第50話 お疲れ様です
怒涛のゴブリン襲撃イベントから数日が過ぎた。
その間に、冒険者ギルドと商業ギルド主催の祝勝会に参加したり、忙しい日々を過ごしていた。
「というわけで、お疲れなんですよ」
『乙』
『見てる分には楽しかったけどなw』
『まさか、商業ギルドのマスターが酔っ払って酒勧めてくるとはw』
『お酒は二十歳になってからだよっ!』
まさか、リーズさんがあんなに酒乱だとは思わなかったよね。
正直、疲れたのはそれに絡まれまくったからと言っても過言ではない。
まぁ、それ以外にも疲れたことはあったけどね。
「それにしても乗り切れて良かったです」
『それな、ボス生きてた時まじで焦ったわ』
『結局人数ズレてたのはあの自称勇者のせいってこと?』
『そもそもあの自称勇者ってどういう扱いなんだろ?』
『その辺りGMが検証中ってツイートしてた』
『GMがわからんなら俺らもわからんなぁ』
完璧な作戦だと思ったらそもそも人数計算が違ってて爆弾の数足りないのは本当に危なかったなぁ。
「あ、そういえばあの自称勇者は結局、追放になったらしいですよ」
件の勇者(笑)はあの場からそのまま逃亡して行方不明らしい。
逃げる姿は見たから死んだわけじゃないとは思うけど。
とりあえず、色々なやらかしが判明して無事に追放になったということをギルマスが言っていた。
今後また会うことがあるかはわからないけど、できればちゃんと更生してほしい。
まぁ、あいつのことはいいや。
「ここのところ忙しくて気が抜けたのか、何もする気起きないんですよ」
『なるほどな』
『それでも放送は立ち上げると』
『配信者の鏡である』
「うん、配信レベルも上げなきゃいけないからね」
とは言っても、配信時間200時間まではまだまだ結構ある。
「200時間って相当大変だよね」
『せやな、登録者数とか再生回数だけじゃないのがな』
『おそらくだけど、最初は普通に楽しんで欲しいってことじゃないかな?』
『人気配信者がやってきて速攻クリアで姫プレイさせないための仕組みかと』
なるほど、そういうことだったんだ。
『記念放送とかするの?』
『ゴブリン討伐記念放送とかもしてないね』
あー、そういうのって求められてるのかな?
「皆そういうの見たいんですかね? 今日だって、何もせずに喋るだけなんですが」
『需要ありまくりやで!』
『アリスちゃんとおしゃべりしたい!』
『自分の人気もうちょい意識して』
人気かぁ、なんか気がついたら視聴者数とかとんでもないことになってるのはわかってたけど。
正直、GMさんが拡散してくれたのが効いただけで、私自身はいまいちわからないんだよなぁ。
『実際問題、いろんな発見してるし、割りとゲームに役立つ放送ではある』
『自分はゲームプレイしてるけど、違う側面からゲーム見れてるみたいで楽しい』
『完全ソロでゴブリン襲撃イベント乗り切るとか、見るだけで楽しいしな』
『まぁ、アリスちゃんにとっては、大変なんだろうけど』
『どういうこと?』
視聴者数が増えてきてその辺りの私の事情を知らない人も多いみたい。
「いい、機会だからもう一回整理しておこうか」
『おねしゃす!』
というわけで、一通りの説明をしておく。
目覚めたら、アリスになっていたこと。
ログアウトできないこと。
さらに、旅人認定されていないので、転職もできないこと等々を説明した。
『そんな事情があったのか』
『あー、サンセイがそんなこと言ってたっけ。でも、流石にネタだと思ってた』
『サンセイ曰く、プレイヤーデータ見つからないって言ってたから、ネタにしても大分手が込んでる』
『GM公認の異世界転生OR天才ハッカーか……』
『ゲームの中に閉じ込められるのは異世界転生でいいのか?』
『デスゲーム? のが近い?』
「うーん、私としてはアリスとしての記憶もちゃんとあるから、閉じ込められたってのは違和感あるんだよね」
アリスじゃなかった頃の私の記憶と混ざり合ってるから、少し曖昧になってるけど、アリスとしてこの世界に生きてきた記憶がちゃんとある。
「それに私としては、こういうゲームに参加した記憶とかないんだよね、そもそも聞いたこともなかったし」
ゲーム名なんだっけ? VWO?
『アリスちゃんってリアルだと、いくつくらいなんだっけ? VWOは話題に上がらなかったの?』
『CMとかもバンバンやってるから、どこかでは聞くよな』
『よほどテレビ見ないとかじゃない限りはどこかで聞くよな』
『FDHMDが一般に出てからもう5年くらい経つしな』
うん?
「FDHMDってなんですか?」
聞いたことのないワードだったので気になった。
『えっ?』
『そこから!?』
『嘘やん! アリスちゃんどんな生活してたんや?』
えっ? そこまで驚かれること?
『フルダイブヘッドマウントディスプレーの頭文字を取ってFDHMDだよ』
『文字通り、フルダイブ対応のHMDだ』
『人間の脳波を読み取ることで、まるでその世界にいるかのような感覚が味わえる』
『今聞くとすげぇ技術だよな、実用化された時はびっくりしたわ』
へぇそんな凄い機械があるんだ……って、ちょっと待って欲しい。
「えっ? それが何年前くらいに出てきたって言った?」
『研究施設とかだと、10年前くらいから使ってたって話?』
『一般販売され始めたのは5年前くらいだね』
5年前……、えっ?
5年前って言うと、私だって普通にテレビとか見てたよ。
その時に、そんなものが一般販売された?
『相当話題になったよな』
『学校の先生とかも、授業中に熱弁してた』
『授業せいwww』
『でも、わかるわ、俺のとこもそうだった』
視聴者さん達が、VDHMDの話題で盛り上がっている。
でも、私の頭にはそれが一切入ってこない。
だって、そんなの私は聞いたことがない。
それは絶対におかしい、そう言い切れる。
私は、まさかの疑念を抱いた。
「ねぇ、皆、今って西暦何年なの?」
恐る恐る聞いてみた。
そして、すぐに答えが返ってきた。
『今は、2063年だな』
…………
それは、私が知っている時代から40年も過ぎ去っていた。
これにて第一部終了です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
この終わり方でも分かる通りお話はまだまだ続きます。
次回更新はお休みも兼ねまして、再開は6月15日を予定しております。
よろしければアリスの物語にお付き合いいただければと思います。
それではここまで読んで頂いた方に感謝を。本当にありがとうございました。




