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061/大乱闘!悪い子ブラザーズ!(義兄弟)

穴だらけのトラックを舐め回すように見てから合図。


真っ白なトラックの後方扉がこじ開けられた。

空っぽ。何もない。

ガランとした空間。

飛び散った弾丸だけがまだ熱を持って転がる。


運転手。引きずり出されるように白ずくめの男が道端に転がった。


「やはり……下等な種だ。神の下にあらん!」

男の目は歓喜している。


マズイ。とっさにキリは身を反転させて後方にステップ。

と、白ずくめの男は爆発し弾け飛んだ。

巻き込まれた何人かのスナッファーメンバーがまた転がる。

自爆か。


「やっぱ街賊《がいぞく》ではないな……」

と小さく呟く。


そりゃそうだ。わざわざ自爆なんてしない。

最後の最後の、その最後まで生き残る術を考えるのが街賊。

そのために逃げることだってどうってことはない。

勘違いしちゃいけないのは命が惜しいんじゃない。

生き延びて次は逆襲を果たす。

これはそうゆうゲームだ。

少なくともキリにとっては。


「さて……コイツは囮だ。ってことは……どこかで本隊が動いてるってことだな。

どこかに動きはあ」

「ここから2キロ南。さっきセディショナリーズを足止めした辺り、交戦です!」

「あ? セディショナリーズか」

「あっいえ、違います。いえ、違わなくはないっすけど。えっと」


鬼気迫るキリの雰囲気にしどろもどろになるスナッファーの下っ端。

「ラモン一族が……」


舌打ちキリ。

羅吻《らもん》一族が絡むのは面倒だ。


だが、これで奴らの狙いもハッキリする。

わからないこと程イラつくこともない。

ってことで、


「よし、行くぞ」


『街賊・スナッファー動き出しました』

「……ああ、みたいだな」


『おそらくセディショナリーズ、ラモン一族、スナッファーの三つ巴となるかと』


「それは構わない……。街賊同士がどれだけヤリ合おうが問題ないが……ロザリー教徒とスナッファーが接触した」


八華《はっか》中央の建物の屋上を飛び回りながら凄惨な光景を目の当たりにしたレイジ。

スナッファーが銃をぶっ放し真っ白なトラックを蜂の巣にする。

街賊に公道だとか衆人の目とか関係ない。

とは、わかっていたがコレ程イカれてるとは。


この八華というフィールドで相見える相手としては……かなり厄介だなと。


「……街賊同士の争いはほっとけ……。いまは全力でロザリー教徒を……」

『怪しい動きアリ! K303ポイント!』

通信班が半ば叫んでいる。


K303……。レイジのいる場所から南東へ約500m。すぐだ。

「了解、すぐ向かう。他の奴らはまだ持ち場を離れるな」

凛々しくキメるレイジ。通信を切る。


「あの……班長」

「……なんだ? モミジ。どうした?」

横にいた班員モミジが恐る恐る口にする。


「く、クランベリーの姿が……ありません」

周りを見渡し確かに、とため息ひとつ。


またアイツか。どこに? いやだいたいわかる。

さっきのスナッファーの騒動に顔出してるんだろう。

アイツが好みそうな派手な出来事だ。


「悪い……モミジ。アイツを連れ戻してくれ。俺は……ポイントへ向かう」

それだけ行って駆け出す。


さて……。

ラモン一族。

シラサギという呼び名のオンナがボス代行の武闘派集団。

スレッジハンマーズもこの街の武闘派として名を馳せているが、ラモン一族はまた少し違う。

武闘派……というよりは好戦的なチームだ。

戦闘民族とも呼ばれるような。


本来ボスはディー・ディーと呼ばれる男だが現在行方不明中。服役中という噂もある。

捕まる街賊もいるんだな~~~と。


まあこのディー・ディーという男がやたらに好戦的な性格だったわけでその資質を受け継ぐ形でラモン一族というチームも同様であるというわけだ。

で、そのラモン一族・ボス(代行)シラサギがいまセディショナリーズの目の前にいる。


「よぉヒコ。久しぶり~。こんなとこでなにしてんの?」

背中の中ほどまである艶やかで少し巻いている髪。

スラリと伸びた手足に目鼻立ちもハッキリした顔がつく。

身長は170を越える八頭身。モデル体型。

唇は厚く、アレックス曰く、八華1、2を争うエロい唇、とのこと。

その唇の口角が上がる。


「まあなんの用事でもいんだけどさ~。

ちょっと不用意よね。こんな少人数でホーム飛び出すなんて」

クスリと笑うシラサギ。


「そういえばさっきアレックスも見かけたけど。カフェで店員に声かけてたな~」

「へぇ~。まぁアイツはセディショナリーズじゃねえけどな。

で、お前らはなにやってんの?」

ヒコは意に介さない。なんの驚きもないぐらい平然と返す。


「決まってんじゃない~!? アンタらまとめて潰すためだよ~。

いや、ほんとはさーキリんとこの……スナッファー?

ホーム離れてこんなとこまで遠征に出てるじゃない?

これってすっごいチャンスだな~って。

ホームまでいって潰すのはなかなか大変だけどさー」

シラサギが手鏡で眉を気にしながら喋る。


「あっそう。じゃあどーぞどーぞ。スナッファーね。

たぶん向こうの方にキリちゃんいるよ」


「いや、スナッファーもだけど……。

アンタらセディショナリーズ先に潰しとこうかと。

少人数でいるみたいだし。馬鹿なの?

