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さすがにこれを世に放つ勇気はないな・・

「さすがにこれを世に放つ勇気はないな・・」


 あの後すぐにナコの元に駆け寄るとナコは剣を握ったまま気絶していた。

 俺はナコの手から剣を離させてそのままナコを抱えてナコの部屋のベットまで運んだ。ベットに寝かせる時にナコは1度目を覚ましてどうなったのか聞いてきたので、ナコのおかげだと言って頭をなでてやるとそのまままた眠りについた。

 その後俺は庭に戻り剣を拾い上げ倉庫に戻っていた。


(初めて使ったナコであれだぞ・・)


 確かにこの威力で誰でも使える魔剣となれば相当な額になるだろう。しかしこんな大量殺戮兵器を他人に渡すのは俺には無理だ。


――自分の恩恵が宿ったものの恩恵を消せること――


 出来たら調節して消せるようにしてほしかった。そうやって俺は自分の力の1つにダメ出ししていると、1号が目に入った。


(1号・・・名前・・・銘・・・そうか)


 俺は青龍刀っぽい刀を台の上に乗せると刀身と柄の間に銘を彫っていく、力の封印と制御のイメージをしながら漢字で丁寧に雪、火、龍

 

 そうして主を選ばない魔剣、魔剣セツカリュウが完成した


 ナコには悪いが起きたらまた試し切りをしてもらわなくてはいけない。そう考えると少し気持ちが重くなった。あれだけの怖い重いをしたんだ、火にトラウマができたかもしれない。


(もしナコが断るならレソちゃん師匠辺りに頼むしかないか)


 そう考えながら工具を片付けようとするとまた1号が目に入った。

 少し考えてから俺は1号を台に乗せ、刀身にこれ見よがしに大きく俺ノ壱号と銘を彫った。


(魔剣の完成はお前のおかげだぞ、名刀俺ノ壱号)


 俺は俺ノ壱号とセツカリュウを作業台に並べてしばらく眺めてから倉庫を後にした。



 夕方、俺が庭の片づけをしていると、ナコが目を覚まし玄関から出てきた。

 ナコは俺を見つけるなり駆け寄ってきて「ごめんなさい」と謝った。


「いいんだよナコ、あれは俺の失敗だ。むしろなんとかしてくれてありがとう」


 そう言って頭をなでるとナコは安心したような表情になった。


「ところでよく凍らせる使い方がわかったな。作った俺ですら見るまで知らなかったぞ」


「頭の中に使い方が浮かんだんです。誰にもでも使える力の影響なんでしょうかねぇ?」


(ほう、取説機能付きか)


 謎が一つ解けたところで、俺はナコに重い気持ちで残酷なお願いをした。


「それでな、ナコ。あの魔剣に力の封印と制御を込めて銘を彫ったんだがまた試してくれないか?」


「いいですよ」


「だよな、怖いのはわかる。違う人に・・・えっ?」


 ナコは笑顔でもう1度「いいですよ」というと急かすように俺の背中を押して倉庫まで移動した。


(すげぇよナコは。)


 俺はセツカリュウをナコはカカシを1体持つと庭にでて準備を始めた。前回のこともあるのでカカシは家にも倉庫にも遠い位置にした。


「それじゃあ始めよう」


「はい」


 返事をしたナコは剣を受け取ると新たに彫られた銘に目をやる。


「俺の故郷の文字でな雪と火と龍って書いてある、魔剣セツカリュウだ」


「魔剣・・セツカリュウ・・」


 1度名前を呟くとナコはカカシの前まで歩き、そっと目を閉じた。

 俺の位置から見ても足が震えているのがわかった、でも俺は止めない。そこで止めたら俺がナコを信じてないことになると思ったからだ。


 数秒後、突然ナコの震えが止まる。次の瞬間、ナコが目を開いて剣を振るとカカシが燃え上がり火柱をあげた、燃え広がる様子はなく制御できている。それを確認したナコはもう一度今度は火柱に剣を振る、すると火柱は瞬時に消えカカシがあった場所だけが白く輝いていた。


「成功ですね」


 ナコが俺に振り返って笑顔を向ける。俺は駆け出してナコを抱きしめていた。


「魔剣完成だあああ! ナコありがとう、ありがとう」


 ナコは「おめでとうございます」と何度も俺を祝福してくれた。




 それからすぐに俺は変装、ナコは準備をして商人ギルドに向かった。

 受付でカリー商会の担当者をお願いすると奥の窓口に通された。そこには怒ったような表情の気の強そうなメガネの女性が待機していた、この人が担当者らしい。担当者は俺とナコを見ると少し考え込む表情を見せた。


