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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
シーズンクエスト【不思議の国に行く!】編
257/257

第256話 ゴブリンガールはポーカーする!

挿絵(By みてみん)



 チェシャ猫の不気味な笑い声に取り囲まれ、アタイたちは窮地に陥っていた。

 ザコモン3人衆のアタイらに為す術が無いのは当然として、頼みの綱のアリスネットも予想外の役立たずぶり。

 先ほどからトランプの山札から1枚引いては、手札の5枚のうち1枚を選んで捨てる、そんな動作を延々と繰り返しているだけだ。


 あんたは意地悪なハートの女王を血濡れにしてやったんじゃなかったのかい!

 肩透かしもいいとこだよこの泣きベソカード捲り女!


 しかし、そこで唐突にアリスネットの手が止まった。


「やっと手札が揃ったみたい。これに賭けるわ。コール!」


 彼女の宣言のあと、手中にある5枚のカードが光り輝いてひとりでに宙に浮き上がった。

 これは一体何事だい!?



~ジャックポット(アビリティレベル50)~

 賭術(かけじゅつ)魔勇士(まゆうし)の習得する全体攻撃魔法。

 術者が任意で規定した事象が生じたとき、その発生確率の低さに準じた高威力の攻撃魔法を発動する。

 事象が整うまでに取る行動の逐一にMPを消費するハイリスク・リターンの大技。



「クローバーは幸運を表す絵札よ」


 目を凝らしてみれば、彼女の周囲に漂う5枚のトランプはすべてがクローバーのマーク。

 ポーカーで言うところのフラッシュという役にあたり、ゲーム中にこの手札を揃えられる確率は5%未満と言われる。


 それら5枚のトランプはまばゆく発光し、鋭利な殺傷武器となって高速で空を飛んだ。

 チェシャ猫は無数に体を切り付けられて悲痛な叫び声を上げる。

 そして最後は煙に変わり、そのままドロンと消えて無くなってしまった。


 ちょっと待ちな!

 ギャンブルを能力にした勇者だなんて、そんなのあり!?


「ちなみにハートのお城で起こった惨劇では、ストレートフラッシュという役が出ちゃったの。発生確率はたったの0.03%」


 アタイたちは青ざめた。

 そんな低確率の大技が炸裂したんなら、視界のすべてが赤く染まったのも無理はないだろう……。



~それからしばらくあと~


 無事にチェシャ猫を退けたアタイたちは、引き続き暗い森の探索を続けていた。


「私のジョブは賭術魔勇士。特定の条件が揃ったときに強力な攻撃が発動するトリッキーな魔法なの」


 その条件が稀有(けう)であればあるだけ威力も跳ね上がるという仕様だそうな。

 ただし通常の溜め技とは異なり、条件を満たすために取る一手ごとにゴリゴリMPを消費するというシビアな制約が伴う。

 例えばさっきの戦いでは、山札からカードを引くたびに相当量のエネルギーを消費していたらしい。

 しかもギャンブルなので技が不発で終わる可能性も十分にあるという、いわゆる諸刃の剣である。


「なんでそんなメンドクサイ能力を選んでんだよ」

「まあ。とってもロマンがあってワクワクして、このメルヘンな世界にぴったりでしょう?」


 ギャンブルとメルヘンが紙一重?

 どんな感性してんだい!


「私は元の世界ではいじめられっ子だったの。人はすぐにウソを付くわ。でも数字はいつだって公平に接してくれる」


 アリスネットは愛おしそうに手元のトランプカードを撫でる。


「組み合わせは無限に思えて有限で、順列は乱雑であり整然でもある。カードの並びを眺めていると不思議と落ち着くの。一方で、人の感情とか友情って答えが用意されてるものじゃないでしょう?」


 そうして数字かぞえやクローバー探しに没頭し、傷付くことのない夢の世界の妄想に耽った。

 そんなアリスネットの特異な境遇を考えれば、たしかに理解できないこともない気がする。

 これも得るべくして得た能力なのだろう。


 そこでふと気付いたが、もしこいつがガチャを引くのを見たら思わず卒倒しちまうんじゃないだろうね。

 なんたって確率論などフルシカトするかのごとく狙ってゴミクズしか排出しないからねこの腐れスマホは。


 という前置きを挟んだところで、みんなもお待ちかね、今回のガチャタイムと洒落込むかい!

 これやっとかないとタイトル詐欺になっちまうからねえ!


 アタイは胸元からスマホを取り出すと画面を勢いよくタップした。

 課金フルパワーで最凶モンスターにメイクアーップ!

 虹色に輝くスマホ。

 その荒々しい光が収まると、アタイの手に握られていたアイテムは――――!?



~目覚まし時計(使用推奨レベル5)~

 本体とベルが一体となった置き時計。

 指定時刻になるとゼンマイがベルを叩いて時間を知らせてくれる。



「いらないね」

「たしかに野ウサギと懐中時計を探しちゃいるけど、欲しいのはこの時計じゃねえしな」

「微妙に被った気もするけどやっぱりいらないンだわ」


 アタイたちはうなずき合ってこのアイテムがガラクタであることを再確認する。

 その様子を見てアリスネットが同情の声を掛けてきた。


「元気を出して。ハズレが続いても、いつかはステキなアイテムに巡り合えるはずよ」


 はーあ(クソでか溜息)。

 この夢見がちな青二才にこれまでアタイらがクソガチャに受けた仕打ちを語り聞かせてやりたいところだよ。

 んなことしてたら日が暮れちまうだろうけどね。


 そんなやり取りをしつつ、アタイたちはウサギの足跡を追って森の深部にまで踏み込んでいた。

 辺りはだんだん薄暗くなり、じっとりと陰鬱な霧が漂い始めた。

 なんだか嫌な出来事が起こりそうな気配……!?


 悪い予感は的中した。

 藪の中からこの世のものとは思えないおぞましい魔獣の鳴き声が轟いたのだ。

 そうして地面を揺らしながらアタイたちの前に現れたのは、なんと異形のドラゴンだった!


「まあ大変! あれは恐ろしい伝説上の怪物、ジャバウォックよ!」




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 異形のドラゴン、ジャバウォック!?

 はて、そんなバケモノ童話の本編に出てきてたっけ?

 ……調べてみたらアリスのお話の続編に名前がちらっと登場するだけの設定上のモンスターらしいよ。

 んなマイナーなもんをラスボス扱いで持ってくんじゃないよ!


【第257話 ゴブリンガールはルーレットを回す!】

 ぜってぇ見てくれよな!




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