本当に金は使ってないんだな?
「本当に金は使ってないんだな?」
俺は戻ってきたカリファーを問い詰めるようにして話しかけた。
「もちろんだ、俺は約束は守る。しかしすごいな1日でここまでか、明日には開店できそうだな」
店の中を見渡しながらカリファーが感動しているのがわかる。
実は俺もそうだった。カリファーが戻る少し前にナコに呼ばれ必要なものが決まったかその相談だとおもって店スペースに向かうとそこには完成された店スペースが見えた。
「必要そうなものは別の使わなそうなもので代用しました」と話すナコに対して俺は「ナコはすげぇよ」と返すことしかできなかった。
「まだ商品の値段も修理の値段も買取の値段も決まってない。それに宣伝だって必要だ。明日開店は無理だろ」
「それなら心配するな、すべて値段付けはナコに任せることになってる」
「ナコに丸投げかよっ!」
「違うな適材適所だ。それができるからナコを選んだんだ。できるな?ナコ」
「お任せください御主人様、リーシェさん」
「本人もこう言っているが?」
「まぁナコなら問題ないのは思い知らされたばかりだからな」
俺はもう一度店のスペースを見渡して開店できなくもないことを確認した。
「なら明日の昼から開店にするか」
「じゃあ朝は宣伝ですね?私頑張ります」
両手を胸の前でぎゅっと握るナコ。
「残念ながらナコは店でギリギリまで確認作業だ、始まってからあれがないこれがわからないじゃ店にならないからな。そして俺もギリギリまで作業部屋に籠る。修理が終わってるのは剣しかないから他の簡単に直せそうなものも並べた方がいいだろう」
「そうなると宣伝役は俺か」
「間違ってもタキシードで宣伝すんなよ?高級なレストランじゃないんだぞ?」
「普通の恰好にするよ、冒険者ギルドと商人ギルドに行けばいいか?」
「そうだな。ただ開店前には戻れよ?開店するとき店長がいないでは話にならない」
「店長・・・そうか俺が店長か」
謎の感動に浸っているカリファー。
(今更かよ・・)
「そうと決まったら今日は早めに解散にしよう。景気づけの1杯で明日遅れたでは困るしな」
「あぁ明日から頼むぜ店長」
「がんばりましょう御主人様」
「ナコ。店にいるときは店長と呼べ!」
「わかりました!店長様」
俺は2人に戸締りはやっておくから先に帰っていいと告げ、店を出る二人の背中を見送ってから戸締りの確認をする。
裏口を確認すると扉の下に紙が挟まれていた。
早く帰ってこれるんでしょ? リア
(もしかして仕事を始めてからもそっちに帰るように習慣付けされてるのか・・?)
俺は深く考えるのを止めて戸締りを終えるとロノリアの店のロノリアの部屋に向かった。
もう見慣れた扉を叩くと聞きなれた声が返ってきたので俺は扉をあけ中に入った。
「おかえりなさい。」
「ただいま。リアさん、この手紙はなんのつもりですか?」
「特に意味はないわ~、強いて言えば帰省本能の植え付けかしらね?」
「過保護を認めたばかりじゃないんですか?」
「いいじゃない?リーシェくん半月もしたらこの街を出るんでしょ?この世界に来たばかりの使徒様に帰る家があってほしい。そういうのは迷惑?」
「それは・・嬉しいですけど」
突然の言葉に俺は少し照れてしまう。
包帯で表情は見えないはずの俺の顔を覗きこんでロノリアは微笑む。
「ふふ、やっぱりリーシェくんはかわいいわね」
(やっぱりかなわないな・・)
俺は何も返さずに急いで門に逃げこむ。
「帰る家・・か・・」
その言葉だけでなぜかとても暖かくてとても嬉しかった。
「さてと!明日から頑張らないとな!」
柄にもなく独り言で気合を入れた俺は明日に向けて早めに休むことにした。
翌日の朝、早く寝たがいつも通りの時間に目覚めた俺は朝食を簡単に済ませていつもの変装をして門を出た。
今日はまだロノリアは店に来ていないようでそのまま部屋をでて裏口から俺達の店に向かった。
裏口から入ると店のスペースで話し声が聞こえる。2人はもう来ていたようだった。
店スペースに向かうと紺色のスカートと白の長袖シャツにエプロンを付けたナコと普通の恰好のカリファーがいた。
「カリファー、ナコ。おはよう」
「おはようリー、遅かったじゃないか」
「おはようございますリーシェさん」
「カリファー、今日は普通の恰好なんだな」
「目立つ格好の方がいいと思ったんだがナコがリーに怒られるというのでな」
「ナコよくやった」
「お店の為でもあるって言ったら御主人様はすぐに私の意見を聞いてくださいましたよ」
「ほお、さすが店長だな」
「はい店長様です」
「ああ!任せてくれ今日の宣伝も絶対に成功させてやる」
カリファーの意気込みを聞いた後少しミーティングのような会話をして、それからカリファーは宣伝をしに冒険者ギルドへ。ナコは店内を歩きながらブツブツと小声で話してる、どうやらシュミレーションしているようだ。俺は2階の準備室からすぐ直るものを集めて作業場に運び修理を開始した。
俺は見た目の怪しさから店側には近づかないと宣言しているので開店前に3人で集まる以外はずっと作業部屋に籠る予定だ。
昼前頃、ナコが作業部屋に俺を呼びに来る。店のスペースに行くとすでにカリファーが戻ってきていた。
「宣伝の手ごたえはどうだった?」
「最初反応はよかったが、買取希望だけが多くなりそうだった、だからすまないが俺の独断で買取のみは行わずしばらくは下取りでということにしたんだがまずかったか?」
カリファーがそういうとナコは目を丸くして驚いていた。
「ああ、むしろいい判断だった。さすが店長だな」
俺がそういうと正気に戻ったようにナコがカリファーに「すごいです店長様」と称賛の言葉を浴びせている。
「よーし開店まであと少しだ。カリファー、店長なんだから気合の入る一言頼む」
「任せてくれ。リー、ナコ準備期間はすごく短かったが今日この店を開店させることになる。最初は戸惑うこともあるだろうが力を合わせてこのカリー商店を大きくしていこう!」
(その名前忘れてたああああ、くっそもう変えれねぇじゃねえかよ!こうなったら自棄だ)
「「おー!!」」
カリファーが開店の看板を外に出しにいくのをみて、俺は逃げるように作業部屋に帰った。
店の方からは話し声や足音が聞こえてくる。
カリファー確かに宣伝をちゃんとしてきたらしいな、と考えながら俺は作業部屋で修理を続ける。
(最初の目標はカリファーの借金返済だな)
店スペースからは、この店最初の購入者に送られたナコの「ありがとうございました」の声が響いていた。




