門番は今日も門に立つ
擬態悪魔の事件は、周辺諸国へと知れ渡った。
魔物に襲われたことで、往来する人間が減るかと思いきや、訪ねる者は逆に増えた。
「なんで仕事増えてんだよ……ふつう減るだろ。魔物の被害なんかあったら……」
仕事の合間にそう愚痴を漏らした衛兵に、別の衛兵が「仕方ないだろ」と苦笑する。
「被害を最小限に討伐したことで、都市の安全性が知れ渡る結果になったんだよ。商いをするなら『ハルトヴァルグ』! ……なんて謳い文句も出回ってるらしぜ」
「それ流したの隊長だろ」
「まあな」
往来する人間が増えれば税収が増える。財源の確保も立派な仕事だ。
そういう立ち回りを器用にこなすあたり、衛兵隊の隊長はヴィヴィアナが一番向いているのかもしれない。
「でも、来る奴が増える分には小遣い稼ぎの機会も増えるってわけよ」
「そうだな! 文句を言う暇があるなら、今日もいっちょ1稼ぎ——」
「おい。お前ら」
「「ひゃあああああああああああああ‼」」
一番悪だくみを聞かれてはならない人物に背後から声をかけられ、甲高い叫び声が響いた。
「休憩だ。さっさといけ」
「「あ……あざす」」
話の内容は聞かれてはいたらしいが、実行前までのお咎めはなし。
逃げるように休憩へ向かった兵士たちを一瞥してから、フリードは門番を交代した。
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「さっきの男の所有物、盗品の可能性がある」
「了解。周辺の村に連絡を取ってみるわ」
人が増えればフリードの目にかかるものも増える。今日も上がったフリード報告を聞き入れたヴィヴィアナが早速捜査に動き出した。
「先輩、ひとつ聞いていいですか」
「なんだ」
その様子を見ていたエルノスが話題を切り出した。切り出し方から察するに、それほど真面目な話ではなさそうだ。
「後で捕まえるとはいえ、先輩たまに怪しい人でも門は通しますよね。この場でとらえたほうが早いのでは?」
エルノスの問いに、珍しく難しそうにフリードが唸った。
後からヴィヴィアナがとらえるから問題はないのだが、この場でとらえてしまえば幾分か手間は省けるはずだ。
それをしないのは何か訳があるのか。
フリードのことだから何か卑しい目的があるわけではないのだろうが、純粋に気にはなっていたことだった。
「門を通せば税が取れる」
「……へ?」
「優秀な人材を雇うには金が必要だ。そのために取れるところからは取らせてもらわねばな。……なぜ笑う?」
「いや。そういう現金な部分がちゃんとあったんだなって」
つまり、財源がないと嘆くヴィヴィアナの悩みに、彼なりにこたえようとしているということだ。
なんだかんだでお人よしではあるが、もっと別な形での表し方があるだろう。
その不器用さが面白くて、思わず笑いが漏れてしまった。
なぜ笑われたのか本人はピンと来ていないが、悪意は感じられないので、特に気にした様子はなさそうだ。
街の外と中を繋ぐ門に、爽やかな風が吹き抜けた。
空は青く、空気は澄んでいて穏やかな時が流れている。
だが、まだ世界は誰のものでもない。
確固たる平和はまだ存在しない。
だから、彼は今日も門に立つ。
平和な時代、その一歩目となる、この街の平和を築き上げるために。
荷馬車を引いてやってきた行商団に、鉄仮面の衛兵が問いかけた。
「——用件は?」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ほどほどの長さの中編を書きたいと思って書きましたが、いかがでしたか?
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好評であれば、続きの物語も書いていきたいです。(*^-^)
機会があれば続編か、別の作品でお会いしましょう!
それでは(--)//~




