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死ねない少女は生き直したい~二百年生きた手品師、魔法少女に巻き込まれて平和を守る~  作者: 柚月由貴
二章

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11 男子三日合わざればなんとかってのは機械にも当てはまるのかな?

 自分の家。ちゃぶ台の前に座っていた僕は、お茶を啜った。


 ふー、落ち着くねー。


 今は朝ごはんを食べた後で一服してる。

 ごはんを食べた後の、ゆっくりした時間って良いよね。

 リラックスした状態で、もう一口啜る。


 とはいえ、いつまでもゆっくりしてる訳にもいかない。

 一息いれたら行動しないとね。


 チラっと下を見ると、胡座をかいた足の間で、優太が同じように寛いでいた。


 ……うん、ちょっと優太は甘え過ぎかな。

 孤独な時間が長かったのは理解してるから、許してた面もあるけど。この子の甘えたについては、程々で治していかないといけないね。


「お姉ちゃん、どうしたの?」


 僕の視線に気づいた優太が、見上げてくる。

 その頭を撫でながら、僕は優太に足から降りるように促した。


「なんでもないよ……ほら、そろそろ真面目な話するよ」


 優太を対面に座らせて、落ち着ける。

 真面目な雰囲気になったのを確認して、僕は切り出した。


「それじゃあ、どうやって情報収集するかだけど――」


 僕らがこれから話すのは、あの二人組の情報集めについてだ。


 下村さん、藤堂さんと話して僕ら四人の方針としては、いったん様子を見ることになった。

 けど、ただ待って相手の出方を窺うだけだと、彼らが何か行動を起こした際に対応が後手になる可能性が高い。


 なので様子を見てる今の間に、優太とできる限り彼らについての情報収集をしようと思ってるのだ。

 このことは下村さんと藤堂さんには言ってない。

 あの二人には普段の生活があるし、あまり危険な目には合わせられないからね。


「やっぱり地下施設に行ってみるべきかなって思うんだけど」


 優太が早速意見を出してくれた。

 僕もそれは考えていたので頷いて同意する。


「うーん、やっぱそうだよね」


 僕らは、あの二人組が地下施設を運営してた組織の人間だと考えてる。

 だから、地下施設に行けば、何か情報が得られるんじゃないかと思う。


 あそこのAIには地下施設を運営してた組織について聞いたことがある。その時は確か、分からないってはぐらかされたはずだ。

 でも現状は、あれぐらいしか情報が得られそうなところがない。

 せめて、外国人の方の武器がどういったものなのか、それだけでも分かれば良いんだけど……。


 そして一度は知らないって誤魔化してきたAIから情報を引き出せるか分からないこと以外に、もう一つ問題がる。


「地下施設にあいつらが居たら……どうしよう?」


 それは廃病院の地下施設に行った場合に、彼らと遭遇する可能性があるということだ。

 僕らの推測通り、彼らがあの地下施設を運営してた組織の人間なら、廃棄されたとはいえ中村総合病院《あの施設》の存在も知ってるはずだし、何ならあの施設をこの街にいる間の拠点としててもおかしくない。 

