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【四章完結】居場所をくれたひと  作者: 紅緒
第4章『目覚めの時』

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72話・戻ってきた団欒


「ほら、まずはこれを見てごらん」

「? 鏡?」


 サフィールから手渡されたのは、細かな意匠が施された美しい手鏡だった。

 アルヴィーはそれを恐る恐る両手で受け取ると、言われるままその鏡を覗き込んでみる。


「え……!?」


 鏡に映るのは見慣れた自分の姿……、のはずだった。

 いや、確かに自分であるのは間違い無いのだが、明らかに今までの自分と異なっている箇所があった。


「目と前髪が……赤い?」


 そう。

 栗色のはずだった髪は、前髪のひと房だけが赤く染まり、左の瞳だけが同じく赤く色を変えていた。

 その深い紅色は、サフィールから贈られた魔石とよく似ている。


「え、なんで、えっ?」

「ふふ、驚いたか? 実のところ、私も驚いたよ」


 当然、意味が分からず慌てふためくアルヴィーに、サフィールは悪戯が成功した子供のように肩を竦めて笑った。


「オレ達も、アルをここに寝かせた時に気付いたんだ」


 くすくす笑うサフィールに代わり、テオドールがアルヴィーの疑問に答えてくれる。


「特殊な髪や瞳の色が、魔法を使えるかどうかの見分け方になるって言ったろ?」

「う、うん……。じゃあ、本当に僕が魔法でテオドールくんの傷を?」

「そうだって言ってるだろ! キラキラ〜って、すごい綺麗な光が出て、オレの手もピカーッて光って一瞬で治したんだ!」


 テオドールが熱っぽく身振り手振りを交えてアルヴィーに説明する。アルヴィーはそれでもまだ信じられない心持ちだった。


「でも、僕今まで魔法なんて使ったこと……」


 その疑問に対し、答えをくれたのはサフィールだった。


「後天的に……、つまりはある日突然、魔法が使えるようになる者もいる。かなり少ない人数だけど、恐らくアルも“そう”なんだろう」


 そう言って、サフィールは赤く染まったアルヴィーの前髪をサラリと撫でる。


「魔法が覚醒したことにより、一部ではあるが髪と瞳の色に変化が起きたと考えるのが妥当かな。それにしても……」

「?」


 きょとん、とするアルヴィーにサフィールは思わず苦笑を浮かべた。


 自分を守る為では無く、他者を守る為に魔法が覚醒するとは……。

 まるでアルヴィーの性格そのままを表しているようだとサフィールは思う。


 今まで、自分が傷付いた場面は数え切れないほどあっただろうに。

 アルヴィーのこれまでの境遇を思い返し、サフィールは「アルは本当に優しい子だな」と髪を梳いてやる。

 その優しい感触に嬉しそうに首を竦めていたアルヴィーだったが、ふと、テオドールが自分のことを『アル』と呼んでいることに気付いた。


「そういえば、テオドールくん、僕のことアルって……」

「あ……」


 すると、テオドールはほんのり顔を赤くして気まずそうに頭を搔いた。


「とっさに呼んで、そこから何となくそのままになって……、悪い、嫌ならやめる」

「えっ、嫌じゃないよ!」


 そっぽを向くテオドールに、アルヴィーは即座に否定し身を乗り出した。


「あの……、僕も、テオくんって呼んでいい?」


 おずおずとシーツを握りながら言うアルヴィーに、テオドールはパッ、と顔を上げて「もちろん!」と大きな声で応えた。

 そうして二人がはにかむ様子を見て、サフィールも瞳を細め笑みを濃くする。


 しかし、ずっとここでこうしているわけにもいかないので、サフィールが「さあ、」と言い、ぱん、と両の手を叩き合わせた。


「アルの魔法については、明日魔道士協会に行って詳しく見てみるとして、まずは夕食にしないか?」


 そうサフィールが提案すると、途端に、ぐうーー、とアルヴィーとテオドールの腹が同時に鳴った。

 それが可笑しくて三人でひとしきり笑い、それからゆっくりとダイニングへ向かう。


 その日の夕食はサーモンのムニエルだった。レモンバターソースがたっぷり掛かっていて、輪切りのレモンも添えてあり見栄えからしてとても美味しそうだ。


 綺麗な焼き色が付いたサーモンは、口に入れるとジュワッとバターの香りとレモンの爽やかさが溢れ出す。

 付け合わせのジャーマンポテトは、アルヴィーやテオドールが食べやすいよう胡椒控えめで、その代わりたっぷりベーコンが入っている。


 副菜にはグリーンサラダとオニオンスープ。温かいスープは今日の疲れを優しく癒してくれるようで、アルヴィーとテオドールはしばらく無言でガツガツと食べていた。


 そしてある程度お腹が落ち着いたところで、二人は今日経験したことを、まるで大冒険にでも行っていたように興奮気味にサフィールに話して聞かせた。


 サフィールはそんな二人の話をうんうんと頷いて聞きながら、子供達が無事だったことに内心再度ほっと息を吐く。

 意外と大胆な二人の行動力に、もっとお守りを強化した方が良いかな? なんて過保護なことを考えながら。


(本当に無事で良かった)


 アルヴィーの魔法の覚醒という懸念事項はある。けれど、今はただ子供達の無事を喜び、二人の話に耳を傾けていたかった。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


これにて四章完結です。

物語が動く章になっていれば嬉しいです。

ここを機にタイトルを【居場所をくれたひと】に変更します。

そしてストックを増やす為、しばし休載致します。

書き溜めてきたらまた少しづつ投稿いたしますので、お待ち頂けると幸いです。


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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