大吾とアジト②
●前回のあらすじ●
マールちゃんは文無し一歩手前で可愛かった。
古代遺跡レゾナンスよりミスニーハの街に帰って来た翌朝、俺たち三つ輪のクローバーは領主家に伺っていた。
この広いミスニーハの街に俺たちが住めるような空き家がないか、あったら買いたいという旨を伝えるためだ。ちなみにローンで。
メアも一緒に行こうとしてたのだが、何やら騎士の人に捕まって話してるうちに『ちょっとだけ失礼致します』と言い残しどこかへ行ってしまった。
ランプの幼女のご飯である魔力水の提供が心配されたけど今現在は起きて俺のももの上でルンルン跨っているのでランプに魔力水を入れる事が出来てます。
あっ。ところで、この幼女のお名前が決まりました。
太古の昔からあるアーティファクトっぽいので名前があるのかと思ったが、名前を聞いても可愛く『ほぇ~?』するだけだったので命名させてもらいました。
この幼女、名を『シオン』と言います。
マールちゃんのスキル名から頂きました。
何者も侵略できない圧倒的で神秘的な天使であるこの子にぴったりだと思うの。
そんな訳でこれからシオン共々よろしくお願いします。
で。
シオンを入れた俺たち五人と一匹、そしてもしかしたらメアも入れての六人で暮らせる家で、しかも空き家を探しています。出来れば安価で。
「注文が多いですの!」
「悪いなアンナ。もう二回すっ転んだ傷は治ったのか?」
「二回目はあなたが急に名前を呼ぶからビックリして転んだんですの! それにわたくしはこう見えても魔術師ですわ。回復魔法くらいは使えますの!」
はい。
領主の家って事でアンナと話し合っています。
正直俺たちみたいな無名のクランなんか門前払いされるかと思ったけど、双壁の戦乙女のヴィヴィの名は偉大であった。
スズランも有名っちゃ有名だけど綺麗可愛いの有名だし領主家のような人たちにはヴィヴィの方が名が通っているようですんなり入れてもらえた。
しかし現領主であるアンナ父が席を外しているらしく娘のアンナが代行で業務に当たっているらしい。
俺としては初対面の親父よりもアンナの方が多少無理を言っても聞いてくれそうなのでラッキーだったけど。
このラッキーはやっぱりマールちゃんのおかげ。あとでだんだん焼き買ってあげようね。マールちゃん100コーンしかないから買えないもんね。
「ここなんかどうですの? 築30年二階建てバス・トイレ別の4LDK、庭付き一戸建て4万5000パルフェ(4500万円)」
「高すぎワロタ」
「王都までとは言わずもミスニーハも大きな街ですわ。そこであなたのいう条件で探すとなるとこれくらいが相場ですわよ」
「マジすか」
完全にミスニーハの空き家事情を舐めていた。
金を借りる云々の前に高過ぎて一般冒険者の俺は勿論、マールもスズランも口ポッカーン開けて可愛かった。ヴィヴィだけはふーん、って感じだった。
「あっ。もう一個希望する間取り以上の物件がございましたわ」
「以上って五万も六万もする物件紹介されても手が出せないですの」
「ですのって言うんじゃないですの! これは売家、と言っていいのか微妙な所ですが庭付きで本館と住居用の別館が平屋で八部屋ありますわ」
「旅館かな?」
でなければどんな豪邸だよ、と。
本館って。別館て。八部屋って!
だが俺の言葉にアンナはフルフルと首を振った。
「いいえ。教会ですの」
マールとスズランのポッカーン顔に俺とヴィヴィも加わった。
全員同じ顔になったのでアンナは耐えきれず紅茶を吹き出した。
「教会って…、あの廃教会?」
「どの廃教会かは存じないですが、恐らくその廃教会ですの」
マジかよ。
確かに廃教会って言えばサンルナ兄妹がお世話になった場所でもあるし、俺たちクランにも馴染みのある所だけど教会ってそもそも売りに出されるのか?
崇拝する神様に怒られない? 大丈夫?