 AIに会いに行って、バッタリ出くわすなんてことがあり得るってことだ。


「あいつらが居たら、それはそれで情報集めのチャンスじゃないかな」


 心配する僕に対して、優太は強気だった。普段の甘えたな雰囲気から外れていて少し驚く。

 いや、でも最初はこんな感じだったっけ? ……まあ、今は関係ないか。


 優太の発した言葉について、改めて考えてみる。

 確かに、直接対面した方が情報は得られるはずだ。明るい所であの外国人の兵器を見れたら、正体も分かるかもしれない。

 ただ、その場合は情報を集めつつ、彼らに捕まらないようにしないといけなくなる。


 それはなかなかに難易度が高いんじゃないかなぁ。


「うん、でもお姉ちゃんと僕の二人なら大丈夫じゃない? お姉ちゃんだけなら、影移動で一緒に逃げれるし」


 あ、そうか。優太にはそれがあったね。

 んー、じゃあ大丈夫かな。でも、いくら優太の魔法で逃げれるとしても、優太が気絶させられたらアウトなんだよなぁ。


 いや、でも彼らと遭遇するかもしれないって恐れて動かなかったら、結局何も得られない。

 今の僕らには情報がなさすぎる。情報を集めるためにも、ここで迷ってる場合じゃないか。


「無理はしないからね。影移動は戦闘になってしまった時の最終手段ってことで」

「もちろんだよ」


 基本的にはAIから情報を取ることを考える。

 もし二人組に遭遇した場合には、情報を集めながら逃げる。

 そうやって色々と取り決めをして、僕らは準備を始めた。



 ということで、廃病院の前までやってきた。


 廃れてしまった廃墟を見上げる。何度も来て、見慣れてるはずなのにどこか不気味に見えた。

 何だか別の建物のように感じるのは、あの二人組がいるかもという意識があるからかもしれない。


「お姉ちゃん、いつでもいけるよ」

「ん、おっけー」


 優太が準備できたと声をかけてきた。

 万が一地下施設内で彼らに遭遇したとしても、僕らが深夜の工場で会った二人だとバレないように認識阻害の魔法を使ってくれてるはずだ。


「今の僕らって、周りからどう見えてるの?」

「高校生ぐらいの男女に見えてるはずだよ」


 優太の言葉に頷く。

 それなら、近所の子供が肝試しで侵入したのだと誤魔化せるかもしれない。

 最悪は影移動で逃げるにしても、戦わずに済ませられるなら、その方が良いもんね。


 覚悟を決めた僕らは、廃病院へと侵入した。

 慎重に進んで院長室へ。そこから地下施設へと降りていく。

 懐中電灯で照らしながら、通路を進む。

 幸い、彼らに遭遇することもなく、AIがいる最奥の部屋へと辿り着いた。


 モニターの前まで移動すると、画面が点灯した。

 AIが話しかけてくる合図だ。


『――ご用件は何ですか?』

「……え?」


 続けて機械音で発せられたAIの言葉に動きを止めた。


『ご用件を伺います』

「……どういうこと?」

『何がでしょうか:?』


 思わず呟いた言葉を聞きとがめたのか、AIが更に尋ねてくる。

 いや、何がも何も、気になってるのは君の喋り方だよ。

 何で、いつものように関西弁じゃないの?


 優太を見ると、首を横に振った。

 そりゃ、優太も分かんないよね。

 いやまあ、僕らは情報さえ手に入れられれば、AIの喋り方なんてどうでも良いんだけどね。

 気になるけど、ひとまずは情報集めを優先しよう。


「……えっと、用件を言えばいいの?」


 いつものAIと違うせいで、口をついて出た言葉は思わず他人行儀になった。


『はい。私は当施設のナビゲーションAIです。用件に合わせた対応をさせていただきます』

「じゃあ、質問したら答えてくれるの?」

『はい。回答に制限はありますが、ご質問への対応は可能です。気軽にご相談ください』


 再び優太と顔を見合わせた。

 僕達の言葉への対応の仕方が、前に会話をしてたAIと違い過ぎる。

 前のAIなら『お嬢ちゃんが自分に用があるなんて珍しいなぁ』ぐらいは言いそうなのに。

 これ……本当に僕が前に、会話したAIと同じやつなのかな?


「えーと、じゃあ……ちなみに君の役割は?」

『当施設を運用するにあたっての、アシスタントがメインの役割となってます』


 役割は……たぶん同じだね。じゃあ、やっぱり一緒のやつのなのかな。


「運用って言うけど、この施設の役割は?」

『ロボットの製作。またそれを運用してデータを収集することです。また他拠点へのサンプル提供も行っております』


 凄いすんなりと情報を出してくれる。

 関西弁で喋ってた時は、何だかんだはぐらかされてた情報だと思うんだけど。


 何でこんな喋り方になったのかは分からないけど、今なら聞けるかな?


「他拠点ってことは、ここ以外にも拠点があるんだね?」

『当施設以外にも幾つかの拠点が存在します』

「その情報はある?」

『あなたには権限がありません。お答えすることは出来ません』


 ダメか。


「施設で働いてた人の情報ってある?」

『あなたには権限がありません。お答えすることは出来ません』


 この施設で作られてたロボットの情報、前は見れたよね。職員に関することは制限がかかるのかな?

 その後も幾つか質問をしたけど、肝心なところで権限がないと言われてしまった。


 関西弁の時と違って事務的な対応をしてくる分、情報を引き出すのがより困難に感じる。交渉の余地も無さそうだ。

 結局、追加で得られた情報はほとんど無かった。

 ちゃんと他にも拠点があることが分かって、あの二人組はそこから来たのかもっていう推測について信憑性が増しただけだった。


 まあ、仕方ない。正直、ダメ元だったし。

 確認すべきことに漏れが無いかを優太と確認し、これ以上情報を得るのは無理だと判断した僕らは部屋を出た。

 そうして、元来た通路を戻ろうとした時だった。


 ――突如、通路の照明が点灯した。


「――っ!!」


 眩しさに目を細める。

 狭まった視界の先に、一人の男が立っているのが見えた。


 ……あぁ、やっぱり居るか。

 AIからの吸出しは無駄に終わったけど、推測自体は確定になったね。


「ここで何をしている?」


 光に慣れてきて、目をはっきりと開く。

 通路の先、そこにはロングコートの外国人が行く手を塞いでいた。

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