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元英雄は今、門番として  作者: 糸音


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15/15

門番は今日も門に立つ

 

 擬態悪魔の事件は、周辺諸国へと知れ渡った。

 魔物に襲われたことで、往来する人間が減るかと思いきや、訪ねる者は逆に増えた。


「なんで仕事増えてんだよ……ふつう減るだろ。魔物の被害なんかあったら……」


 仕事の合間にそう愚痴を漏らした衛兵に、別の衛兵が「仕方ないだろ」と苦笑する。


「被害を最小限に討伐したことで、都市の安全性が知れ渡る結果になったんだよ。商いをするなら『ハルトヴァルグ』! ……なんて謳い文句も出回ってるらしぜ」

「それ流したの隊長だろ」

「まあな」


 往来する人間が増えれば税収が増える。財源の確保も立派な仕事だ。

 そういう立ち回りを器用にこなすあたり、衛兵隊の隊長はヴィヴィアナが一番向いているのかもしれない。


「でも、来る奴が増える分には小遣い稼ぎの機会も増えるってわけよ」

「そうだな! 文句を言う暇があるなら、今日もいっちょ1稼ぎ——」

「おい。お前ら」

「「ひゃあああああああああああああ‼」」


 一番悪だくみを聞かれてはならない人物に背後から声をかけられ、甲高い叫び声が響いた。


「休憩だ。さっさといけ」

「「あ……あざす」」


 話の内容は聞かれてはいたらしいが、実行前までのお咎めはなし。

 逃げるように休憩へ向かった兵士たちを一瞥してから、フリードは門番を交代した。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さっきの男の所有物、盗品の可能性がある」

「了解。周辺の村に連絡を取ってみるわ」


 人が増えればフリードの目にかかるものも増える。今日も上がったフリード報告を聞き入れたヴィヴィアナが早速捜査に動き出した。


「先輩、ひとつ聞いていいですか」

「なんだ」


 その様子を見ていたエルノスが話題を切り出した。切り出し方から察するに、それほど真面目な話ではなさそうだ。


「後で捕まえるとはいえ、先輩たまに怪しい人でも門は通しますよね。この場でとらえたほうが早いのでは?」


 エルノスの問いに、珍しく難しそうにフリードが唸った。

 後からヴィヴィアナがとらえるから問題はないのだが、この場でとらえてしまえば幾分か手間は省けるはずだ。

 それをしないのは何か訳があるのか。

 フリードのことだから何か卑しい目的があるわけではないのだろうが、純粋に気にはなっていたことだった。


「門を通せば税が取れる」

「……へ?」

「優秀な人材を雇うには金が必要だ。そのために取れるところからは取らせてもらわねばな。……なぜ笑う?」

「いや。そういう現金な部分がちゃんとあったんだなって」


 つまり、財源がないと嘆くヴィヴィアナの悩みに、彼なりにこたえようとしているということだ。

 なんだかんだでお人よしではあるが、もっと別な形での表し方があるだろう。


 その不器用さが面白くて、思わず笑いが漏れてしまった。

 なぜ笑われたのか本人はピンと来ていないが、悪意は感じられないので、特に気にした様子はなさそうだ。


 街の外と中を繋ぐ門に、爽やかな風が吹き抜けた。

 空は青く、空気は澄んでいて穏やかな時が流れている。


 だが、まだ世界は誰のものでもない。

 確固たる平和はまだ存在しない。


 だから、彼は今日も門に立つ。

 平和な時代、その一歩目となる、この街の平和を築き上げるために。


 荷馬車を引いてやってきた行商団に、鉄仮面の衛兵が問いかけた。


「——用件は?」


最後まで読んでいただきありがとうございます!

ほどほどの長さの中編を書きたいと思って書きましたが、いかがでしたか?


もし面白かったら評価やブクマ、感想などを頂けると嬉しいです。創作のモチベに繋がります!

好評であれば、続きの物語も書いていきたいです。(*^-^)


機会があれば続編か、別の作品でお会いしましょう!

それでは(--)//~

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