「国や領主家で建てた教会ではなく、個人の豪商が建てたものなのでその本人が売ると言えば売れますの」
「いや、ますのって言われてもな。そもそもおいくら万パルフェですの? さっきも言ったけど五万も六万もする物件は今の俺じゃ二世に迷惑がかかるレベル」
「ですの言うなですの! …んん! この教会、実はいわく付きで超格安で売りに出されてるんですの」
「パスで」
「気になるいわく付きの内容はと言うと」
「あ、あれ? アンナちゃん話聞いてる? 俺パスって言ったよね?」
嫌だよいくら安くてもいわく付きの物件なんて。
夜中勝手に動き出す人形とか近くにあった墓地に結界張ったらそこに住む霊が移って来たとか怖すぎるじゃねーか。
もしそんな事になったら俺は夜中にマールちゃんと一緒にトイレに行くよ。
先に言っておくけど俺はトイレに入る時は目を瞑らないでガン見するからね。
「‶教会には黒い翼を持つ悪魔が住み着いているらしい″ですわ」
一瞬でピタァと動きが止まる俺たち。
黒い翼を持つ悪魔。
俺たちが『黒い霧の正体を探れ』クエストで見たアイツだ。
アイツが、教会に住んでいる?
ちょっと前までサンやルナがいた筈なのにそんな話聞いた事ないぞ。
でもそんな事はどうでもいい。
本当にアイツが教会にいるのなら俺は絶対に教会に近づかない、というかマールを近づけさせないだけだ。
この前のようにマールが倒れでもしたら俺は今度こそ心が潰れるからである。
「お値段はおいくら万パルフェなんですか?」
しかし俺の考えとは裏腹にそうアンナに問うマール。
「マールちゃんダメだって。これはダメ。ダメ絶対」
「大吾さん。大吾さんはわたしを心配してそう言ってくれるのはとても嬉しいんですけど、今はわたしよりこの子に早く安全な場所を作ってあげないと」
「安全な場所を作るより先にマールがダウンしてしまったらご飯作ってあげれなくなるんだぞ」
「わたしは大丈夫です。根拠はないですけど、皆さんと一緒なら。今度こそ」
ジッと目を逸らさないで話すマール。
その目は真剣そのもので、カップラーメンの出来上がりを知らせる砂時計を見るマールちゃんの目そっくりだ。
これは相当本気も本気なのかもしれない。
フルもっふ族であるマールちゃんの食欲と並ぶくらいだから。
「豪商の提示では事故物件のような教会を早く手放したいらしいので一万パルフェ(1000万円)で売りに出してますの」
「一万!? あのデカさでその値段じゃ破格だけどマジで事故物件だな…」
「街の皆様も黒い翼を持つ悪魔の事は気味悪がって手を出そうとしないんですの。だからこその価格ですわ」
一万パルフェ。
仮に現クランメンバーである俺たち四人が金を出し合うとなると一人頭2500パルフェ(250万円)。
今すぐは無理でも十分手の届く金額。
だが問題は黒い翼を持つ悪魔。
アイツが住みついている以上マールがまた謎の黒い霧にあてられてしまう危険があるので出来れば他に移り住んでいただきたい。
しかしそんな都合よく移動したり話を聞いてくれる相手だろうか?
万一の時は戦闘にだって発展するかもしれない。
「もしいわく付きの元凶に食ってかかろうと言うのなら、わたくしがクエストを依頼しますわよ」
「え? どういう事?」
「仮に先に黒い翼を持つ悪魔の問題を解決したのが豪商に知られるとその教会はどうなると思いますの」
「……あー」
値段が跳ね上がるよな、やっぱり。
そうなる前に領主家とギルドに俺たちはその教会を買い取る意思を見せ、その為に黒い翼の奴の問題を解決するクエストを受けていると周知されるのか。
そうすればいくら権力がある豪商であっても有無を言わさず値を張り上げにくくなるし、自らのイメージも悪くなるからな。
「大吾さん、受けましょう。わたしも一生懸命頑張りますから!」
「ダイゴ! お金の事は心配しないでいいよ! 一万パルフェとりあえず払っておくから!」
自分の胸の前で可愛くきゅっと握り拳をつくるマールとヴィヴィ可愛い。…って、そうじゃねぇ。
俺だってこの条件なら多少は無理をしてもいいかなと思う。思うけど!
