オランジュと一緒に通路を調べて回る。
どこまでいっても金属や機械まみれで、外とはまったく異なった光景だ。
「おっ、ここに扉があるぞ。開くかな?」
アーツが途中に扉があることに気が付いた。
レンクスに頼んで開けてもらうことにするが、ここは奥とは違ってあっさりと押したら開いた。
だが、アーツたちは中に入ったことを後悔する。
「ううっ、におうな……」
「腐ってるのかしら、これって」
「空調が効いていてこれってどんだけなんだろうな」
「あっ……!」
においに驚くアーツたちだが、クロノだけが何か違う反応を見せている。
「どうしたんだ、クロノ」
「あそこ……」
どうやら部屋の片隅で何かを見つけたらしい。
その何かに気が付いたアーツたちは、思わず目を逸らしてしまう。
そこにあったのは、白骨化した遺体だったのだ。
「俺たちと似た感じの格好だな。ってことは、これは人間ってことか……」
「人間が住んでいたとか、信じられねえな……」
目の前の光景に、段々と言葉を失っていく。
アーツとレンクスは目の前の現実をじっと見つめているが、さすがにブランとクロノは直視できずにいた。
「こいつがニックの聞いた金属の声に出てきた『主』ってやつなんだろうかな」
「さあ、どうだろうな」
ニックが聞いた声以上の情報がないので、アーツたちには特定は不可能だった。
「……気の毒だが、こいつはこのままにしておくしかないな」
「だな、埋葬するには地中深すぎるし、金属まみれじゃ穴も掘れない。ブランたちも気分が悪そうだから、この遺体にはこのままここにいてもらうしかないな」
やむなくそのままにして、扉を閉じて去ることにする。
扉を閉めて出てくると、ニックと一緒にいたはずのノワールが走ってくる姿が見えた。
『おお、ここにいたか。小僧がやったようだ。すぐに来てくれ』
「ニックが成功したのかしら。行きましょう」
ノワールの言葉が分かるブランは、アーツたちに伝える。
さすがに居心地が悪くなったという子もあって、アーツたちはこの呼び掛けに従うことにした。
扉があった方へと進んでいくと、確かに扉が閉まって行き止まりになっていた場所が通れるようになっている。その前にはニックが笑顔で手を振って待っていた。
「おーい、みんな。開いたから進みますよ」
遠くからでも分かる喜びの声である。
白骨化した遺体を見つけて沈んでいたアーツたちの気持ちが、ニックの笑顔で再び浮き上がってくる。
ニックがあっさりと開いてしまった扉の奥には一体何があるのだろうか。
緊張した面持ちでアーツたちは足を踏み入れたのだった。




