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【四章完結】居場所をくれたひと  作者: 紅緒
第4章『目覚めの時』

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70話・心配と脱力


「…………さて、」


 彼らの背中が小さくなっていくのを見送ってから、サフィールがアルヴィーとテオドールに向き直る。


 肩の広さに開いた足。組まれた腕。見下ろす視線。

 その全てが、『私は今怒ってるぞ』と示していた。


「お守りが作動したのを感じで来てみれば……。どうしてこんな家から遠い場所にいるんだ」


 聞けば、サフィールが魔道士協会でアリシアと話していたところ、アルヴィーとテオドールに渡した魔石の力を感知し、文字通り慌てて飛んできたのだと言う。

 二人が無事だったことに胸を撫で下ろしつつも、きちんと叱ることも忘れない。


「ここら辺は、治安も良くないんだぞ。テオは知っているだろう?」

「す、すみません、サフィール様……」


 サフィールに叱られ悲しそうに項垂れるテオドールに、アルヴィーは堪らず一歩前に出た。


「ちがうんです、サフィールさま! テオドールくんは、僕を守ろうとして、ここまで来てくれたんです!」

「守る? どういうことだ?」

「…………」


 アルヴィーの必死な様子にそれが嘘では無いと感じ取り、サフィールが子供達の声に耳を傾ける。

 しかし、テオドールは何やら言いづらそうに下を向いているので要領を得ない。


「アル、何があったんだ?」


 サフィールがアルヴィーに問いかける。

 アルヴィーは意を決した様子で、静かに口を開いた。


「……僕が、このお花を摘もうとしていたのを、テオドールくんが止めてくれたんです」

「花?」


 アルヴィーが指差す地面を、サフィールも見る。

 そこには、踏まれて原型を留めなくなった青いリリーの花があった。


「これは……! 二人とも、触ってないか!? ケガは……!」


 即座にサフィールが子供達を抱き寄せ、その身体をまじまじと見る。そして、どこにもケガが無いことを認め、ほう、と息を吐いた。


「良かった……。ケガはしていないな」


 サフィールは身を屈め、二人の頭を抱き締める。

 彼女が自分達の為にここまで駆け付け、心から心配してくれているのが分かって、アルヴィーもテオドールも嬉しさで瞳を潤ませた。


 そして、テオドールはサフィールにどうしても伝えなければいけないことを口にする。


「サフィール様、実はオレ、花に触ったんです」

「! なに? だがどこにも傷は……」


 青いリリーは強い毒性を持ち、触れた箇所に湿疹が出来、酷い炎症を起こす。放置すればその箇所が壊死してしまうような毒の花だ。

 それを知っているサフィールが、怪訝そうにテオドールを見下ろす。やはり、どこにも炎症があるようには見えない。


「アルが、治してくれたんです」

「アルが?」


 聞き返すサフィールに、テオドールは大きく頷いて見せた。


「アルから金色の光が出て、それがオレの手を覆って……。そしたら、あっという間に治ったんです!」

「……確かに、一瞬魔力を感知したが、それがアルだったのか……?」


 唇に指を当て思案するサフィールに、アルヴィーは「で、でも」と気まずそうに口を挟んだ。


「僕、何も覚えてなくて……。あの時、なんだかぼんやりして……そ、れで……」

「アル?」

「それで……ぼ、く…………」

「アル!!」


 言いながら、アルヴィーの身体がぐらりと傾ぐ。

 咄嗟にサフィールが抱き留め、その小さな体が地面に倒れ込むことは防がれた。

 テオドールが慌ててその顔を覗き込む。


「アル! おい、アル!」

「大丈夫……、眠っているだけのようだ」

「…………!」


 サフィールに言われ、テオドールがほっ、と息を吐き出す。

 アルヴィーは、サフィールの腕の中ですうすうと規則正しい寝息を立てていた。


「とりあえず、家に帰ろうか。詳しい話はそこで聞かせておくれ」

「分かりました」


 サフィールは、「よいしょ」と掛け声をかけてアルヴィーを背負うと、我が家へとしっかりとした足取りで歩き出したのだった。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


もうすぐ四章完結です。

四章が終わったら、少しストック書き溜める為にお休みして、あとタイトルを変更したいと思っています。

いきなりタイトルが変わったらビックリされてしまうかもしれませんが、どうか変わらず楽しんで頂けると幸いです。


☆やブックマークで応援頂けると、とても嬉しく励みになります。よろしくお願いいたします!

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