いくらこのへんが中立地帯っていってもさー」


――なるほど。狙いはそうゆうこと。

いつもお互いホームにいればなかなか交戦とはいかないが……ひとたび遠征してホームを離れれば地の利も何もない。

ただチカラとチカラがぶつかるだけ。

その時をラモン一族は狙っていたと。


しかも八華中央は誰のナワバリでもない。

ここでやり合うということは単純にそのチカラが強い方が勝つ可能性は高い。

で、いまこのエリアにいる中で一番チカラを持ってそうなのがラモン一族。

まさにこの戦いに賭けてきた感じ。


「ああ……そう。狙いは俺らか」

ヒコがアタマをかく。心底面倒くさそうアピール。


「アハハっ。オマケだよ。アンタらセディショナリーズは。

スナッファーをやりに来たらアンタらがいただけ。ついで。

だいたい少数精鋭だかなんだか知らないけどよくこんな人数で遠征してるね? バンド?

アンタらバンドなの? なに? 売れないインディーズバンドのツアー?」


「シラサギ~。よく喋るなぁ。まあいいや。

コイツらの相手は俺だけでするからカノンとファイヤーボールとミコはアイツらと合流して」


不敵な笑みを浮かべてポケットから魂塊を取り出すヒコ。やる気。


「もうこっからは俺もチカラを制御すんのはやめたんだ。同じ街相手の奴でもな」

その言葉を聞いてファイヤーボールが少し笑い、カノンはただ無言で頷く。ミコはもう青白い。


それはきっともう前進するというヒコなりの不退転の決意なんだろう。

自分の血の因果を受け入れ、武器として使う。


あらゆる手を尽くしてでも欲しいものは手に入れるという街賊としての決意だ。


「いやいやヒコ。ナメてんの? ウチら今総勢100はくだら」

ボコリッ

と音が響きボンネットが大きくめり込み穴を開けてニヤけるヒコがいる。


「え?」

一様に驚き。

いくらパワフルでも素手の一撃でクルマのボンネットを?


「ああ……ちなみに今のは全力じゃあないから」

とか言ってさらに笑うヒコ。


「いきますよ、ファイヤーボール、ミコ様」

そう言って走り出すカノンとファイヤーボール、ミコ。


魂塊《こんかいを使ったヒコに勝てるニンゲンはいないだろう。

持続力が不安だが、それも対グランルード人であればこその心配。

ニンゲン相手ならいくら数で不利だろうがすぐに終わる。なんなら色々飛び越えて逃げることもできる。


だから、走るカノン。目的に向かって。

そして、そんなヒコの下へまたクルマが横付け。ギャギャッとどデカいハマー。


「おーおーヒコ。おもしれ〜ことやってんなー。戦いなら俺らに任せろよっ!」

と、降りるなりデカい声。

筋肉を震わせながら登場。

キュウタだ。スレッジハンマーズのボス。

トラとリュウもいる。


心強い援軍だが……


「……いや……お前らいらねぇから……ややこしい……」

「ん? なに? まあ任せとけヒコ! お前はもうウチの大将だ!

わざわざ大将自らこんな奴ら相手することもない!」

声がデケェなとちょっと耳をかくヒコ。


「だいたいアレだ。アレ。ええー……そう、みずくさいぞ! 遠征するなら俺らにも声かけろよ!」

みずくさい程度の言葉がスっと出てこないような脳筋がいると面倒だから声かけなかったんだけどな、と言おうとして黙ってヒコは笑顔。


「スレッジハンマーズ……。アンタらがセディショナリーズについたって噂は本当だったんだねー。まあこんな筋肉ダルマ、いくらいても壁ぐらいにしかなんないでしょ」

シラサギはまったく脅威に感じていない。


「ああーもうなんでもいいよ。やるぞ」

と、一歩踏み出すアクションで一気に詰め寄るヒコ。

体が、軽い。


シラサギがそのエロい口を半開きにしながら目を見開いている。

3割程のチカラで充分。

ヒコは拳を振るう。まるでスローモーションの気分。ヒコにはシラサギの動きが手にとるように見えた。


が、――シラサギはよけた。間一髪で。

少しばかり長い髪に触れたが。


「え!?」

そこにシラサギの鋭いケリが飛んでくるのが横目に入り瞬時に距離をとる。

「おっ!? いまの避けた? なかなかじゃん。アンタまあまあやるんだね」

余裕を見せているのはシラサギの方だった。


いくら3割程度に抑えたとはいえ……

グランルードの血のチカラを使ったのに避けた?


「……なるほど……。街賊ってやつは思ったよりも強いってわけだ」

1人呟きほくそ笑むヒコ。


傍から見たら相当に気持ち悪いがシラサギの目にはそれが余裕の笑みに見えた。

「本気出していいよ。私も出してないから。てかなんかマジで最近調子いいんだよねー」


剥き出しの挑発。それはもう情熱。

「おーし! じゃあトップ同士のやり合いは任せた! あとの奴らは俺らが始末するぞ」

相変わらず嬉しそうにデカい声を張り上げるキュウタ。


こうなったら乱戦。

八華中央の大通りで街賊がまた歴史を作ろうとしている。

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