「ロココさんすみません、カリファー様の借金の返済をしたいんですけど」


 ナコは担当者とは面識があるようで名前で呼ぶとすぐに用件を伝えた。


「返済ですか・・・いえ、わかりました」


 また少し考えるようにするロココという担当者。しかしナコは構わずに話を勧めた。


「物品での返済をしたいのですが、まだ鑑定師の方はいますか?」


「はい、鑑定師はまだ勤務時間内なので問題ありません。物品とはどういったものでしょうか?」


 ロココがそういうので俺は机の上にセツカリュウを出す。


「私から見ても見事な剣だとは思いますが、失礼ですがカリー商会の借金はすごい金額なので1割にもならないかと・・」


 そう言ってロココがセツカリュウに手を伸ばそうとするとナコがそれを止めた。


「ロココさん、不用心に触ると危ないです。これは魔剣です、しかも誰でも力を発動できるとても危険なものです」


 ナコの言葉にロココが手を止めた。・・と言うか全身が固まったように動かなくなった。

 誰でも使える魔剣というだけでこの世界ではトンデモない代物になるのだろう。ロココは何か言おうとしてるが言葉にならないようで呻くようにしている。

 しばらく待つとロココは絞り出したように言葉を発する。


「し、し、支部長に話を通しますのでしばらくお待ちください」


 そう言うとロココは固まったまま立ち上がりカチコチと音でもなってそうな歩き方で奥に歩いて行った。


 しばらく待つと別の従業員らしき人が俺とナコのいる窓口に来て、支部長が呼んでいるというので俺はセツカリュウを持ってナコと一緒に従業員の案内で支部長室に向かった。

 部屋をノックすると渋い声で「入れ」と返事があったので俺とナコは扉をあけて中に入った。


「話は聞いた、さっそくだが魔剣とやらを見せてもらおうか?」


 先ほど聞いた渋い声で正面の椅子に座る初老の男が俺とナコを交互にみている。

 俺はなにも言わず初老の男の前にセツカリュウを置いた。

 初老の男の後ろにはロココともう一人メガネをかけた男が控えていた。初老の男はメガネの男に魔剣を見せるとメガネの男が震えた声で「そんなバカな」と口にした。

 そんなやり取りをしばらく見ていると初老の男はこちらに向きなおした。


「どうやら言っていたことは本当のようだな。この魔剣はどうした?」


「中古武器屋だった頃にこの街では見慣れない冒険者に売られたものです。当初は折れていたのですが直したところ魔剣だとわかりました。」


 ナコが来るときに決めた通りに説明すると初老の男は「なるほどな」と頷く。

 ナコが言うにはカリー商会に魔剣が直せる職人がいることは既に有名な話になっているそうだ。作りましたでは大問題になるが直したならすでに噂になっているから問題ないらしい。


「しかし誰にでも使える魔剣か・・その価値は計り知れん。貴様らは代表の借金返済に当てたいと言っているらしいがオークションにでもかければ返済以上の莫大な儲けになるぞ?」


「この街の商人ギルドの支部長さんなら私達が急いで借金を完済したい理由もすでわかっているかと思います。私達は今のところそれ以上望まないのです」


 ナコがそう言うと初老の男は「そうか」と一言つぶやいて何かの書類に判を押してこちらに差し出してくる。

 ナコがそれを受け取る、どうやら借金完済を証明するものらしい。


「これでしばらくカリー商会は大変なことになるだろうな。まぁ貴様らには関係ないことか」


 そう言って初老の男は俺達にもう帰るように手で合図する。俺達はそれを見て部屋から出ようと振り返り扉に手をかけた。

 するとまた渋い声が聞こえてくる。


「俺はゴージュ、この街の商人ギルドの支部長だ。この件は金には出来んが借りにしといてやる」


 その言葉に俺とナコは1度顔を見合わせるとそのまま振り返らずに部屋を出た。


(自己紹介おせぇんだよ)


 俺とナコは商人ギルドを後にすると完済祝いに二人で豪華に夕食を食べようと繁華街に向かって歩いて行った。

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