第38話 ふたが開く時
邪魔をしに来た恐竜を無事に倒したアーツたちは、再びニックのところに集まる。
そこではニックが地面にしゃがんだまま、なにやら真剣な表情をしている。
どうやらニックは手に持っている金属と、地面に埋まっている金属とを見比べているようだ。
「やっぱり、材質は同じようですね。となると、この金属は元々、この板のように見える金属の一部だったのでしょう」
ニックはそういうと、地面の金属の上に、持ってきた金属を重ね合わせる。
確かにニックの言っている通り、二つの金属の色合いはとてもよく似ている。光加減を見てみても、元々ひとつであったことが窺い知れる。
「それではいきます。僕の力で、あるべき姿に戻るのです」
ニックが力を込めると、じわじわと金属が光り始める。持ってきた金属は宙に浮き、なにやら足のようなものが生えて地面の金属とつっくついたのだ。
「やっぱり、この金属はこの地面に埋められた出入口のハッチの取っ手だったようですね」
元の姿に戻った金属を見て、後ろを振り返りながら自信たっぷりにニックは言い放っていた。
「そりゃ、見れば分かるよ。ただ、その中はどうなってるんだよ」
「それは今から調べるんじゃないですか。あの恐竜たちが、なぜここに来ると集まってくるのか。その理由を解き明かすカギがここにあると思います」
ニックがハッチを持って見ている。
「それでは開けますよ」
全員がごくりと息を飲む。
ところが、ニックがいくら持ち上げたり横にずらしたりしようとも、金属の板はまったくぴくりとも動かない。
「ちゃんと力入れてるのか?」
「し、失敬な。僕は全力でやってますよ」
うんともすんとも動かない金属の板に、アーツに疑問を持たれてしまっている。
だが、ニックはそもそもメカニックだ。力仕事は専門外なのである。
なので、金属のふたが開くかなくても慌てるような状況ではないのである。
「どれ、ニック。俺に変わってみろ」
「レンクス……。うん、頼みます」
声をかけてきたのは、怪力に目覚めたレンクスだった。元々力が強いのだが、魔素の影響でさらに怪力になったのである。
「ちょっと離れてろ」
レンクスは念のためにアーツたちを自分から遠ざける。
理由としては二つだ。
ふたを壊して吹っ飛ぶ可能性。もうひとつは中から何かが飛び出してくる可能性だ。
どっちにしても、近くにおらず距離を取っていれば対応は可能だろう。
そんなわけでレンクスは離れるようにアーツたちに伝えたのだ。
「それじゃ、開けてみるぞ」
レンクスが取っ手をつかみ、力を込め始める。
その様子をアーツたちは息を飲みながら見守っている。
「ふんぬぅっ!!」
レンクスが力を込めて、一気に取っ手を持って引き上げる。
すると、取っ手は壊れることなく開いた。
「やっぱり、あの金属は持ち手だったんですね」
ニックが大きな声を出している。
「なんだ、これは……」
「梯子かしらね」
「結構深そうだわ」
ふたが開いた部分を覗き込んでみると、人が二人ほど通れる穴が開いていた。あの金属は、この出入口のハッチだったのだ。
中を覗き込みながら考えているアーツたちだったが、そうも悠長なことを言っていられなくなった。
「やべえ、足音が聞こえてきたぞ」
そう、遠くからズシーンという恐竜の足音が聞こえてきたのだ。
「あの恐竜たちは、ここのガーディアンなのかしら」
「分からねえが、今はっきり分かっていることは、俺たちは奴らに囲まれつつあるってことだ」
「げっ、足音が増えてきてやがる」
なんと、アーツたちの元に恐竜たちが集まり始めたのだ。
最初はひとつだったというのに、その数が徐々に増えていっている。
「くそっ、さっさと穴に入るぞ」
「で、でも!」
アーツたちが叫ぶが、ブランとクロノが戸惑っている。
「ノワール、ヴェール、二人を連れて行け。オランジュは警戒を頼む」
アーツが指示を出すと、言葉は通じているらしく、ノワールたちはブランたちを連れて穴の中へと入っていく。
「ニックもさっさと降りろ。オランジュが先行して潜っているから、安心はできるはずだ」
「分かりました。アーツたちは?」
「俺たちはお前らが全員入ってから後を追う。とにかくさっさと入れ。時間がねえ!」
アーツが叫ぶと、ニックはこくりと頷いて開いたハッチの中へと入っていく。
「よし、俺たちも入るぞ。レンクス、最後にハッチを閉じてくれ」
「任せろ!」
全員が穴の中に逃げ込んだことを確認すると、アーツが入っていく。
その後、レンクスがふたを持ち上げながら穴へと入り、最後にふたを閉じた。
その直後、恐竜たちが到着する。
何かを感じてやって来たはずなのに、何も見当たらなくてしばらく辺りをきょろきょろしている。
首を捻りながらしばらくうろちょろしていたのだが、何もいないと分かるとその場を去っていった。
恐竜たちが集まってきてしまう場所の地下へと潜入することに成功したアーツたち。
中へと降りていったアーツたちを待ち受けるものとは一体何なのだろうか。
暗闇が広がる中、壁についている金属の梯子を降りていく音だけが響き渡っている。




