とりあえずやることといったら?
どうしてここにいるの…?目に映る彼の顔は初めて会ったときより大人びていて、1年という日々の長さを感じさせる。確か私より2つ上の筈だから今は11歳。…あの頃は淑女になるために必死で王宮でお茶会などが催されても婚約者のくせに滅多に参加しなかったから、11歳の彼の姿をみることはなかった。…それがここでみられるとは思ってもみなかったけれど。…引きこもりがここにいるってわかったらまずくないかしら…あっ!私は今、平民風の格好!!そして彼は他人の空似なんてこともあるんじゃ…
「おい、とりあえず退いてくれないか。」
彼の不機嫌そうな声は明らかに聞いたことのあるものでした。そして明らかに触っただけで仕立ての良い衣服は平民なんかじゃ絶対に着れないもの…本人だわ!お忍びかしら!なんで!?はっ、今の状況は明らかに体温を感じる…私が彼の上にのっかっていて押し倒しているような構図…!
「すっすいませんんん」
慌てて上から退き、ずぞぞぞぞぞっと後ずさる。後ずさりすぎて後ろの本棚にどんっと背中が当たる。
「おいっ頭!」
「へっ!?」
頭上をみると影がゆっくりと落ちてきて目を閉じる間もなかった。あっこれはたんこぶになる………と思っていたのだが、ぐんっと手が引っ張られて…後ろをばさっと本が落ちる音がする。どういうこと?私は座った彼にしがみつくように抱きとめられていた。彼はふーと安堵のため息らしきものをついた。
恐らく落ちてくる本から私を助けてくれたのだろうけど…こっこんな接近したことなんて一度もなかったのに!触れ合う体から相手の鼓動が伝わってくる。…っとっとぉ違う違う、胸を高鳴らせている場合じゃないの!!!面識はないけれど、私だってバレる前にここを去らなければ!
「おい!危ないだろ!それにここは図書館…「あっありがとうございます!あっあとぶつかってすいません!!!」
バリッと姿を剥がして距離を取る。
「…まあ無事でよかった。それはそうとお前…「あっ!もっもうそろそろ日が落ちてしまう~!お母様に怒られてしまう前に帰らなきゃな~!すいません!その本そこの棚に入れといてもらえますか!じゃっありがとうございました!!!」
視線をしっちゃかめっちゃかに動かしながらそう言い捨てて立ち上がる。…本を戻していたんだから帰ろうとしていたのは丸わかりだろうになぜかわざとらしく具体的に説明してしまう。
「おっおい、待てって「じゃ!お願いします~!!!」
国の王子とあろう者にこんな態度だったら絶対不敬罪。いや、私、平民、彼、王子ってシラナイ。だから平気でしょう!
なんか後ろで言ってる…?とっとりあえず逃げるのよ!!!あとを振り返らずに!
外へ出ると、すっかり空は暗くなり始めていて様相が変わっていた。門の向こうを目指して走ると、入るときに見た何台かの馬車が目に入る。あっあの馬車…私が助けた男が乗りこんだもの!そうだわ!あの人、キース殿下の護衛の方じゃない!!!じゃっじゃああの馬車に乗っていたのは彼だったってこと…!?っ思い出すのが遅すぎる自分!!!




