Ep3
「この先、トラと一緒に空の旅なんて出来ないですよね」
隣の女性が言った。空の旅って、そんな吞気な発想してくるとは思っていなかった。
「ないでしょうね」
正則もこんな状況に遭遇することなどこの先一生ないだろう。どこか機内も静かにはなって来ていた。
うぅーひぃーと鳴き声がしてきた。ビリが起きてしまったようだ。
「大丈夫だ。ここは安全だぞ」
ヴぇアウウと鳴き声だけが響いている。「すぐに麻酔は打てない」と声が聞こえていた。ガシャと柵が揺らされいる音もしている。ゾンビでいるかのように、静かに機内はざわめき始めた。「かわいい声」と後ろの女性が言っている。どこが可愛いのか分からない。
「起きてしまったみたいですね」
隣で冷静に落ち着いて女性が言っていて、この状況って改め何なのか不思議だった。着陸までにもう一度、麻酔を本当に打っていくれるのかどこか心配になって来た。
「ビリ、肉食べるか?」
「うわ、生肉あるげてるよ」
「いい子だ。静かにしいてくれ」
肉を食わせるとはどんな状態なんだと思えてくる。機内はどこか立ち上がって、ビリを見たいが、野次馬のように見て危険に合うのが嫌なのか、みんな冷静に座っている。今どんな状況かなど、見えないので分からないが、虎といる機内は怖さより、未知の世界感があって不思議だった。10分ほどしたら、ぐゃーぐじゃーと音がして来た。虎のイビキみたいだった。
「生肉に睡眠薬でも入れたんですかね」
「ああ、睡眠薬ですか。でも、麻酔のときはイビキなかったですよね」
「分かんないですけど、睡眠薬は寝ている状態で、麻酔は意識を失わせているかじゃないですか。」
「そんな違いっていあるんですね」
「思いつきですけど」
思いつきかもしれないが、正則は女性の話を聞いて、どこか納得してしまった。
「着陸まで、10分になります。シートベルトの着用をお願いします」
アナウンスではなく、キャビンアテンダントとは席ごとに案内していた。だんだん機体が斜めになって、着陸準備を始めていた。地上に降り立って、その直後、ぎゃんと音がして、虎が起きてしまっていたのかもしれないが、暴れることはなかった。なんの騒ぎもなく、飛行機を降りることになった。入口が、虎のいる場所を通ることになった。通る際、柵の中で、おとなしく伏せた状態で目を開いていた。虎にとっても不思議な体験だったかもしれない。




