第87話 ◆趣味のはずが国家規模に!?〜つけ麺フェス外交編〜
「あくまで、趣味の範囲だったんですけどね……」
美月がぼそりとつぶやいたその横で、ギルド長がバンッと机を叩く。
「いや、素晴らしいッ! この“薬膳つけ麺・五香涼華”、あれは芸術だ!」
「うんうん! 私なんか、三杯いけましたわっ!」
クラリーチェがほっぺたを押さえてうっとりしている。
「おかわりの概念が崩壊する味だった……」
リリアーナもめずらしく手放しで称賛する。
「でも……どうしてこれが“外交”になるの?」
「ふふん、美月様、もうお耳に入ってないのですか? 各国の王族や貴族の間で、あの“涼華つけ麺”が話題沸騰中なのです!」
「“国民の健康と胃袋を守るラーメン”として、外務省推薦食にも登録されましたよ」
ギルド長が得意げに巻物をひらく。
「ちょっと待って……ラーメンが……国策……?」
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◆きっかけは“つけ麺交流会”
「実は先日、海洋国家・エルマーレの領主から“涼華つけ麺”を所望されまして」
「それで、各国の要人を呼んで“つけ麺交流会”を開いたのよ」
リリアーナが涼しい顔で言う。
「しかも気づいたら、演出あり・解説あり・薬膳診断ありの大イベントに……」
「……それ、私、知らないうちに、つけ麺外交官になってない……?」
「はい。すでに《公式任命書》にサインいただいております」
ギルド長がキラリと光る書類を差し出す。
「いつ!?」
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◆つけ麺外交、世界へ広がる!
海洋国家では――
「うおぉぉ……このミントと塩昆布の清涼感……」
貴族が海辺で箸を止めて感動の涙。
砂漠国家では――
「氷と胡麻の夢の邂逅……これが……涼だと……ッ!」
スパイス商人が身悶えしながらスープをすする。
そして天空国家では――
「つけ麺とは、“天の香”……!」
ゼファル王子が、月の光の下で麺を啜るシーンを詩にしたためていた。
「いや、食べるたびに文学作品生まれてるし!?」
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◆大使館じゃない、つけ麺フェス!
そんな中、ギルド長が提案する。
「この勢い、逃す手はない! 各国持ち回りで“つけ麺フェス”を開催してはいかがかと!」
「えっ、屋台村みたいな?」
「いえ、国家事業としての……“つけ麺外交フェス”です」
「いや、語感がおかしい……!」
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◆特設!涼麺テント村
こうして初回開催地、砂漠の都市バザールで――
「つけ麺フェス、開幕ですっ!!」
クラリーチェが特製ハッピ姿で雄叫びを上げる。
「塩味、胡麻味、柑橘風味……こっちは薬膳スパークリングつけ汁!?」
「これは……舌が、風になる……!」
リリアーナが思わずポエムを口走る。
「こっちは氷精石の上で踊る“極寒つけ麺”です!」
厨房担当の卒業生が元気よく差し出す。
「もはや麺が舞ってる……!」
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◆美月の苦悩(と歓喜)
そんな華やかな中、美月は一人で悩んでいた。
「私……ただ、つけ麺を楽しみたかっただけなのに……どうして世界規模に……」
「でも、美月様の趣味が、世界をつなげたのですわ」
クラリーチェがにっこり微笑む。
「……ふふ、それなら、もう少しだけ。世界の麺旅、続けてみようかな」




