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  作者: ひじきとコロッケ
ミガル王国
48/55

ランクアップ完了

「外へ!」


 さすがに建物が崩れると脱出が面倒になるので、慌てて部屋を飛び出すと、幹隆が開けた穴に飛び込んで庭へ転がり出る。エドガーもいちいち転がっている辺り、付き合いが良いというか何というか。


「貴様ら……何者だ?」


 ノソリ、とそいつが唐突に目の前数メートルに現れた。骨と皮だけの死体がぼろきれを纏ったアンデッドだ。


「えーと……アレだ、リッチって奴?」

「だねぇ……」

「と言うことは……」


 そこら中の地面からわらわらと骨格標本やら腐った死体が湧いてくる。数が多すぎて数えていられないが、まだ地面の下にモゾモゾいるようなので三桁に届くかも知れない。


「お前さ、ここには誰もいなかったって言ってなかったっけ?」

「少なくとも俺は知らん!」

「はあ……ギルドの依頼にあったのって、これだよな?」

「そだね」

「ギルド……依頼……?貴様ら、我が安寧の地を脅かしに来たと言うのか?」


 ゆらり、とこちらを向いたリッチが問いかけてくる。


「なんか言い回しが仰々しくて鬱陶しいが、そうだよ。お前をぶっ飛ばして報酬をもらうんだよ」

「愚かな……この我に(かな)うものなど」

「あー、そういうの良いから、一つだけ答えろ」

「む?」

「お前、この屋敷の持ち主の貴族だな?」

「いかにも」

「よし、ぶっ飛ばすのにためらいが無くなった。行くぜ!」


 棍を振りかざし、ひと飛びでリッチに迫る幹隆。対して避けようともしないリッチ。


「余裕かましてんのも今のうちだ、ぜっ!」


 ドゴン!とリッチが吹き飛び、屋敷の壁にめり込む。

 が、


「ククク……その程度か」

「あれ?」

「生きてる……いや、リッチだから既に死んでるけど……原形を保ってる……」

「ミキくん……こんなことって」

「ああ。初めてだ。なかなか手応えがありそうだ」


 唇をひとなめし、改めて棍を振り下ろす。


 ドンッと小さなクレーターを作るほどの衝撃にもかかわらず、リッチは耐えきった。


「なかなか強いようだが、その程度か?」

「うわ……俺の攻撃力、低すぎ?」

「ミキくん、ネタがちょっと古い」


 ちょっとどころか、だいぶ古い。


「リッチって、ここまで頑丈だっけ?」

「違うぞ!まわりを見ろ!」

「え?」


 エドガーの声に思わず見回すが、わらわらとアンデッドが這い出してきているだけである。


「まわりに注意しながらもう一発殴ってみろ」

「あ、ああ」


 ドゴンッ!


