第1章22
洞窟の中は、当然のように真っ暗だった。入口から数m進んだだけで、足元が見えなくなってしまう。
「しまったなぁ。松明を忘れてたぜ。」
洞窟探索というのに、松明を持ってこないとは、確かに間抜けすぎる。
頭を抱えるオルソの横で、ダンは低い声で呟いた。
「光よ。」
すると、松明の数倍の明るさを放つまばゆい光体が出現し、3人の行く手を照らした。光体は、3人の歩く速度に合わせ、勝手に前に進んでいく。
「へー便利なもんだな。やっぱりお前はすげえぜ。」
オルソは、感嘆の声をあげた。
一方で、カナは特に驚きもしない。日頃から当たり前のようにダンの魔法の恩恵を受けているため、あまりありがたみを感じていないのである。
(別に感謝してほしいわけじゃないけどな。)
ダンは心の中で呟く。
実際、カナは、ダンがどれ程レベルの高い魔術師なのか、いまいちわかっていない。ダンの強さは勿論、認めてはいるのだが、ダンがいつも簡単そうに魔法を出すから、魔法は簡単なものだと思っている。ダンほどの実力をもつ魔術師は、おそらくこの大陸に片手の指で数えられる程度しかいない。それが理解できていないあたり、カナはある意味、かなりの世間知らずなのだ。