第1章23
光体に照らし出された洞窟の内壁には、一面に壁画が描かれていた。それはどれも、キメラの絵で、古代魔術師と共に暮らすキメラの様子を表していた。
洞窟は広く、大型のグリズリーが3頭横に並んでも、歩ける程度の幅があった。分かれ道もなく、道は真っ直ぐ奥へと続いている。
3人は魔獣の出現に備えて、注意深く進んでいった。
30分程度、歩いただろうか。道は相変わらず1本道で、魔獣の気配もない。
「なんでぇ。魔獣なんかいないじゃねえか。」
オルソはそう口にしたが、それでもまだ警戒心いっぱいの声である。
「まだわからんさ。」
ダンは、むしろここまで魔獣が出なかった事を不審に思っていた。この場所に入った時から、強い瘴気を感じていたからである。これなら、魔獣が出ない方がおかしい。それに、この洞窟の周辺には、確かに多数の魔獣が出現した。
ダンはこう考えていた。魔獣はこの洞窟に踏み込めないわけがあるのではないかと。
「1匹も魔獣が出ないんじゃ、面白くない。」
カナは本気でそう言っているようだ。
カナが先頭になり、そのあとをダンとオルソが続いて歩いていた。だが、ダンは、さりげなく自分が先頭になった。
ただの魔獣なら、カナなら何の問題もなく処理できるだろう。だが、どうも嫌な予感がしたのである。
ただし、本来、未知の危険に遭遇する可能性がある場合には、魔術師は戦士の後方に下がっているのが定石なのだが。
カナは魔獣の急襲に備えて、既に抜剣していたし、オルソもバトルアックスを手にしている。一方、ダンは抜剣こそしていなかったが、魔法力を高めて、いつでも魔法が出せるように準備していた。