それって危ないやつじゃないんですか!?
「それって危ないやつじゃないんですか!?」
修行を開始してから8日が経過していた。
レソートとの修行は何というか地味だった。初日は剣を右手から左手に持ち帰る練習だけをひたすらやった。
2日目、変装してくるように言われたので偽装皮膚は着けなかったが包帯とバスローブを装着して地下に向かった。地下には誰もいなかった、ただ待っているのも気が引けて甲羅を装着し腕立てして待っていた。
だいぶしてからレソートがきて、まず変装を大笑いした。その後、夜仕事で朝が弱いからいつもこれくらいの時間になると笑ったことのついでに謝られた。
その日の修行はまず装備する場所決めをした。右脇腹のやや後ろに位置を決めベルトで鞘を固定するとそれからレソートの仕事の時間まで抜刀の練習をした、もちろん両方の手でだ。
左手は抜きやすいがローブが邪魔ですんなりいかない。
右手は逆手で抜くことになるがこれはかなり難しい、何度か脇腹を切りそうになり、そのたび「ヒッ」と声を上げるとレソートが馬鹿にしてくる。
帰り際、レソートが剣と同じ長さの木の棒を差し出してくる。家の中でも常に持ち歩き、取れるものはそれを使って取るように言われた。
3日目~7日目までは変わらず朝来たら甲羅を付けて腕立て伏せ、レソートがきたら抜刀と持ち替えをひたすら続ける。少し変わったのは持ち替えを軽く投げてするように指示された。
そして8日目の朝、いつものように門をでるとロノリアが待機していた。
「今日はいいものを持ってきたわ。レソちゃんには言ってあるから今日は修行おやすみよ」
綺麗な顔でニコニコと話しかけてくる。しかし俺は知っているこの笑顔はなにか裏がある。
「一体なんでしょうか?」
反射的に背筋を伸ばして答える俺にロノリアがメスシリンダーのようなグラスに青と紫の中間のような色合いの液体が入ったものを俺に差し出す。
「これを飲むと頭の中がグルグルってなって眠くなるの。そして目を閉じると身体を脱ぎ捨てて魂だけになったみたいに軽くなってね―」
ここで冒頭の叫び。
(どう考えたってアレだ、元の世界で芸能界を賑わせてるやつだ。)
「大丈夫、大丈夫。初めは怖いかも知れないけどみんなやってることだから」
「それ絶対ダメなやつですよ!俺は人間辞めるつもりないですから!!」
「何言ってるの?これはね、自分のスキルを確認する薬よ?」
「へっ?」
俺は久々に間抜けな声を上げた。
「だからこれを飲んで寝ると。魂だけになったみたいになって自分のすべてを見つめることができるの。その中には腕力だったり、脚力なんてのもあるけれど一番の効果はスキルよ」
ビシッと指を差しながらロノリアは話を続ける。
「この薬を飲めば自分の覚えてるスキルと覚えかけてるスキル、そしてそれらスキルの内容を細かく知ることができるの」
「それすごいじゃないですか!」
理解が追いついた俺はその薬の凄さに驚いた。
「数日薬を寝かせないとできないからすぐ渡せなかったんだけど、ようやく今日できたのよ。だからレソートちゃんに言ってお休みにしてもらったから今日はこれを飲んで寝るのが修行よ。」
「手作りですか!?ありがとうございます。」
「それでね?これ飲むと半日以上寝ちゃうんだけど、その間に何度か体を叩いて刺激を与えないと永遠に眠っちゃうの」
「・・・」
(やっぱり危ない薬じゃないかよ!!)
「それでね、この建物、人が住んでるわけじゃないからベットがないのよ」
(これあれだな・・・うん、言いたいことはわかった。少し抵抗しよう)
「ならベット代わりにソファーお借りしてm―」
「人って寝てる時に沢山汗を掻くって知ってた?ソファーで寝りしたら汗が染みこんで臭くなっちゃうわ」
「ならタオルを貸してもらえれば床d―」
「床で寝たりなんかしたらダメよ!!」
叫ぶように否定してくるロノリアにやはりこうなるのか・・と頭を抱えながら俺は言った。
「うちくる?」
「え、そんなつもりじゃなかったのよ?でもせっかくそう言ってくれるならお呼ばれしようかしら」
(この人が知的だったのが遠い過去のように思える。)
俺は門を開くとロノリアも連れていくようにイメージする。
すると―
「これが異空間魔法なのね。空間が開いたのが見えるわ」
俺は少しカッコつけてロノリアに手を差し出して言ってみた。
「ようこそ、我が家へ。歓迎しますよ、お姫様。」
「え?何か言った?」
ロノリアはすでに門の中に入っていた。
簡単に家の中を案内して薬を飲もうとするとロノリアが風呂の使い方を聞いてきたので教えた。シャンプーやコンディショナー、ボディーソープも自由に使っていい、俺が使ってるので良ければとボディブラシも使っていいとそれぞれの説明をした。
いざ薬を飲もうとすると今度はトイレの使い方を聞いてきた。この世界に洋式トイレはないらしい。トイレの使い方と洗浄と温風乾燥の使い方を教えた。
「他に聞いておくことはないですか?」
「大丈夫よ、ごめんなさいね。何度も止めちゃって」
「じゃあ飲みますね?」
「ものすごく甘いけど我慢してね?水で薄めたりすると効果がなくなるから」
「辛いとか苦いよりマシですよ」
「そうね。じゃあいってらっしゃい」
「いってきます?」
いってらっしゃいに疑問を抱きながら返事をして、俺は薬を一気に呷った。
(甘い。ガムシロなんか比べものにならない。喉がやばい。目が、いや頭が回る。)
俺は仰向けでベットに倒れた。
(天井がグルグルしてる。瞼が重い・・・。)
目を閉じると急に身体が軽くなったように感じた。
(この感じ、女神様と話したときに似てる。)
少しずつ目の前が開けていく感覚、それと同時に頭の中に俺の情報がものすごい勢いで流れてくる。
(違う、流れてるんじゃない、知ってることを思い出してるだけだ。)
あらゆる物を思い出す、元の世界で生まれた頃のことから死んだときの臭いまで。
しばらくするとスキルが頭の中に浮かび上がる、加護も一緒のようだ。
創造神の加護は女神様の説明してくれた通りのものだった。
異空間ハウスは女神様の説明のほかに詳しい拡張の仕方があった。
そして―
(鍛冶神の霊格ってどういうことだ・・・)
その内容は―
魔力を手に集めてイメージしながら撫でると自分の手で経験した作業を省略できること。
作った物や少しでも手を加えた物に恩恵が宿ること。
どれくらい手間をかけたか手を加えたかで恩恵の強さが変わること。
1から作ったものに関して作るときに強くイメージした効果を乗せることができること。
自分の恩恵が宿った物を使うとそれを自在に使いこなせて、限界以上の力を引き出すことができること。
自分の恩恵が宿ったものの恩恵を消せること。
(これはかなりチートってやつだな。自分の力じゃなきゃ引くわー)
あとは覚えかけてるスキルだった、武器操作、眼力、槍術、投擲、逃げ足、表情隠匿。
(レソちゃん師匠のパンツ見たくてを凝視してただけで眼力スキルがとれそうなのか!?エロってすげぇな!)
今の自分のすべてを見終わったころ、そっと光が差してくる。目が覚めるのがわかる。




