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俺が部活を辞めた日  作者: 明戸
最終章 On The Rooftop
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44.叶わない恋

「修、次どこ行く?」


 文化祭が始まった。天候にも恵まれて外は快晴。客足も多くなりそうで何よりだ。ぱっと見た限りでも既に一般の人がたくさん来ている。


 この高校は例年通り2日開催。最近だと1日しか開催しない高校も増えているらしいからそこは運営に感謝。


 その上このあたりだと文化祭の開催時期が遅い方だから他の高校と被らないってのはいいところだ。


「俺は回れればどこでもいいかな。開登は行きたいところないのか?」


 俺の横で歩いているのは例によって開登。思えば高2になってから1番接しているのはダントツでこいつだ。境遇が似ているからだろうか。


 でも似ているだけで完全に同じというわけではない。俺と開登は根本的なところが違うのだ。


「あ、じゃあ、あそこのお化け屋敷行こうぜ。」


 開登が妥協交じりに指差したのは他のクラスのお化け屋敷。今年はうちのクラスとこのクラスしかお化け屋

敷を開催していないので必然的に入口には長蛇の列が出来ている。


「いいけど、俺らのクラスもやるんだから別に急ぐ必要なくね?」

「敵情視察ってとこよ。」


 のんきにそんなことを言いながら開登は長蛇の列の最後尾に並ぶ。まあ開登がその気なら俺は強く反対はしないが。


「あ、今からですと30分くらい待っちゃうかもなんですけどいいですか?」


 俺らが並ぶと整列係の女子がご丁寧に待ち時間を教えてくれる。文化祭の待ち時間で30分って相当だとは思うが、1度なんでもいいと言った見故、ここは開登に委ねる。


「大丈夫っすよ。」

「ありがとうございます!もうしばらくお待ちくださいね。」


 その女子は一礼して去っていく。俺らはそれを見た後、外装の壁によっかかる。


「つーか、開登ってこんなところで遊んでていいんか?」


 俺は話を繋ぐ。


「と、言いますと?」

「いやだって実行委員長なんだろ?色々仕事があるんじゃないのか?」


 この学校は2年生が毎年実行委員長をやることになっている。3年生には受験勉強に集中してもらいたいとのこと。


 ここら辺は進学校って感じだが、問題は来年の今。きっとストイックな毎日が待っているのだろう。恐ろしい。


「委員長って言ってもオープニングとエンディングの挨拶ぐらいかな。当日中にやるのは。忙しいのは終わってからだね。」

「あ、そんなものなんか。ていうか今更だけど何でお前委員長なんだ?」

「あれお前知らなかったんだっけ。普通に立候補しただけだって。」

「その立候補した理由が気になるんだが……。」


 俺がそう言うと、開登は空を見るように言った。


「何というかさ、高2って一番遊べる時期じゃん?てことはさ、一番青春できる時期ってことじゃん?」

「青春……。」

「そ、実行委員って青春って感じすんじゃん。単純な話だけどさ。」


 青春か……。思えばこの夏から色々な葛藤があった。それも全部青春なのかもしれない。


「なんか開登らしいよな。」

「そう言ってもらえると実際少し嬉しいものがある。青春時代は今しかないんだしな!」


 青春の時代は今しかない……。でも、開登はまだ青春しているとは言えない。俺はそう思う。


 なぜならーーー。


「青春とか言うけどさ、開登は好きな人、いるのか?」

「……どうしたんだよ急に?」


 あまり動揺を見せない開登が今回は少し動揺しているようだった。


「青春ってやっぱ恋愛じゃん。思えば開登は俺の好きな人が誰とかよく聞いてくるけど、俺からお前にそういう類の質問したことなかったよなって。」


 開登はよく攻めてくる方だから俺は質問されるたびに困って、そして毎回曖昧な回答で逃げていた。最近だと体育館の会議の時とかがそうだ。


「いるよ。」


 開登は何も隠さなかった。その気持ちをこの3文字に込めたのだろう。


 あまりに突然の事に、俺は驚きを隠せなかった。


「……今なんて?」


 開登は俺とは違かった。そもそも開登にこの質問をしたのが半分ノリのようなものだったし、そこで真面目な回答が返ってくること自体が驚愕だった。


「だから、いるって。」

「え、まじ?」

「まじ。名前は言えねえけどな。」

「まあこんな公の場じゃさすがに……。」


 開登は俺の言葉を遮って言った。


「いや、そういうことじゃなくて。」

「……?」

「叶わない恋だから、言ってもしょうがないんだ。」


 叶わない恋……?それは一体?


 言葉があまりに抽象的すぎて本質が分からなかった。けども俺は何も聞き返さなかった。


 それは開登が聞き返してほしくないような顔をしていたから。これだけ長く付き合っていればよく分かる。


「お待たせしました!中へどうぞ!」


 気が付けば客の回転は想像以上に早く、既に前に並んでいた行列はなくなっていた。


「ま、気を取り直して楽しもうぜ!俺が言うのもしっくりこないけどさ。」


 開登は強引にこの話を締めくくった。強引に締めくくったのはやっぱり俺にこの話をしたくないからだろうか。


 それとも俺が本質に気づいてしまうのが怖かったのか。


「……おう。」




「朱音ちゃん次どこ行く?」


 私はいつものように朱音ちゃんと一緒にいました。部活で一緒ってのは大きいし、何より一緒にいると会話がとても弾むし、とても落ち着く。


 夏、までは。


「んーとね。私チュロス食べたいかなー。」


 朱音ちゃんはいつもと変わらないようで、変わっている。上手く言葉には表せないけど、あの夏から何かが変わった。


 2人きりでいる時は普通だけども、神谷君が少しでも会話に入ってくると見えない亀裂が生まれたような気がする。


「あ、私も食べたい!」


 私がそう言った瞬間、後ろからポンと手を叩かれました。それは朱音ちゃんも同じだったようで、反射で振り向きます。


「わっ!?」


 私達はシンクロするように驚きました。そこには私達よりずっと高い背の熊がいたのです。性格に言うと熊の着ぐるみを着ていました。多分生徒でしょう。


「驚かせてごめんクマ。」

「……語尾がクマって一体。」

「ま、まあそこは気にするなクマ。」


 意地でもクマ語尾を突き通すつもりなんですか……。正直くだらないけど、とても面白い。


 けど、このしょうもなさ、どこかで体感したことあるような。


「君達、チュロスが食べたいって言ってたよね?はい、これ。」


 熊はそう言うと、どこからか券を取り出しました。


「……ナニコレ。」

「よくぞ聞いてくれたクマ。これはそこの角のチュロス屋で男子と一緒に買うと半額になるいわば特別券だクマ。」

「ステマ?」

「いやステマじゃないクマ!ていうかばればれクマ!!」


 とりあえずくれるものはもらいます。断る理由がないですから。


 でも、朱音ちゃんとクマのこの仲の良さ、やっぱりどこかで……。


「とりあえずありがとうクマさん。」

「ありがとう、もらっておくわ。」


 券には熊が言った通り、男子と一緒に買うと半額と書いてあります。それも人数制限なし。つまり男女2人ずつのペアでもオーケーということです。


「どういたしましてクマ!では文化祭、楽しむクマ!」


 熊はそう言うとまたどこかへ歩いて行ってしまいます。結局何だったのでしょう。


 そして、この券、どう使おうべきでしょうか。


 出来ることなら、神谷君と……。

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