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なにがどうなってこうなった・・

「なにがどうなってこうなった・・」


 俺は誰にも聞こえないように呟いた。


「ラオル様。彼らは私の店の従業員でリーシェとナコと申します」


「はじめましてナコと申します。騎士団長様にお会いできて光栄です」


 ナコが緊張しつつラオルという壮年の男に挨拶し頭を下げる。

ナコに続くように俺も挨拶しようと重い足で1歩前にでると―


「挨拶はいらん。それとそこの布を巻いたやつは酷い呪いを受けていると衛兵から聞いている、呪いはなにをきっかけに伝染するかわからん。この場にいることは許すが言葉を発するな」


 (おっしゃあああああああああああ)


 俺はラオルに対して軽く頭を下げると誰にも見えないところで右手をグッと握りしめる。呪い設定のおかげでで向こうから不干渉を宣言されたようなものだ、まだ目の前にラオルはいるがそれでもものすごく気持ちが軽くなった。


「しかしあの剣は本当にあやつが直したのか?」


「はい、リーは・・ゴホン。リーシェは武器を作ることはできませんが修理に関しては凄腕です、直す前より丈夫で切れ味もよくなると街の冒険者にとても評判です」


「フン!やりすぎて街の武器職人達に睨まれるほどに。というわけか」


 そう言われるとカリファーが少し肩を落とす。


「従業員には何も話していないと言ったな?」


「はい。それを二人に説明する時間をいただけないでしょうか?」


「よかろう、手短にな」


 そういうとカリファーは俺達の方に向きなおして話し始めた。


「さっき聞いてのとおりなんだが、このカリー商店は街の武器職人や街にある冒険者ギルドと商人ギルドの公認をもらっている武具屋からよく思われていないんだ。開店してまだたった10日の店にと思うかもしれない、しかしたった7日で全体の客の3割がうちの店に流れた――」


 鍛冶技術の衰退により武器の生産量が落ちる。

以前より武器の単価が高くなる。

簡単に修理できない為に武器は使い捨てになる。

武器の需要があがり、質を落とした武器を量産することになる。

武器の単価は変わらず強度の低い粗悪品が出回る。

そうやって今では冒険者は1日平均2~3本の武器を消費するようになっていた。


「そんな中で今この街で売られている武器より丈夫で切れ味もあり中古の値段で買えるこの店ができた。冒険者達がこちらに流れてくるのも当然というわけだ。なら品質を改善して新品の良さを売りにして客を引き戻せばいい、しかし商人や職人たちは1度味わった甘い汁を手放すことができなかった。そして商人ギルドや領主様を通してうちに圧力をかけようとしていたんだ」


 (どこの世界にもそういうことあるんだな)


 さらにカリファーが続けた。


「そして今日俺が領主様を訪ねたときがその商人を代表するものから話を聞いた直後だったそうだ。そこでまずはうちの店の修理の技術がどれほどのものかを確認したいとお考えになって修理を依頼して下さった。そしてその日のうちに修理が終わったことその切れ味に満足して下さった領主様が俺達に機会を下さったんだ」


 (すっげー嫌な予感がする、っていうかこいつ来てる時点でもう間違いないだろうな・・)


 そこまでカリファーが言うとラオルがカリファーを腕で制して話し始めた。


「ここからは機密事項になる心して聞くようにしろ。いいか?」


 ラオルが俺とナコに睨むように目を向けてくる。俺とナコはその視線に1度大きく頷いて見せた。


「実はな俺が使っている魔剣が賊を退治する際に何者かの手により2つに折られたのだ。賊とその者は現在指名手配されてすでに国中で追われる身になっている、見つかるのも時間の問題だろう―」


 (国中とか大事になりすぎだあああああ)


「そこでだ。領主ジュルジュ子爵様の名義でこの店に魔剣フレイノーグの修理を依頼をする。もし直せれば領主様自らが後ろ盾をして下さると約束した」


 (やっぱりかああああ!無理だってこの店の修理なんて7割が鉄、3割が鋼鉄でまだファンタジー的な鉱石すら触ったこともないのにいきなり魔剣とかムリゲーだろうが)


「ラオル様の魔剣は必ずやこのカリー商店が直して御覧に入れましょう」


 カリファーがその場でラオルに向きなおすと片膝をついて頭をさげた。


 (なにいってんのおまえ!?おまえがやれよ?絶対俺やんないからお前がやれよ!?)


