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◢◤ TH eFLATLAND ◢◤悪党だらけの日本大都市で多元界戦争  作者: りんねりん
EPISODE 1::星の少ない街を王女は駆けるが悩みは尽きない
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007/穴に落ちたく無ければ階段を降りればいいじゃない

「あなななっ」


「穴、ですね。まあ穴というよりも球、ですね。球というよりも門ですが」


「どれでもいいわ! なにアレぇぇぇ!!」


パニック状態のミコを尻目にカノンは冷静。


クルマはどんどん、その巨人然とした女体とその股ぐらの球体に近づいていく。


巨大な女体の顔も見えそうになってきたが、ドロリと液体がその顔らしき場所から垂れていた。 赤紫で泡立つ液体。


近づけば、女体の至る所からその液体が吹き出していた。 まるで無数にあるホースから溢れ出しているような状態だ。


溶けている。 夏場のアイスクリームのように、ドロドロに。 見てるともう脳みそも溶けそうだ。


「まったく……悪趣味な……犬もしがみついてますし」


「だーかーらーなんですか! あれーーー!」


蒼白になって叫ぶミコ。 このままじゃあの物体にぶつかるのか、あるいは飲まれるのではないか。


しかし、クルマのスピードは怯むことなくまったく衰えない。


「アレは先程の男、ミコ様の兄を名乗ったグリッスルが創り出したポータルです。

**グランルード**の王族のみが創り出せるモノ……この街と異世界を繋ぐ、門ですね」


「グリッスルの品性がゲロよりも劣るので、あのような形態になっておりますが……」


淡々と説明口調のカノン。


カノンと運転手の目がバックミラー越しに合い、アイコンタクトを交わした。


その直後、道路から歩道へと乗り上げる。 幸い人通りはなかった。


ガタンと弾むように数回上下する、派手な赤いクルマ。


「犬もついてきてることですし、ルートを変えましょう」


その勢いのまま、目の前にある地下鉄へと続く階段にクルマごと突っ込んだ。


階段を大きく跳ねながら下っていく。

グルグルと目まぐるしく変化する、万華鏡の中にいる気分だ。


勢いで頭を打つミコ。 なんとか舌は噛まずに済んだ。


「ああー先程は失礼しました。ゲロなどとはしたない例えを」


相変わらずカノンは無表情。


このハードな絶叫系アトラクションに、さらにリアルな痛みが追加されたような状況でも、彼女はクールにキメている。


だけどミコは――


「いやそこじゃないでしょ、謝るとこ!」


と叫んだところで横に振られ、背中を強打した。 息が詰まりかけて青ざめる。


そこで、停車した。


「地下鉄で行きましょう」


そう言うと、カノンはすぐさまクルマを降りる。


美しいドレスの裾を翻し、ヒールをカツンといわせた。


足首まであるワインレッドのドレス。 スリットが深く入っていて、セクシーに脚を見せている。 胸元もザックリと谷間を作っていた。


なんだかドラマとかで見る、ベタな一昔前のキャバ嬢のようだ。


ミコもカノンに見惚れてる場合じゃないと、恐る恐るクルマを降りた。

勢いで吹き飛ばされた「犬人間」が転がっている。


そこは地下鉄駅の改札前だった。

御丁寧に自動改札が並ぶその前に、横付けされて停車している。


クルマ自体もたいした損傷はなく、多少傷が入っている程度。

たいしたドライビングテクニックだが、感心している場合じゃないことはミコもわかっていた。


周りに人だかりができてきていた。

驚いて卒倒している人もいる。

アナウンスが警報を発してうるさく響く。


いくら世界的にも有名な犯罪都市・八華(はっか)でも、堂々とこんなことをする奴は稀だ。


しかも、そんな稀な超危険行為のクルマから降りてきたのが、見た目キャバ嬢と女子高生。

誰もが目が点になるのも当たり前の光景だった。


「お兄様をお願い」


カノンは運転席から降りてきた男にヒコを背負わせる。


それ程大きくない中肉中背みたいな男だが、難なく、むしろ軽々とヒコを背負った。

しかも走るとミコよりも速い。


自動改札も余裕で飛び越えた。


ホームへ降りる階段へ、深く、深く潜るように進む。


「どこまで話しましたっけ?」


「いや、今じゃないでしょ!」


一行は好奇と恐怖の目に晒されながらホームへ辿り着いた。


すぐに来た電車に乗り込む。


もう、ここまできたら進むしかない。

ドコに向かうかは、もう問題じゃないのだ。


とにかく進む。 暗く深く長い地下鉄は、走る。

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