でも相手はマールを弱らせる黒い霧を扱うアイツなんだ。
それが俺がどうしても首を縦に振れない理由でもある。
マールは一生懸命やると言う。
しかしそう言った手前、前回よりも更に無理をしてしまうかもしれない。
シオンを守る母性に目覚めたマールちゃんなら尚更。
どうしたらいいんだ、どうしたら。
「あの…、ちょっといいかしら?」
ここまで大人しくしていたスズランが控え目に挙手をする。
スズランのちっぱいと同じくらい控え目な挙手だった可愛い。
「何だ? スズラン」
「えっと、つまりは私たちは教会を買い取るには吝かではない。って事よね?」
「そうだ」
「でもその教会には以前私たちが見た黒い翼を持つ悪魔が住み着いているかもしれないし危険なので超破格で売りに出されているけど皆んな手を出さない、って事よね?」
「そうだが? スズラン何を言って」
「だったらまーるの『神聖域』で拒絶すればよくないかしら? 結界範囲は知らないけど、教会にいれなくなったら他に場所を移すと思うんだけど」
「…スズラン、お前…天才か?」
「もっと言って。だいご」
「スズランちゃんは可愛いし頭も切れる」
「もっと」
「スズランちゃんのホカホカおパンツ今すぐ欲しい」
「大吾さん?」
はっ。つい本音が。
スズランは何かもぞもぞしてるし、マールやヴィヴィからはジト目を向けられている可愛い。
俺のももの上のシオンはと言うと可愛く『めっ!』って怒って来た。
可愛かったのでよしよししたら一瞬で笑みになってめっちゃ可愛かった。
バニラは安定の俺の裾齧ってた。
っと、冗談はここまでにして俺はアンナと向かい合い真剣なトーンで言い放った。
「アンナ、この廃教会を買い取りたい。それに伴いクエストの依頼を頼む」
「畏まったですの。このアンナの名にかけて、あなたと豪商の仲介人になりますわ」
俺の言葉を受けアンナはクエスト依頼書に筆を走らせる。
そして出来上がった依頼書。
アンナはその依頼書をスズランへ。
ギルドを介すことで第三者の目があると相手への不正抑止効果があるし、そのギルド受付嬢であるスズランが同じクランにいると知ってもらうため。
スズランはアンナから受け取ったクエスト依頼書に目を通すと『確かに』と言ってサインをした。
どんな依頼内容なのかと言うと。
【いわく付きの廃教会を調査せよ】
依頼主:アンナ
適性ランク:―
エリア:ミスニーハ南地区教会
報酬:30パルフェ
内容:廃教会の現状把握
依頼主コメント:実は冒険者ランクBになりましたの
「この報酬30パルフェっていうのは?」
「まぁ、もしいわく付きの問題を解決できた時にはあの教会にあなた達が住むわけですので…、新居祝いみたいなものですわ」
「マジかよアンナ。達成前からありがとな」
「どういたしましてですの」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「制限沈黙! ですの!」
「ぐあああああああああああああっ!!!」
クエストの内容を確認してたらいきなりアンナの個人魔法喰らった。
なん―――! いきなりなん―――! …あぁ! また―――制限された! ―――言えない!