 ふとナコの方を見るとナコは慌てて膝をついている。俺もナコ見様見真似で膝をついて頭をさげた。


「フン。では魔剣はここに置いていく。修理できないのは仕方がないとするがもしもこの魔剣になにかあれば貴様ら全員どうなるか・・・わかっていような?」


「はい、お任せください」


 間髪いれずにカリファーが返事をした、それは自信にあふれたものだった。


 (だからなんでお前がそんな感じで返事できるんだよ!)


 ラオルはカリファーの返事を聞いて店を去っていき、店内に静寂が訪れる。

カリファーはまだ片膝をついて頭をさげたままで停止している、おそらく自分に酔っているんだろう。

ナコも先ほどから動く気配がない、放心しているようだ。

俺は2人の状態を確認してから立ち上がって魔剣の元に歩み寄る。


「綺麗に折れてるな」


 俺の言葉にナコは正気を取り戻して立ち上がりこちらに向かってくる。


「本当ですね、どうやったらこんな折れ方するんでしょうかね?」


 するとカリファーが勢いよく立ち上がる。


「しかしこの折れ方ならいつものようにくっつけて整えるだけ。それで領主様の後ろ盾が得られるんだ、いい依頼だと思わないか」


 俺が呆れすぎて言葉を失っていると真っ青な顔したナコがカリファーに言った。


「て、店長様?まさか魔剣をいつものうちに売られたり修理に出されるものと同じように考えて依頼をうけたのですか?」


「そんなわけないだろう?魔剣なんだ多少大変になるだろうでもリーなら――」


「多少なんてレベルじゃないんですよ!?魔剣は鉱石でも魔物の牙でもないんです、誰が何を使ってどうやって作ったかもわからないような代物なんですよ!?それも火を司る魔剣ということは熱に耐性があります、店の窯どころか首都近くの炉ですらなんなく耐えてしまう可能性があるんですよ!?」


 物凄い剣幕で捲し立てるナコに驚きながらカリファーはナコの言うことがようやく理解できたようでドンドン顔青く染めていく。

それをみて俺は自分に冷静になるように言い聞かせて話し始める。


「そこまでのものだとは俺も知らなかったが魔剣が簡単に修理できない、いやそもそも直せないものだというのはわかってた。だから話を聞きながら向こうの意図はすぐ読めたよ。この修理が失敗したら領主はそれを理由に圧力を・・いやこの店そのものを潰すだろう」


 ナコとカリファーはハッとした顔になる。どうやら気付いたようだ、でも俺はあえて続けた。


「領主と街の武器商人、職人はすでに組んでいる。」


 その言葉にカリファーは震えながら崩れるように両膝を地面につけた。


「そ、そんな、初めから・・・この店を潰すために・・」


 そんなカリファーを見てナコは涙を流しポツリと「私のせい」とこぼすとそのまま泣き崩れた。


 (もしかしたらナコは2度目なのか・・)


 元商会の娘というナコがどういう理由で奴隷になったかは知らない、そこになにがあったかを聞くこととも思わない。それでも先ほどの自分を責める言葉はそういうことなんだろうと俺は以外と冷静に考えることができた。


 (この霊格でどこまでいけるかわからないが・・)


 俺は大きく深呼吸してそれから思い切り店のカウンターを両手の手のひらで叩く。

その音にカリファーとナコはビクッと反応してこちらに顔を向けた。

二人がこっちを向いたのを確認すると俺は魔剣を持って作業部屋に向かいながら一言。


「よし、それじゃあ仕事するか」


 俺はいつも通りの口調になるように自分を演じてそう言った。

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