第19話 痛み分け
奥に進んでいったアーツたちだったが、これといったものは発見できずにいた。
これでほぼすべての場所を調べ終わったのだが、ここまでまったく何の収穫もなしと、単なる徒労に終わってしまっていた。
「マジかよ……。不時着した場所の近くに何にもないとか、信じられねえぜ」
アーツはその場にへたり込んでいる。
「文句を言うな。それよりも昼飯を探すぞ。食ったら戻って今日の分の報告をしないとな」
「ああ、そうだな。しかし、何の収穫もなしっていう報告を、どの顔をしてすればいいんだよ」
「なかったんだからしょうがないだろ。俺たちの知らない場所なんだ。何もないっていう情報も十分収穫なんだからよ」
アーツはレンクスの言葉に黙り込むしかなかった。言われた通りだからだ。
未知の場所においては、何もないという情報も有益な情報となる。
「分かってる……。分かってるんだけどよ……」
アーツはなんとももどかしい気持ちになりながらも、一緒になって食べられるものを探しに行った。
ブランはノワールやヴェールと一緒に探して回っている。
「ノワール、ヴェール。私たちに食べられるものってあるかしらね」
『お任せ下さい、主。前回と同じものであれば、この辺りにも自生しているはずだ』
『草ばかりもいいが、肉も食べた方がいい。俺も暴れたいと思っているからよ』
『だが、我らと同じ虫どもを捕らえたところで、主たちが食べられると思うか? できるなら、あのデカブツどもを仕留めた方がいいだろう』
『できるなら苦労はしねえよ』
ノワールとヴェールの話を聞きながら、ブランは笑っていた。
少々ケンカ腰っぽい感じではあるものの、仲がよさそうだから安心したのである。
そんな中、ヴェールが何かを発見したようだ。
『主、これを』
「なにかしら、ヴェール」
ブランがヴェールから何かを手渡される。
「これは、金属でしょうかね。でも、なぜこんなところに?」
不思議で仕方がなかった。
ここは恐竜時代に酷似した場所だ。
金属なら地中にある可能性はあるものの、地上に明らかに手を加えたような状態で転がっているのだから、ブランは首を傾げてしまう。
「ノワール、ヴェール。ここのことをしっかり覚えておいて。私も覚えておくから」
『承知した』
返事をしたノワールが、発見した位置にマーキングをする。
ひとまずこれでいいだろう、そう思った時だった。
「ガアアアッ!!」
「キャアアアッ!!」
突然咆哮が響き渡り、ブランは悲鳴を上げてしまう。
なんということだろうか。なにもいないと思った場所に巨大なトカゲが眠っていたのだ。
なんらかの刺激を受けたらしく、目を覚ましてしまったらしい。
「ブラン!」
近くにいたアーツが駆けつける。
「くそっ! なんで化け物がいるんだよ。レンクスは?」
「この近くにはいないみたい。どうしよう、私の方を見てるわ」
ブランが目を向ける先には、巨大なトカゲの目がある。確かにしっかりと視線が合ってしまっているようだ。
「ガアアアッ!!」
もう一度咆哮を上げて、巨大トカゲは頭を大きく持ち上げる。
「やべえ、あれは前に見た動きだ。火を吐くみたいだから、逃げろ!」
「え、ええ?! ど、どうしよう、動けない……」
「なんだと!?」
なんということだろうか。ブランは驚いたショックで腰が抜けてしまったようだ。
このままではトカゲの噴く炎によって、ブランは丸焼きになってしまう。
さすがのノワールとヴェールも、巨大なトカゲ相手では勝負にならない。そうなると、この場でどうにかできるのはアーツだけということになる。
「ノワール、ヴェール、ブランを連れてレンクスのところまで行け! こいつは俺がどうにかする!」
「アーツ!」
ブランは叫んでいるが、ノワールとヴェールはアーツの言葉を理解したらしく、ブランを連れてその場を離れていった。
その直後、アーツに向けてトカゲは火を吐き出していた。
だが、このまま丸焼きになるつもりはないと、アーツは閃光銃を取り出して構える。
「せめて相打ちくらいになってやらあ!」
アーツの思いが乗った閃光が銃から放たれる。
閃光と炎では干渉しないかと思われたが、アーツが放った閃光が、トカゲの火を吹き飛ばしていく。
「グルッ?!」
身の危険を感じ取ったのだろう。トカゲはとっさに首を横に動かしている。
その頬を、アーツが放った閃光がかすめていく。
「ギャアアアアス!」
思わぬ一撃を受けたトカゲは、苦痛の声を上げるとそのまま去っていく……と思われた。
「うわっ!」
振り向きざまにしっぽの一撃が反撃として繰り出され、油断していたアーツはまともに食らってしまった。
「ぐっ!」
全身に激痛が走る。
閃光銃から放たれた一撃で炎はなんとか消し飛ばしたものの、完全に油断していた。
アーツの体は地面に激しく叩きつけられてしまう。
「ぐあああっ、体がいてえ……。これは、俺は死んじまうってことなのか?」
激痛が走るために、のたうち回ることもできない。
その場で大声を上げながらうずくまる。
「アーツ!」
ブランたちと合流したレンクスが駆けつける。
だが、その声を聴いた瞬間に安心したのだろうか、アーツの意識はそこで途絶えてしまった。