「もっと他に言う事があるんじゃないですの!?」
「悪かったって。Bランクおめでとう、アンナ。もしこの問題を解決出来たら教会でお祝いしよう」
「きょ、教会でお祝いですの!?」
「え? うん。嫌なら普通のお店にするけど」
「べ、別に嫌とは言ってないですの」
期待しないで待ってますわ、と。
アンナちゃんアホの子だけど素直ないい子―――。―――言えない―――。
「よし。じゃあまず明るいうちに廃教会に行ってマールの結界張っちゃおう。その後にちょっと分担でやってもらいたい事があるんだ」
―――
「神聖域! ‶翼を持つ人間、魔族を遮断します″!」
はい。
そんな訳でやって来ました廃教会。
そして早速マールちゃんの新スキルの神聖域を張ってもらった。
神聖域の消費MPは聖域と同じ50だが、消費MPを多くすれば結界の範囲も大きく出来るっぽい。
なのでマールには一応教会全体を包めるように結界を張ってもらった。
ありがとうマールちゃん。あとでだんだん焼き買ってあげようね。
で。
その結界の遮断条件が『翼を持つ人間、魔族を遮断する』というもの。
黒い、と付け加えなかったのは黒という色がどこまでの範囲を指すのか分からないし、だったら翼を持つって条件にすればいいかと考えた結果。
次に人間、魔族と限定したのは『翼を持つ者を遮断する』という条件ではマールが該当してしまってスキルが使用できないからである。
結界展開時にその結界内に遮断条件の何かがあるとスキルを使用出来ない。
この辺りは聖域と同じだな。
今は天使の羽を隠してるマールだけど、隠してるだけで無くなったわけではないので翼を持つ者として対象になってしまっているらしい。
しかしこれならヴィヴィが前に言っていた鳥人族で翼を隠している魔族にも効果がありそうなので良かったと言えば良かったのかもしれない。
だがマールが教会の中に入れないのは問題なので遮断対象を『者』から『人間、魔族』に変えたのだ。
ぶっちゃけ言葉を変えただけで意味そのものは変わってないんだけど、神族のマールが対象外になって尚且つ他の奴には効果がある言い方ってこれくらいしか思い浮かばなかった。
でも言葉の綾というかスキルを騙すというか無事結界も張れたので成功したのだろう。
スキルがマールはちっぱい可愛い神族だと判断したのだ。
で。
そんなスキルには半永久的な結界を展開し続ける代わりに媒介が必要とされる。
結界と言えば媒介だからね。
ファンタジーものではあるあるね。
「おぉ…、何かほんのり光っててより神秘的なちっぱい像になったな…」
「そうだねダイゴ。綺麗なちっちゃい像になったね」
「これは神々しいわね。神々しいちっぱい像ね」
「皆してちっぱいちっぱい言わないで下さい! と言ったらわたしの事を言ってるんじゃないよって言うと思いますけど!」
ほっぺぷっくーして怒るマールちゃんマジ神々しいちっぱい像そっくり可愛い。
でもマールの事を言ってるんじゃないよ。あっ。言っちゃった。
マールちゃんは俺の事よくわかってるね。結婚しようね。
もうお分かりと思うが、俺たちは神聖域の媒介をイチカさん作のマールモデルのちっぱい神像にした。
これなら教会という場所にも相まってぴったりじゃないかと思ったからね。予想通りね。
「でもこんな追い出すみたいな事をやっていいんですか?」
少し可哀想です、としゅんするマールちゃんマジ優しさの塊。
確かに廃教会だったわけだしここに住んでるって事はサンやルナみたいに何かしらの問題を抱えてるって可能性もあるからな。
この前にしたって黒い霧をアイツの翼が吸収してるのを見ただけで俺たちに直接手を出して来たわけじゃないし、一概に悪い奴と決めつけるのは早計なのかもしれない。
「話し合いで解決できるならそれに越した事はないけど、万が一に備えての予防みたいなものだよ」
一応は俺たちが世帯主になるわけだからね、と。
もしこちらに被害を出さないのであればこれだけ広い教会なのでいくらでも使ってくれて構わない。
この教会を買うと決めた時からマール教の総本山にしようと話をしていたからである。
九割くらい忘れてたけど、俺やヴィヴィの本来の目的は『皆が幸せに暮らせる世界をつくる』こと。
それにはちっぱい天使マールちゃんを祖としたマール教が欠かせないので、その教会予定であるここに入場規制してしまうとあまりよろしくない、と大聖堂自体は出入り自由としたのだ。
元に奉られてた神様も人がいっぱい来るようになって何事かと思うかもしれないけど許して下さい。
あっ。入場規制しないって言っても住居用の別館はダメよ?
