第12話 お孫さん
目を開いたら知らない天井だった。
あれ? ここはどこだろう?
一瞬混乱した後。
「あ、そうか、王都に着いたんだっけ」
王都に着いてから一晩が明けた。
「そんなわけで、今日からここを拠点に活動していきます」
『配信感謝』
『王都か、王都にはレイドイベント的なのはなかったよね?』
『代わりにワールドクエストがあったね』
ワールドクエストって単語は以前にも聞いたね。
GMさんからはメインストーリーを進めるように言われたんだけど。
「そのワールドクエストってやつがこのゲームのメインストーリーってことあってますか?」
『そうそう』
『要するに物語の本筋に関わるような世界的なクエストのこと』
『共通の目的はあるんだけど、どういう風に関わるかっていうのはプレイヤーによって違う感じ』
『四天王襲来もワールドクエストの一つだよ』
『ただ、集団で戦うレイドイベントではなかった』
なるほど、最初の街のやつとはまた別のやつなんだね。
「ともかく、何かしらのイベントをこなさないといけないってことですか?」
『そうそう、そんな感じ』
『とりあえず参加するためには冒険者ギルドで貢献度を稼ぐ必要がある』
『まぁ、それも俺らと同じとは限らないけど』
まずは、冒険者ギルドに行ってみないとわからないってことかな。
「それじゃあ、行ってみることにします」
出発しようと準備をしていたんだけど。
コンコン
「アリスちゃんいるかしら?」
ドアがノックされて誰かが訪ねてきた。
この声はモーリスさんかな?
「はーい。今出ます」
ちょうど出るところだったので、そのまま扉を開ける。
「おはよう。アリスちゃん」
「おはようございます」
ドアの前には、思っていた通り、モーリスさんがいた。
だけど、モーリスさんは一人ではなかった。
「……」
モーリスさんに隠れるようにこちらを見ている女の子が一人。
年齢的には私よりちょっと下かな?
モーリスさんにしがみついて、隠れながら私の方を見ている。
『可愛い女の子来た』
『おまわりさんこいつです』
『おまえら忘れるなよ? この放送GMも見てんだからな』
なんか視聴者さんたちが言っているけど、とりあえず無視。
「ほら、ルーナ。挨拶しなさい」
モーリスさんが私の視線に気づき、女の子を前に出す。
女の子は少し緊張したようだったけど。
「ルーナです……」
私に挨拶をしてくれた。
可愛い。
思わず微笑んでしまった。
「私はアリス。ここを借りさせてもらっているよ」
挨拶をするとルーナちゃんは少し安心した様子だ。
「ルーナは私の孫なのよ。ちょっと人見知りのところがあるけれど、仲良くしてあげてね」
「はい。こちらこそ。よろしくねルーナちゃん」
「……はい!」
頭を撫でると、ルーナちゃんは笑ってくれた。
「それで、モーリスさんはどうしたんですか?」
何か用事があったのかな?
「そうそう、アリスちゃん。お店をやるつもりはある?」
「えっと、お店、ここでですか?」
「ええ、私もここでお店をやっていたから、アリスちゃんもどうかなぁって」
お店かぁ。正直、私一人だと流石に無理だよね。
街にいた時は実力低かったのもあるけど、対してお金にならなかったし。
「もしやるなら、この子の勉強にもなるから助かるんだけど」
うん?
「ルーナちゃんの勉強ですか?」
どういうことだろう?
「この子、将来は錬金術師になりたいらしくて、祝福までに少しでも勉強したいんですって」
祝福は15歳にならないと受けれない。
錬金術師になれるかはわからないけれど、事前に知識や経験があると職業に就きやすいとは聞いたことがある。
なるほど、この子はそのための経験を積みたいわけか。
「私が教えてあげられれば良かったんだけど、やっぱり現役の子の方がいいと思うのよ」
うーん、そういうことなら。
「いいですよ。どの道、商業ギルドとかへの依頼で色々と作るつもりでしたから」
そこで余った物をお店で売るのは全然構わない。
「ルーナちゃんが店員さんをやってくれるの?」
「は、はい! 頑張ります」
つまり、私がルーナちゃんに錬金術を教える、その代わりにルーナちゃんは私の作ったアイテムを売ってくれるというわけ。
うん、ギブアンドテイク。
いい関係だね。
「よかったわ。アリスちゃんが引き受けてくれて」
「でも良かったんですか? 王都には他にも錬金術師さんがいらっしゃるんじゃ?」
突然現れた私に大切なお孫さんを預けて大丈夫なんだろうか?
「大丈夫よ。昨日も言ったけど、私人を見る目はあるつもりなの。それに……」
モーリスさんは少し残念そうにしながら続けた。
「他の錬金術師さんを悪く言いたくはないけれど、ルーナを任せるのにはちょっと心配で……」
そうなの?
『あー、確かに無駄に高かったりしたなぁ』
『大したアイテムではないのに、値段倍くらい違ったよな』
『お陰で、王都では錬金術のアイテム手に入れるのほんと苦労したよ』
どうやら視聴者さんたちも心当たりがある模様。
『まぁ、いつの間にか店主変わってたりしたよね』
『王都でのメインイベントが終わったあたりだっけ? 知らない間だったよね』
『なんでだろ?』
ふーん。まぁ、いいお店じゃなかったから普通に潰れたのかもね?
「よろしくお願いします!」
ルーナちゃんが立派な錬金術師になれるように私も頑張らないと。




