これからデートします
「これからデートします」
魔剣を作ると決めた次の日、ナコと朝食を食べながら俺は前置きもなく言った。
「リーシェさんと2人で買い物ですか、楽しみですね」
(俺の言いたいことを一瞬で理解するとはさすナコ)
ナコの反応に関心しているとナコは少し考えるような顔になった。
「魔剣って何で出来てるんですか?」
「しらん! 前回は米でくっつけただけだしな」
即答した俺に呆れた表情になるナコ。
(米でくっつけたに驚いてくれないのは昨日でいろいろ耐性がついたのかな?)
「まぁ安心しろ多分俺が1から作れば鉄だけでも作れるはずだ」
「せめて魔石を使いましょうよ? 信用されませんよ?」
(なに魔石ってあるの!? ようやくファンタジー素材を使えるのか!?)
ナコの言葉に少し興奮しながら俺はナコに聞いてみた。
「魔石ってどこで買えるんだ?」
「いいものは国営のオークションとかになるでしょうけど質を選ばないなら冒険者ギルドで買い取れますよ? それでもそこそこのお値段なんですけどね」
「カリー商会で使っていた鉱山持ってる商会で鉄を買って、大通りで食材買って、冒険者ギルドに魔石を買いに行く」
ナコは「はい」と頷くと空っぽになった皿を重ねてキッチンに運んで行った。
ナコが食器を洗っている間に俺は偽装皮膚と包帯で変装して、準備が終わる頃にはナコも出かける準備が終わっていた。
俺とナコが門を通ってロノリアの部屋に出るとそこにはロノリアが腕を組んで立っていた。
「おはようございますリアさん」
「おはようございます」
俺に続いてナコが挨拶するとロノリアも「おはよう」と微笑んだ。
「俺を待っていたみたいですけど?」
「リーシェくんじゃなくてナコちゃんに用があるのよ」
「じゃあ俺は外しましょうか?」
「リーシェくんのことだからここにいて大丈夫よ」
ロノリアは俺のやや後ろに立っているナコの方に体を向ける。
「ナコちゃん、リーシェくんの正体を聞いたのよね?」
「はい、使徒様だと伺いました」
するとロノリアは少し驚いて俺の方を見た。多分俺が自分で使徒を名乗ったことで驚いたのだろう。
「説明がめんどくさくなりそうだったからそういうことにしたんですよ」
「ああ、そうなのね」
そういうとロノリアはまたナコの方を向いた。
「ナコちゃん、これは絶対に誰にも知られてはいけないことよ? わかる?」
「はい! 私は誰にも話しません」
ナコは真剣な顔で返事をした。
「あなたを解放してくれた元御主人様にも内緒にできる?」
ナコは返事に迷った。ナコにとってカリファーは大恩人だ、そんな人にも絶対に内緒にしなければならないほど俺の秘密は大きすぎる。
俯いて数秒沈黙したあとナコは俺とロノリアに誓うように言った。
「カリファー様にも絶対に言いません! 私はカリファー様に貸しがあります、それを使って絶対教えてあげないことにします!」
ナコの宣言に俺とロノリアは大笑いした、しかしナコはそんな俺達を見ながら真剣な顔をしている。するとロノリアがナコの頭をそっと撫でた。
「あなたのその強い言葉を信じます。でもこれだけは忘れないでね?」
そう前置きするとロノリアは悪戯な笑みを浮かべて俺の方を見た。
「リーシェくんは自分の正体のことであなたが苦しむことは望んでいないわ、だからあなたが抱えきれなくなったらすぐに言っちゃいなさい? その方がリーシェくんの為でもあるのよ」
ロノリアはそういうと俺達の正面から避けて「引き留めてごめんね」と言って飾り気のない部屋の掃除を始めた。
「ロノリアさんってすごい人ですねぇ・・」
ため息と共にそう言ったナコ、店を出てからこの台詞は28回目だ。
今は昼過ぎ、鉄や素材になりそうなものの買い物と10日分くらいの食材の買い物を終えて倉庫に転送も済んでいた。
現在俺達は、露店で買った果実水を飲んで休憩している。
「なあナコ、何度もいうけどあの人のようにだけはなるなよ?」
俺の言葉はナコに届いていないようで、頬を赤く染めたナコが御姉様と呟いている。
(ナコもなんだかんだ言って年頃の娘なんだな・・・でもあの人に憧れるのだけはやめて欲しいがな)
その後俺達は冒険者ギルドに移動してきた。
冒険者ギルドの奥、ちょうど食堂の反対側にある冒険者が魔物の素材を売るスペース。あまり利用者はいないがその素材を買うこともできる場所だ。
「すいません魔石欲しいんですが」
カウンターにいる職員の女性に話しかけると、女性は「お待ちください」と言って奥の倉庫のようなところに入って行った。
少し待つと女性がバスケットボールサイズの所々紫に光る石を持った男を連れて戻ってくる。男はカウンターに魔石を置くと奥へ戻っていった。
「今ここにある魔石はこれだけですね」
「じゃあそれを貰おう」
俺は料金を支払ってから魔石を掴む。
(なにこれ動かないんだけど)
魔石は見た目よりはるかに重かった。全力でも持ち上がらなそうだ。
職員の女性を見るとクスクス笑っている。
「リーシェさん、しょうがないのでもうアレで運んだ方が・・」
「そうするかー」
ナコがそういうので俺は職員の女性の目を気にせずに魔石を倉庫に転送する。
職員の女性が消えた魔石に唖然としているようだが構わず俺とナコは冒険者ギルドを後にした。
「魔石って重いんだな、びっくりしたよ」
「私もあのサイズは初めてみました、光が弱かったのであまりいい品じゃないようでしたけど」
「へぇー、いい奴はもっと光ってるのか」
俺はナコに魔石のことを聞きながらロノリアの店に帰ってきた。
部屋にはちょうどロノリアはいなかったのでそのまま門を開いて家に帰った。ナコは残念そうにしているがあまり合わせない方がいいと思ってた俺として好都合だった。
「俺は材料確認したら倉庫を仮工房に改造する。ナコは晩御飯の方を頼むよ」
「わかりました」
ナコは買った食材をもって倉庫から出ていった。
倉庫には作業部屋から持ってきた簡易窯や金床など名前を彫るなどして俺の恩恵を与えた道具が揃っている。
俺はそれらを使いやすいように並べて最後に材料を確認しながら床に並べていく。そして――
(魔石は動かしようがないよな・・)
俺は未知のファンタジー素材に男の子的な興奮を覚えつつ、どう加工したらいいのか不安を感じていた。




