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  作者: ひじきとコロッケ
魔族領へ向けて
50/55

ティアと合流

「街が見えてきたよ」

「おー」

「じゃ、ちょっと休憩するか」


 ここまでの感覚では塚本が「見えてきた」と言ってから半日ほどかかる。途中でゴブリンの巣を二十ほど、オークの巣を十ほど潰したのだが、いくつかかなりの規模の巣になっていて、全滅させるべく逃げ惑う魔物を追い回すのに思ったよりも時間を食ってしまい、予定よりも遅い到着になってしまった。


「アレだ。俺たちの欠点は……連携するつもりがないって事だろうな」

「そりゃ、どいつもこいつも個人でオークロードくらいなら倒せるレベルだからな。森にいる魔物相手で協力しようって考えも薄れるよな」

「まあ、さすがに三人でゴブリンを追い回すのはちょっと時間の無駄だと気付いたけど」

「つーか、三人で追い回すって、ゴブリンにとっては悪夢以外の何物でも無いだろ」

「言えてる」

「そうだな。ゴブリンにも表情があるんだって、ちょっと感心したし」

「いや、お前ら趣味悪すぎだろ」

「さすがにアレは引いたわ」

「うんうん、アレは無いと思う」

「え?何?なんかマズかった……?」

「人としてどうかと思うわ」

「うん、ちょっとお前の見方変えた方が良いと思った」

「えー」


 数名、人格否定が入ったものの、どうにかミガルには到着した。



「「「ミガルよ!私は帰ってきた!」」」


 稲垣、中山、松島がビシッとポーズを決める。


「馬鹿だわ」

「馬鹿ね」

「三馬鹿」

「他人のフリしましょう」

「賛成」


 スタスタと歩いて行く女性陣。


「……俺、泣いていい?」

「心配しなくても、僕は理解したよ?」

「塚本!」

「って、抱き合う趣味はないぞ!」


 わちゃわちゃやっているのを尻目に幹隆も先行する女性陣を追う。


「何やってんだか……」

「はは……でも、やっと着いたんだし、あのくらいはいいんじゃ無いか?」

「それはわかるけど、アレの仲間と思われるのがちょっとね……」

「そうねぇ」

「……見た目だけなら悪くないのにね」


 後ろから「待ってくれ」と走ってくるが、確かにちょっとまわりの視線が痛いか。


「ところで、どこに行けばいいんだっけ?」

「冒険者ギルドじゃないわよね」

「ああ。ギルドじゃ話せないことを話すことになるかも知れないからって、宿で落ち合うことになってる」

「どこなの?」

「名前は聞いてるんだが、場所は知らない。ちょっと聞いてくる」

「あ、私も行くよ」


 そう言って幹隆が近くの雑貨屋に向かう。こう言うのは地元の人間に聞くのが一番だ。茜が着いてきた理由は簡単。三馬鹿の仲間と思われたくないだけだ。




「ここ?」

「うん、間違いない。ここ」


 大通りから一本入ってちょっと静かなとおりに面した一軒の宿。高級でもなく、かといって安宿でもなく。おまけに通りに宿がずらりと並んでいて、冒険者の出入りも多いので、たとえ誰かに目撃されたとしてもすぐに宿が特定されることは無さそうな感じである。


