表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/44

Side Sainta Holy Woman

「聖女様、もうすぐ船がでます」


 シェリアの声が微睡んでいた私を覚醒させる。

私達は今、自由貿易衛星都市ガノゾタへ向かう違法出国船に乗っている。

アーツマの街で追っ手を振り切れたのは本当に幸運だった、シェリアも何度もそう言っているし私もそう思う。


 私は神のお言葉を直に受け取ることが許される世界に10はいないとされる聖女の一人として首都で暮らしていた。


 ある日私にとんでもない神託が下る。


『この世界の神の1人が不誠実な行いをしたので罰しました。新たな神を据えるまで人々には少し苦労を強いるやもしれません。・・・・ふぅ、疲れたよ天使長ちゃん。あんなやついなくても世界は回るのにいちいち面倒だよねー。こっちは転移者さんの肉体作りで忙しいのにさー・・え?私の好みに寄せすぎって?いいじゃない私の使徒みたいなものなんだし・・ってあれ?これマイク切ってない!?嘘やb』


 私はすぐさま教皇様にこのことを伝えに走った、その結果・・・。


「聖女は異端に触れ、あろうことか神の死を騙る大罪を犯した。神は使徒様を現世に顕現なさるそうだ。この異端の聖女はその使徒様に罰していただこう」


 教皇様は神様の一人が死んだということを私が知っていることが不都合とし、濡れ衣を着せ断罪しようとした。私は幼馴染で戦乙女の名を拝命する聖騎士シェリアに助けられなんとか首都を脱出した。

しかし、教皇様は世界中の教会にこのことを伝え、異端の聖女として追われる身となった。


 それから私とシェリアはひとまず教会の影響力の及ばないガノゾタへ逃げるようと旅を始めた。


 そしてアーツマに食料の補充で立ち寄ったときそれは起こった。熱心な教徒でもある領主が私がいることに気付き私兵騎士団を使って私を捕らえようとしたのだ。

必死に逃げたけれど馬車は止められ、追っ手の騎士達とシェリアが戦うことになってしまった。

シェリアは強い、1人で何人もの騎士達を切り払った。その時その男は現れた、ジュルジュ子爵の右腕とも呼ばれる魔剣使いラオル、いくらシェリアが強いと言っても魔剣相手では分が悪い。

力比べに持ち込まれ、シェリア押され始めて私は自然に声が出てしまった。


「シェリア!!」


 そのことが彼女を振り返らせ隙を作らせることになってしまった。

シェリアは弾き飛ばされ、ラオルが轟々と燃え盛る魔剣を大きく振りかぶった。そして振り下ろし始めたとき私の後ろから何かが飛んできた、そしてそれが魔剣に触れると同時に魔剣がバキッという音と共に折られていた。


 数秒、場を静寂が支配した。

いち早く正気に返ったシェリアは1頭馬を奪い私を抱えて乗せてくれた。シェリアが何かが飛んできた方向に視線を向けているので私もそちらをみた。

そこには一人の黒髪の少年。


 (あの方が助けてくれた?)


 そう思うと心臓が高鳴った。しかし止まっている暇はない、シェリアはすぐに自分も馬に跨ると私にしっかり捕まるように言って馬を走らせた。

魔剣が折れたことが相当にショックだったのか視界に入ってる間、騎士達は追ってくる様子がなく逃げ切ることに成功したのだ。


 それからあの少年の話をシェリアと何度かした、助けられた、幸運、運命、あの方こそが使徒様ではないか。などと話はどんどん大きくなっていった。


 今、私の手の中には鋭利に砥がれた石のナイフがある。シェリアが咄嗟に拾ってきた、魔剣を折った代物だ。これを持っていればきっと大丈夫、そう自分に言い聞かせてここまで逃げてくることができた。このナイフのおかげに違いない。だから私は新しい願いをこのナイフにかけた。


 (神様は私のことを欲張りと思って見放してしまうでしょうか・・・)


 これを持っていればきっとあの人にまた会える、そう言い聞かせて私は船に揺られながら名も知らぬ恩人に思いを馳せた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