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第1章31
翌朝、今度はダンがオルソの部屋を訪ねた。その頃には嵐は止み、晴天が広がっていた。
「カナはどうした?」
オルソが尋ねる。
「眠った。雷が止んだからな。」
「昨日のあれは、なんだったんだよ?」
オルソに問われ、ダンは少し迷いながらも打ち明けた。
10年前に自分達を襲った惨劇。雷撃魔法で、カナの母と村人達が一瞬にして死亡した事。
カナはそれ以来、病的なまでに雷を怖がる。所謂、PTSD(心理的外傷)の状態だ。‘カナの病’とは、この事だったのだ。
回復魔法では治せないもの…それは、餓死と老衰、そして精神疾患なのである。
オルソはその朝すぐ、カナと顔を合わせる事なく、旅立った。病気の事を知られたカナは、きっと自分と顔を合わせにくいだろうと考えたからである。
目が覚めたカナは、既にケロっとしていたが、オルソの心遣いをありがたく思った。