「よし、入るぞ」


 ギィとドアを開けて中に。この辺りの宿で良くありがちな酒場兼食堂兼宿屋といった感じで、時間帯のせいもあって酒場兼食堂はかなり賑わっている。


「いらっしゃい。食事かい?泊まりかい?部屋なら空いてるよ」

「えっと……」

「遅かったわね」


 幹隆が一瞬返答に口ごもったところで、微妙な感想を言われた。

 とりあえず部屋を取ると告げると、食堂の奥の席へ。これだけの人数が一度に座れるテーブルはそこしかない。




「ティアさんどうも。なんとか合流出来ましたね」

「そうね……私の指示が的確だったからよ。感謝しなさい」

「いや、何か意味わかんないんですけど」

「それはこっちの台詞よ」

「え?」

「獣人とかハーフエルフって、妊娠期間が短いのかしら?こんなに人数が増えて」

「いや、子供じゃないし!」

「そう?」

「って言うか、一緒に城にいた連中ですよ」

「そう言われると見覚えがあるような、無いような」

「覚えておいて欲しかったッス」

「ちょっと涙が出そう」

「男子たち鬱陶しいわよ」

「そうよそうよ」


 ティアの表情が厳しくなる。


「すみません、色々あって一緒に行動してました」

「それはもう良いけど、そっちの……茜をなんとかしなさい」

「え?」


 慌てて茜の方を振り向く。


「ふへへへ……ミキくんとの子供かぁ……くふふ……はっ、でもでも……ミキくんに産んでもらうってのもそれはそれでぇ……」

「茜!戻ってこい!」


 何をどうしたらそう言う考えに至るんだ?!




「ま、そっちの事情はわかったわ」

「どうも」

「それにしても……こんなに早くCランク到達とは……予想はしてたけどさすがね」

「へへ」

「それほどでも」

「そっちもDランク。これなら動きやすいわね」

「へへ」

「頑張ったからな」


 それでは、とティアが本題に入る。


「まず、これからの予定ですが……さすがに少し懐が寂しいのでこの街である程度稼ぎます」

「どのくらいですか?」

「そうですね……」


 ティアの答えに幹隆がそっと革袋を差し出す。ティアが(いぶか)しげにそれを開く。


「倍以上ですか」

「それでも一部です」

「はあ……相変わらず規格外と言いますか……まあ良いです。話が早くて助かります」


 それでは、とさらにティアが続ける。

 まず、ここから北東方向にある街へ向かう。そこから北へ。そして西へ……


「前回召喚された勇者候補の辿(たど)ったルートですか」

「ええ。ある程度詳細なルートは(つか)んでいますし、実際に通ったらしいという情報も押さえています。最終的には魔族領に入ったらしいとも」

「らしい?」

「さすがに魔族領の情報は簡単には得られません」


 人間の間では魔族領に入ったら無事に帰ってくるのは難しいとされている。稼ぎに貪欲な商人すら、どんなに良いもうけ話があるとしても魔族領には行かない。だから情報は無い。


「一番良いのは、途中で会えること、ですね」

「魔族領から戻ってきたところでばったり、と言うパターン?」

「ええ。そして、逆に言うと……このルート以外で見つけるのは難しいでしょう」


 そりゃそうだ。携帯もネットもない世界でどこにいるかさえもわからない人物を探し出すなんて無謀にも程がある。


「そう言うことなら明日、早くに出発だな」

「何を言ってるんですか?」

「え?」

「明日と明後日は準備に充てます」

「準備?」

「でも、俺たち、荷物は全部持ち歩いてるぜ」

「食べるものを少し買い足せばいつでも行けると思うけど」

「はあ……」


 ティアがこめかみをトントンと叩く。


「説明が足りなかったことをお詫びします。この先……特に次の街までの間は今のその格好では少しマズいです」

「マズいですか」

「ええ。簡単に言えば……砂漠です」

「うわ」

「狐火の収納でしたか、荷物を大量に運べるならなおのこと、しっかり準備して確実に砂漠を越えられるようにしましょう」

「「「はい」」」


 全員良い返事だ。


「ところで……お二人はどのくらいのレベルになったのでしょうか?」

「え?」

「う……」


 村田幹隆

 狐巫女 レベル814 (6475/8140)

 HP 41350/41350

 MP 41350/41350

 STR 4135

 INT 4135

 AGI 4135

 DEX 4135

 VIT 4135

 LUC 4135


 川合茜

 ハーフエルフ・斥候 レベル361 (280113/361000)

 HP 5593/5593

 MP 6099/6099

 STR  70

 INT  86

 AGI 235

 DEX 162

 VIT  49

 LUC  80


「ぷひっ」

「「「?!」」」

「今、変な声が出る寸前でした」


 いや、出てたよ……と全員が見つめるが、


「なんて言うか……もうお二人が魔王でいいんじゃ無いかと思い始めてます」

「あははは……」

ちょこっとだけ整合性を取るために修正しました……

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― 新着の感想 ―
[一言] 他は兎も角、ミキくんは砂漠を裸で延々と彷徨えるレベルなんじゃ無いかと思う 砂漠限定でフェネック巫女に改名しよう
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