「あ」

「そう言うことか」


 幹隆の棍が命中した瞬間、周囲のアンデッドが数十体単位で崩れ落ちていった。


「コイツ、自分の受けたダメージをまわりに移していたのか……セコい」

「なっ!セコいだと?!」

「そりゃそうだろ。テメエで防ぎきれないからまわりに肩代わりさせるなんて、小悪党どころか、街のチンピラ以下だぞ?」

「ぬぬぬ……」


 そんな問答の間にも地面の下から追加が湧いてきている。一体どれだけいるのやら。

 何度も殴ればいずれ尽きるだろうが……


「茜!」

「ほい!」

「面倒くさいから一気に片付けるぞ!」

「はーい」

「狐火の火球!火球!火球!火球!火球!火球!」


 周囲に火の玉をいくつも放出し、


「逃げろ!」

「おう!」

「え?俺も逃げた方が良い?」

「好きにしろ!」


 後ろで「え?え?」とうろたえているリッチを残し、屋敷の塀を跳び越える。エドガーも律儀に飛び越えようとしてうまく行かず塀の鉄柵を必死に登っている。


「そろそろだぞ」

「え?ちょ!待って」

「いや、お前……柵ぐらいすり抜けられるんじゃないか?」

「あ」

「あ、じゃねえよ」


 そんなやりとりの間に火球が着弾し、リッチを中心に屋敷全体が爆音と共に崩壊した。




「さすがに大丈夫かな?」


 念のためにさらに追加で火球をぶち込み、瓦礫も細かく粉砕。撃ち漏らしが無いか念入りに確認する。


「そうか、ここから地下に入れたんだな」

「あらかじめ用意しておいたのかな」

「だとしたら、すげえ執念だと思う」

「だね」


 地下へ通じる階段を見つけ、一応降りてみるが……


「何もないな」

「ゴミばっか」

「普通こういうのって宝とか溜め込んでると思うんだけどな」

「ほら、取り潰しになったって言うから、没収されたんじゃない?」

「だろうなぁ……」


 念のために地下室――それっぽく大きな棺とかが置かれていて雰囲気だけはバッチリだったが――に火球を叩き込み、階段も崩して埋めてしまう。




 パンパン、と土埃を払い落とし、アンデッドから回収した魔石を詰め込んだバッグを背負う二人。


「これで依頼は完了、と」

「帰ろう」

「うん。だがその前に……エドガー、アンタはどうするんだ?」

「俺?」

「ああ。ここはもうこんなになっちゃったし、どうするんだ?」

「そうだな。レクサムに行ってみるよ」

「レクサムに?」

「この状態なら、こっそり忍び込むのも出来るだろうから、現状を色々調べてみる。可能なら二度と勇者召喚なんて出来ないようにしたいが……無理そうならまたその時に考えるさ」

「ふーん……ああ、一応言っておくけど」

「何だ?」

「城にまだ俺たちと一緒に召喚された連中がわんさか残ってるから」

「そりゃ百四十人も召喚すりゃ、残ってるだろうなぁ」

「聖者とかいるから、消されないように気をつけろよ」

「わかった。気をつけるよ」

「それじゃ……ゴーストに言うのも何だけど、元気でな」

「おう」




 ランプルへ向けて歩……いや、走り出す二人。余計な時間を食ったが、今から走ればギリギリ日が沈む前には街へ着くだろう。


「ねえ、ミキくん」

「ん?」

「何か、ゴーストに対するイメージがだいぶ変わったんだけど」

「俺も」

「あと……勇者召喚」

「生け贄か……全くとんでもない連中だよな」

「どうしようか」

「どうするも何も、まずはティアさんと合流。でもその前に塚本たちがDランクに上がらないと移動しづらいな」

「手伝いに行っちゃうとか?」

「さすがに大丈夫だろ。そこらの一流冒険者よりも強いんだぜ、あいつら」

「そう言えばそうだね」

「Dランクに上がるのなんて、時間の問題だろ」


 実際あと数日でDランクになるのは間違いないだろうというペースらしいし。


「さ、急ごうぜ。暗くなると面倒だ」

「うん」




「あの距離を一日で往復するだけで無く、リッチの討伐ですか……」


 ニムが二人の報告を聞きながら、何度目かのため息をつく。この二人が虚偽報告をするなんて事は無いだろうし、目の前に積み上げられた魔石が何よりの証拠だ。


「えっと……こちらが依頼の報酬になります。魔石の買い取りについては計算して明日お渡しします。それとランクに関しては上に報告しておきますので、問題なく処理されると思います」

「わかりました」

「はい、ではお疲れ様でした」

「どうも~」


 依頼を出した村がそれほど裕福でもないので、報酬額はそれほど高くは無いが、Cランク確定になれば良いと考えているので何も問題は無いと、二人で宿に戻る。




「お、帰ってきたか」

「お帰り~」

「あ、皆も帰ってきてたんだ。ただいま~」


 塚本たちも三日間ほどかけてあちこち回ってきたらしく、打ち上げお祝いムードで盛り上がっていた。


「俺たち、とうとうDランクになったぜ!」

「お、やったじゃん」

「と言うことで、カンパーイ」


 乾杯と言いながらも酒が一切並んでいないあたり、真面目な高校生たちだ。


「俺たちもCランクになったし、いよいよか」

「そうだな」


 ティアと合流予定の街はここからさらに北。歩いて行くと二十日ほどかかるらしい。


「馬車なら十日で着くらしいぞ」

「なら馬車、と言いたいが……」

「ん?」

「走ればよくね?」

「それな!」


 全員が常人離れしたスペックになっているので、走れば馬車より早く着きそうだ。


「まあ、色々準備は必要だな。道とか全然わからんし」

「じゃあ、明日一日かけて準備して、明後日から移動開始でいいか?」

「おう」

「それじゃ今夜は!」

「飲んで食べて騒ぐぜ!」

「迷惑にならない程度にな!」


 酒が一滴も入ってないのにこの盛り上がり。そして細かいところでマナーを守る。妙な連中だな、と宿の主人夫婦が不思議そうに見ているが、勿論そんな視線は……気になります。


「あの!何か御用ですか?」

「支払いなら大丈夫ですよ」

「そうそう、頑張って稼いだから~」

「あはははは」


 あの連中なら踏み倒すことは無いだろうと思っているが、妙に気配りの出来る冒険者と言うことで、まわりからの評価は「変な連中」であった。

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