引きこもりへのステップ
普通に恋愛小説というものにはまり、無理をすることなく私は引きこもり始めました。無理をすることなくっておかしいか。手始めにカエティから借りたものの続編を借りました。自分の部屋に運び入れます。鍵を閉めます。とにかく読みます。気づいたらお腹が空いているので部屋を出ます。父が泣いています。兄が呆れています。
「シルヴィーーー!!!どうしたんだ!!!お昼ご飯を!すっぽかして!もう夜ご飯だぞ!!!」
「えっもう夜?」
「どうしたんだ!!!姿が見えなくて怒ったことにすねているのか?はっ!!!珍しく図書室で本を読んでいたから頭にカビでも生えてしまったのか?」
いや失礼すぎるよパッパ。
「父さん、流石に本に失礼だろ。シルヴィアのことだから変なものでも食べて腹を壊したんだよ」
おいお兄ちゃん。
「違うよ!!!シルヴィ本を読んでたんだよ!!!」
「シルヴィが…?本を!?」
いやお兄ちゃん露骨に口を開けるな。
「そうなの!!!シルヴィ本ずーっと読んでるから!でもお腹空いちゃった!!!」
「……………」
「パパ?」
つん、と兄が父をつつく。
「わぁ…固まってるよ」
「とにかく!続き気になるから先にご飯食べてるね」
「まっまちなさいシルヴィ!!!」
「いただきまーす」
「シルヴィ!!!」
こんなことを1週間ほど繰り返して、ますます私は小説にのめり込んでいった。食事もとらずに本を読み続けた。読書欲は小説だけに飽き足らず、異国の偉人をモチーフにした恋愛小説を読むために異国の文化を学んでみたり、それを読むために前の人生で極めた言語の研鑽を積んだりしているうちに本当に部屋を出なくなってしまった。
最初は食事さえもとらない私を心配した慌てて部屋から引っ張り出そうとしていた家族も、一回読書を中断させられた私が家出する!と叫び出した騒動以降、走り回って怪我されるよりはいいんじゃないかと母が言い出したことによって、食事は必ずとること夕食だけは家族全員でとることを条件に何も言わなくなった。
こうなると本当の引きこもりライフへの道が始まったとしかいいようがなかった。