そこでは俺とマールちゃんはイチャコラする場所であってとても信者の方々にお見せできるものじゃないからね。
ぶっちゃけこの教会と別館は建物自体は分かれているので黒い翼を持つアイツがいても他の人に迷惑をかけないのであれば全然いいんだけどね。
さっきも結界を別館込みの教会の敷地全体にしてもらったけど、住居用の別館だけの神聖域でも全然良かった気がする。
シオンのランプもそこで守られるしね。
でもマール教の総本山の教会で問題を起こされるとマールちゃんが悲しむのでやっぱり今の規模の結界でいいか。
全ては俺たちとマールちゃんの未来のために!
「話し合いも何も結界を張ってしまったらもう中に入れないんじゃないかしら?」
「確かにね。結界内にいたんじゃスキル使えなかったわけだし、使えたって事は今は外に出てるって事だもんね」
うーんする(可愛い)スズランとヴィヴィ。
その事については何の問題もありませんのでご安心ください。
「俺の経験上、結界で遮られてて中に入れない時に、その中に魅力的なものがあれば顔ぺったーくっつけて暫く動かないからその時が交渉チャンスだな」
俺の異世界生活初夜でのマールちゃんの結界で遮断された体験談だから間違いない。
それにシルヴェストリの甘味処でも中に入れないバニラは店の扉に顔ぺったーくっつけて中を見てたし。
「今時そんなショーウィンドウの中にあるトランペットに憧れる少年みたいな人は大吾さんくらいですよ」
「俺の両手がショーウィンドウだとする」
ぱ、とマールの目の前で両手を広げる俺。
「で俺の頭が超巨大シュークリームだとする。マールはどうする?」
と言った瞬間ビタンッ! と俺の手に衝撃が走った。
マールが突っ込んで来たのだ。
マールちゃんのぷにぷにほっぺは両手にすっぽり収まるサイズ可愛い。
「がるるるるる…」
そして気付けばマールちゃんがビーストモード。
実際食べ物がなくても想像だけでこのモードになれるマールちゃんマジ食の女神様のようなちっぱい天使。
でも今日はやる事がいっぱいあるので正気に戻ってもらいます。
そんな訳でほっぺぷに。)3(。
「ふぁっ」
「つまりはそういう事だよマールちゃん。わかったかな?」
「むふ、むふ」
俺の問いにコクコク頷くマールちゃん可愛すぎかよ。
「じゃあ結界も張ったしやる事やっちゃうか」
「ダイゴ、さっきもそんな事言ってたけど一体何をするの?」
「ヴィヴィには‶とある人物″を監視していてもらいたい。得意だろ?」
「得意ってなに!」
シャッ! っと一瞬で背後を取られる。
は、はえぇ…。
相手はパンサー。俺はガゼル。勝ち目はない、けど俺が欲しいのはヴィヴィちゃんのこの能力。
でもあくまで監視であって背中に抱きついちゃダメよ。
そうしたらヴィヴィのこのちっぱい感触を味わってしまうから。
それはダメ。ダメったらダメ。
「監視って大吾さんは黒い翼の方が誰だか知ってるんですか?」
「そっちは全然分からないけど、行きそうな場所の見当は付いている」
俺の予想が正しければ、と付け加えて。
「凄いじゃないですか大吾さん! 小さいお胸を見てお顔を見るに堪えないくらいふにゃふにゃにしてただけじゃなかったんですね!」
「凄いじゃんダイゴ! あといい匂い」
「だいごの頭の中に考える脳が入ってるなんて驚きだわ。ちっぱいか巨乳かだけを判断する変態星人だと思っていたのに」
「メアがいないから抉る回復抉るで心が元に戻らない」
マールとスズランは俺の心をクラッシュさせるからね。
ヴィヴィとメアはそんな俺を癒してくれるけど今はヴィヴィしかいないのでクラッシュしっぱなしですわ。
「で、だいご。私はどうするのかしら? 子作り?」
