第52話 新店舗50軒!劇場研修は青春の味!?〜真面目すぎる卒業生たち〜
「それでは今日から一週間、劇場型ラーメン演出研修を開始します!」
王都モデル店舗《美月薬膳拉麺・本館》の舞台に、美月の声が響いた。集まったのは学院最終学年の卒業予定生100名。来年度に予定されている新店舗50軒の開店に向け、選抜研修が始まったのだ。
「今回は厨房技術よりも“演出力”を見ますからね!お客様にどう感動を届けるかが大事です!」
「はいっ!!!」
生徒たちの目が、炊き立ての白米のようにキラキラと輝く。
「……あの、ラーメンの湯気の立ち方にも、表現の工夫が必要なのでしょうか?」
「演劇部の先輩に煙の巻き方を相談しました!」
「湯切りに合わせて効果音を自作してきました!」
「えっ……みんな、そこまで真剣に……!?」
美月がややたじろぐ中、リリアーナは頬をひきつらせながらも、手元のメモ帳に「優秀。全員真面目。情熱◎」と書き込んでいる。
「……これは想像以上に、演出に命をかけているわね……」
「うむ、だが私はむしろ誇らしいぞ!」
ギルド長も会場後方で腕組みしながら満足げだ。
研修2日目――
テーマは「開店時の一発目、感動の湯切り」。
一人の男子学生が、キラキラのタキシードに身を包み、バイオリンのBGMを流しながら一礼。そして、
「さぁ……薬膳の幕が、上がる」
と同時に豪快に湯切りを決める。
「なんだこれ!?かっこよすぎる!」
「バイオリン誰!?」
「わたしでーす!」(演劇部出身の女子生徒、背後で生演奏中)
クラリーチェはぱちぱちと拍手を送りながら、目をうるませた。
「ラーメンを通して、青春が爆発しているのですわ!」
リリアーナはその横でメモ帳を取り出し、そっと書き加える。
「……若干やりすぎ。だが情熱は本物」
そして3日目。
いよいよお客様役を迎えての“実演演出”だ。
ラーメン役のクラリーチェ、客役のリリアーナという異常なプレッシャーのなか、ある女子生徒が震える手でラーメン丼を差し出す。
「し、師匠の……美月先生の想いと……あなたの健康を願って……どうぞっ!」
「うむ。気迫がすごい……まさかラーメンで泣きそうになるとは……」
「スープ……うま……!というか……感情が乗ってる!?」
「おいしい……ありがとう……」
クラリーチェがうっかり本気で涙を流してしまい、会場が一瞬しんとなる。が――
「よしっ!その“ラーメンで泣かせる”演出、最高点つけましょう!」
美月の宣言で会場は拍手喝采に包まれた。
**
研修最終日。
全生徒の演出が無事に終了し、修了証授与の場面。
美月が一人ひとりに手渡しながら、そっと言葉を添えていく。
「あなたの湯気には、情熱がありました」
「その笑顔……支店に来るお客様、きっと元気になります」
「初心を忘れずにね。あなたたちのラーメンが、きっと世界を変える」
そして、リリアーナとクラリーチェが最後に並び、美月と握手を交わす。
「……まったく、あんたは忙しすぎるわ。助手業も、こっちは本気でやってるのよ?」
「わたくしはいつでも、皿洗いでも下足番でもやる覚悟ですの!」
「いや、もっとやっていいけど……無理はしないでね?」
美月は2人に微笑んだ。
春はもうすぐそこ。
新店舗50軒、そして若き演出家たちの門出を祝うように、王都の風があたたかく吹き始めていた――。




