表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/36

壊された安寧5

36話 壊された安寧5



「何で......何で、お父さんと、お母さんを、殺したの?」


 私は、男に問いかける。


「何で、ナツを殺したの?」


「何で......あなたたちは、村の人を殺したの?」


「何で?何で何で何で何で何で!!お父さんとお母さんが、村の人たちが何をしたっていうの!!」


 無意識に涙を流しながら、私は男に怒鳴り散らした。


 すると、男はこちらに笑って見せた。


「俺はな。異世界から来た、勇者なんだよ」


 ……この人は、何を言っているの?


「俺は、俺たちは、国の魔術師のやつらにこの世界に連れてこられたんだよ。正直、呼び出された時はムカついたよ。俺にだって元いた世界での暮らしがあるんだ。なのに急に呼び出して、魔族を殺せとか言い出すんだからな......」


 あまりに訳のわからない内容に、頭がついていけない。


「でも、俺は気づいちまったんだよ。この世界の素晴らしさに。全てが力で決まるこの世界の美しさに」


 美し、さ……?


「もともと俺のいた国ではな、人を殺したり暴力を振るったりしたら牢屋に入れられたんだ。誰かを好き勝手に殺し回るなんて体験、元いた世界ではとてもできないものだった」


「でも、この世界は違う。どれだけお前らを殺しまわっても、好き勝手に犯しても、責められるどころか褒美を与えられるんだぜ?俺がお前の両親を殺したことは正義であり、褒められることなんだ」


 正義?私達は何も悪いことなんてしていない。それなのに......そんな私達を殺すのが正義だって、本当に、本当にそう思ってるの......?


「なあ、嬢ちゃん。大人しく捕まってはくれねえか?俺は面倒事はしたくないんだよ。それに、大人しくしててくれるなら、命だけは助けてやるぜ?なんなら特別に、俺が個人的に匿ってやってもいい。嬢ちゃんはかなりべっぴんになりそうだからな」


 男が、不敵な笑みを浮かべる。その表情を見た瞬間、私の心は完全に決まった。


 もう……いい。こいつは、何も悪かったなんて思っちゃいない。私がここで、殺さなきゃ。


「どうだ?悪い話じゃないはずだが......」


 早く。1秒でも早く、こいつを殺す。


 私は剣を空中に浮かせ、男の方に剣先を傾けた。


「……そうか。お前の気持ちはよく分かった。その体、じっくり堪能したかったが、もういい。両親と同じように、気持ちよく首を跳ね落としてやるよ!」


 もう、言葉を交わす必要なんてない。右腕も、左腕も、右足も、左足も、全部切り落とす。一思いに首を跳ねる?私はそんな簡単にはあなたを殺さない。殺してあげない。全部、全部切り落として……


 ぐちゃぐちゃにしてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