「そんな訳あるかよ。スズランはマールと一緒にサンとルナに話を聞いて来てもらいたい。二人でここに住んでた頃、俺たちの他に誰か来たのかとか何か変わった事が起きなかったかとか」
「大吾さんは何をするんですか?」
「俺は教会内に手がかりかないか探すよ。手入れされてないからさすがに埃っぽいし色々どかしての力仕事だからこっちは俺がやるよ」
「怪我しないで下さいね、大吾さん」
「大丈夫だよ。あっ。バニラはマールたちが連れて行ってくれ。サンとルナも会いたいだろうし」
「まかせて」
「あとはシオンだけど」
じっと足元を見る俺たち。
そこにはバニラを抱いてハムハムしてるシオンがおる。
お腹減ったのかな? 今、魔力水あげるからね。
「一番安全なのはランプに戻ってもらってヴィヴィに持っててもらう事だけど、ヴィヴィは監視役なのでそこに急ににゅっと出てこられるとな。かと言って街行くマールたちに持っててもらうのも危険だし、ここで俺と一緒にいるのも危険な気がするし」
今の結界条件は『窃盗を目的とした者の遮断』ではなくて『翼を持つ人間、魔族の遮断』だからね。
この廃教会は人目に付かないし、もし尾行でもされてたら一発で顔を『*』にされてその隙に持って行かれてしまう。俺はなんて無力なんだろう。
「じゃあ皆さんがまた集まるまでは結界の条件を窃盗を目的とした者の遮断にしておきましょう。そうすれば大吾さんもシオンちゃんも安全ですし!」
「そうしてくれると助かるよ。ありがとな、マール」
でも今度は黒い翼のやつが入ってくる可能性もあるが、せっかくのマールちゃんからの提案なので俺は受け入れます。
俺はバニラにハムハムしてるシオンを抱っこしてよしよしする。
「えへ♡ えへ♡」
シオンはご機嫌です。
よしよしすると両手両足をパタパタさせるの。
可愛いのぅ可愛いのぅ。
ちなみにシオンはルナよりも更に小さく幼く見える。
ランプ自体が何年前からあるのか分からないけど、見た目は幼女も幼女、幼稚園児かそれよりも幼く見える。
見た目は幼女、頭脳も幼女、でも力は魔神、だと思う。まだ見た事ないけど。
そんな訳で俺たちは順番にランプに魔力を注ぎ込んでシオンに飲ませた。
メアが事前に魔力を入れていてくれたおかげでシオンも美味しそうにコクコク飲んでいる。
そういえばメアはいつ帰ってくるのだろうか?
まぁ女の子のちょっとは男のいっぱいだから帰ってきたら今回の話をしよう。
俺たちはシオンが飲み終わるのを待って各々の仕事へと向かった。
もうちょっとヴィヴィのちっぱい感触を背中で味わっていたかったけど次回まで我慢します。って。
「…ん?」
俺は祭壇に置いてあるマールのちっぱい像に近づいてある事に気づいた。
周りは結構埃まみれなのに祭壇近くは比較的綺麗なのだ。
何かが置かれていたか、動かされたか。
そして新たな発見も。
「黒い羽…。この形、どこかで見たような」
祭壇の陰に黒い羽が落ちていた。しかも見覚えのある。
どこで見たんだっけな。
多分だけどこの羽は例のあの人のものだろうが、それ以外でどこかで見た気がする。
結構前、でも異世界には来てたはずだからそれまでの間。
うーん。思い出せん。
とりあえず今は他に手がかりがないかどうか探そあっ。シオンちゃんマールのちっぱい像に興味深々。
ママにそっくりだもんね。ぺたぺた触るよね。
でも壊しちゃダメよ。壊しちゃうと結界消えちゃうからね。
シオンはマール像をぺたぺたぺたぺた触った後に俺を見上げて、
「ぱぱぁー♡ まぁーまぁー♡」
と言ってきた。
さっきの回復しきれなかった心が一瞬で全快した。
ついに黒い翼を持つ例のあの人が…!