さぁて、どうしてくれようか・・
「さぁて、どうしてくれようか・・」
作業台の上には折れた大剣、ただの大剣ではなく魔剣。
ナコの話では何で作っているかもわからないらしい。
考えていてもしょうがないと俺はまず折れた刃の方を窯に入れてみた。
しばらくして取り出してみるが効果はなかった。
(熱放射すらないのかよ・・)
これもナコの言う通り、火を司る魔剣が熱で溶けるわけがない。
(逆に冷やしたところで効果もないだろうなー)
俺は魔剣を眺めながらなにか方法はないかと頭を悩ませていた。
その時、扉が開く音が聞こえてきた。扉の方を振り向くとそこには目を赤く腫らしたナコと血の気の引いた顔したカリファーが立っていた。
「リー、調子はどうだ?」
カリファーは目の笑っていない恐ろしい笑顔を向けてきた、声も体も震えているがいつも通りを装えてるつもりなんらしい。
「リーシェさん。今日も残業ですか?」
ナコも声が少しかすれているが、やはりこちらもいつも通りなつもりのようだ。
そんな二人を見た俺は自然と笑いがこみ上げてきて大声で笑った。
ナコもカリファーも唖然とした感じでこちらをみていた。
俺は笑いを止め、3回深呼吸してから二人に向きなおした。
「お前らガラスで自分の顔見てみろよ、ひどい顔だぞ」
そういうと二人が同時にクスッと笑い
「呪われて顔すら出せないリーに言われたくないな」
「そうですよそうですよ、人のこと言わないでください」
今度は二人ともいつもの口調だった。
「カリファーまた馬鹿なことしたな」
「あぁまたやってしまったようだ」
「店長様は凝りませんね、リーシェさんどうしますか?二人で逃げちゃいますか?」
「それもいいな」
「おいおい逃げるなら俺も連れて行ってもらうぞ」
「まぁ逃げるのもいいが、その前にいろいろ試してやろう」
「リー・・」
「カリファー、ナコ、この依頼終えたら店がでかくなるぞ」
「そうですね。そしたら2階の仮眠部屋のベットいいものにしたいです」
「ナコ・・」
「さて店長が怒るから残業しないで今日は解散するかー、お先―」
俺は笑いながら作業部屋を出て裏口から出た。
「私も夕飯の準備があるので2階に戻りますね」
ナコも笑顔で作業部屋を出て階段を上って行った。
「・・すまない」
カリファーのつぶやきは誰の耳にも届かなかった。
「なるほど」
ロノリアの部屋に戻った俺はこの街のすべてを知るロノリアに街の武器商人、武器職人、そして領主の話を聞いていた。
要約すると領主はとても信仰心が強い信徒で教会や首都の教皇に莫大な寄付をしているらしい。
その寄付の出所が武器商人達である。
「金の繋がりは簡単に切れるが信仰が絡むとなると話は別になるわけですか」
「そういうことよ、だからカリー商店の存続は領主にとってはそのまま教会への貢献に関わってくるからどうしても潰したいでしょうね」
「そこで外聞が悪くならないように魔剣の修理ですか・・」
「リーシェくん的には自業自得なんじゃないの?」
「そうは思わないですけどね・・。魔剣に関することはなにか知りませんか?」
「残念だけど私の知識はこの街の情報限定なのよ、学者や賢者ですら知らない魔剣の素材、まして直し方なんて全くわからないわ」
ロノリアは大きく首を振って見せる。
(わかっていたことだけどこの人にそういわれると望みが消えた感じがするな・・)
「ありがとうリアさん、方法は自分で探しますよ」
「ごめんねリーシェくん、力になれなくて」
「いえ無理を言ったのは俺ですから」
「そう?でも久々にこうやってお話ができて私は嬉しかったわ」
(そうか、このところずっと仕事だったもんな・・)
「まだゆっくりはできませんけど、落ち着いたらまたうちでパーッと騒ぎましょうよ、レソちゃん師匠やヨールさんも呼んで」
「あら?ヨーちゃんも呼んでいいの?彼女喜ぶわよ、前にもらったお菓子もレソちゃんに注意されるまでずっと食べずに飾っていたくらいなのよ」
(そんなに好きなのかかわいいもの)
「楽しみにしててください」
「ええ、お誘い待ってるわね?」
「ええでは僕はこの辺りで」
そう言って椅子から立ち上がるとかすかに包帯に重みを感じた。
「待ってリーシェくん。・・っと、はい、取れた。」
そういうとロノリアは草の葉を俺に見せつけてくる。
「これは庭に生えている草なんだけど、つぶれたりするとべたべたの液体がとんじゃってね?それで葉や花びらなんかが服にくっついちゃうの、子供の頃よく母にそれで怒られたわ」
懐かしいものを思い出すような遠い目をするロノリアをみて俺は少し笑った。
「リアさんも草むらに入ったりするような子供だったんですね」
「子供なんてみんなそうでしょ?使徒様のリーシェくんにはわからないかもしれないけど」
「だから使徒じゃな・・・」
(あれ?なんかいま思い浮かんだような)
「どうしたのリーシェくん?急に固まっちゃって」
(!!)
「それだ!それだよリアさん!!」
「え?なに?なにか思いついたの?」
「ありがとうリアさん、俺急ぐから!」
そう言って俺は門から家向かって走って行った。
残されたロノリアは少し困惑しながら「仕方ないわね」と一言漏らした。




