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き、緊張するな・・

「き、緊張するな・・」


 ナコと買い物に行った次の日、俺は朝から倉庫こと工房に来ていた。


「なにをそんなに緊張しているんですか?」


 ナコが不思議そうに俺を見ている。どうやらこの子はこの状況をよくわかっていないようだ。


「ナコ、俺は今生まれて初めて鍛冶屋っぽいことをするんだ」


「へっ?」


「修理はなんちゃってな技術の上に俺に宿ってる力を駆使して誤魔化を重ねてやってきた。ぶっちゃけると溶接と砥ぐことしかしてないからハンマーとか持ったこともない!」


 胸を張って言う俺にナコは震えた声で話し始めた。


「それじゃあ・・武器なんて作ったこともないのに魔剣作るって言いだしたんですか?」


「大丈夫だ! 鍛冶職人達をまとめるように言われたときに剣作ってる工程はしっかり見てるし、何より俺には鍛冶神の霊格って生産チートがある」


 するとナコ吹き出して笑いだした。


(あれ? ナコが壊れた?)


「どうしたナコ、俺なんか変なこと言ったか?」


 笑いを抑えながらナコは俺に答えた。


「いいえなんでもありませんよ、さぁそれじゃあ始めましょうか」


 ナコが、自分の仕事仲間は似た者の馬鹿が2人いただけだったんだ、と思っていたなんて俺は全く気付かなかった。



「まずは魔石の使い方がわからん」


「魔石は細かく砕いたものを赤く熱した鉄を叩く前にに少しづつ加えていくんですよ」


「どうやって砕くんだ?」


 ナコが首を横に振るのをみた俺は試しに魔石を金づちで軽く叩いてみる。

 キィーンという音が倉庫内に響いた。感触的には相当硬い、おそらく思い切り金づちで叩いたところで金づちが壊れる。


「いきなり詰んだな」


「石でも投げつけてみますか?」


 肩を落とした俺にナコが冗談っぽく言ってきた。その言葉に俺はハッとしてポケットから石ナイフを取り出し、ナコに下がるように言って思い切り投げつけた。

 鈍い音を立てて魔石が砕けた。それと同時に俺の頭の中にアナウンスが響く。


『投擲スキルを習得しました』


(久々に聞いたな・・)


 俺はスキルのことはとりあえず置いておいて、ナコの方を向きお礼を言った。


「ありがとう、ナコのおかげだ」


「お、お役に立てて何よりです・・」


 若干引いてるナコを気にせず俺は砕けた魔石に近寄る。魔石の破片の中に普通の石の破片が混ざっているのが見えた。


(石ナイフも砕けたのか・・そうとう魔石硬かったんだな)


 俺は破片を集め終えると大きく深呼吸をした。


「準備できたぞ これから本格的に魔剣作りを開始する」


 俺は昨日買った長い鉄の棒を片手に気合を入れる意味で大きな声で宣言した。

 ナコが「はい、ご安全に」と元気よく返事をする。


 俺は手にした鉄の棒を自作の簡易窯に入れて赤くなるまで熱した。

 熱した鉄の棒を引き出し、道具を使ってまず溝を作るとナコに頼んでその溝に魔石の破片を入れてもらい鉄に混ぜ込む。

 再度窯に入れ取り出すと次は金床の上で金づちで叩き形を整えていく。

 

(見てたみたいにうまいこと平べったくならないな)


 少し変形した鉄の棒にナコが魔石の破片を道具を使って押し付けるようにはめ込み、それをまた窯に入れ、取り出し、また叩いて形を整える。


 何度も繰り返していくと叩いていた部分が全体的に板状になる。

 俺は一旦その状態で鉄の棒を置くと「休憩」とナコに告げる。


「うわぁすげぇ汗」


 作業中は気付かなかったが汗が全身から吹き出していたように服がびしょびしょに濡れていた。

 そんな俺にナコは水の入ったコップとタオルを差し出してくる。


「お疲れ様です。リーシェさんすごいですね、初めてでこんなにできるなんて」


「いやここまではそんなに難しくないと思う。問題はここからだ・・」


 次は刃になる部分を形成していかなきゃならない。

 刃は片側だけにするつもりだ。俺が一番使い慣れた刃物が包丁だからという理由で決めた。


(両刃だとバランス考えるの大変そうだしな)


 俺はナコから受け取った水を飲み干すとタオルと頭に巻いて気合を入れ、作業を再開した。

 刃の形成は難しい、特に先端になる部分は簡単に形が決まらない。


 長い時間作業に没頭した俺は、1度先端が後戻りできないほど変形してしまい切り落としてその分短くなってしまったがなんとか形にすることができた。

 ちょうどそのタイミングでナコが俺を呼ぶ。

 ナコは魔石を入れる作業がなくなると後ろで俺の作業を見ていたようだったが俺が気付かなかっただけでいつの間にか家に戻って夕食の準備をしていたらしい。


「今日はここまでにしませんか? これ以上はリーシェさんの集中力も持たなそうですし」


 ナコの言葉に従って俺は倉庫をあとにした。

 夕食を食べながら俺は実際やってみて発見したことなどを嬉々としてナコに話し、ナコはそれを笑顔で聞いてくれた。


「リーシェさん、本当に楽しかったんですね」


「楽しいか・・そうなんだろうな、うん楽しかったんだな」


 夕食が終わった後も、俺は明日の工程を想像しながらウキウキしていた。


(明日は砥ぐ作業だ、最初の状態から砥ぐってなると相当大変だろうな)


 頭が明日の作業でいっぱいになっているとナコが俺の前にお茶を出してくれた。


「おっ、ありがとうナコ」


「いえいえ、居候の身ですから。それにしてもリーシェさんまるで新しい遊びを見つけた子供みたいですね」


「否定はできないな」


 俺はすこし照れた笑いをしながらいう。


「そういえば――」


 ナコがそう切り出したので俺はナコの顔を見る。


「作ってる魔剣はどんな力のある魔剣にするんですか?」


「・・・」


 俺の頭に鍛冶神の霊格の能力の1つ浮かび上がる


――1から作ったものに関して作るときに強くイメージした効果を乗せることができること――


「なぁナコ・・・」


「なんですかリーシェさん?」


「明日また魔石入れるの手伝ってくれないか?」


 「え?」と目を開くナコに、俺は謝るように頭を下げた。


 魔剣製作1日目終了。 魔剣完成度0%

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