第43話 四天王登場
目の前が爆風と砂埃で何も見えない。
耳も遠くなってしまったみたいで聞こえづらい。
『うわああああああ!!!』
『音やばっ!』
『音量注意!』
『だから激遅注意やめろと!』
『どんだけ投げたんよ!』
どれだけだろう?
冒険者の人たちが30人くらいで、一人が1個ずつくらい投げたはずだから、
「多分、今は30個くらいかな?」
一応、私がその辺り指示をしておいたからその通りになってるならだけど。
ちなみに、私の作戦はギルマスが即答で了承してくれた。
いつの間にそんなに信用されたんだろう?
『30とかwww』
『一瞬で1000近いダメージとかこの時点のダメージちゃうでwww』
『さ、流石に一人じゃ無理だから……』
『半分くらいは死んだのでは?』
『後が相当楽になるね』
『いや、待てよ? 爆弾はまだあるはず』
うん、当たり前だよね。
今投げたのはたかだか30個だよ。
そういうわけで、
「総員2投目!! 投げろ!!」
爆風が少し晴れてきて、ゴブリンが見えてきたところで、またギルマスが叫ぶ。
「音量注意」
言って耳を塞いで伏せる。
『また!?』
『ちょ、まっ!』
ドガアァアアアアアア!!!!
爆風再び。
さっきと同じ、30個の爆弾が再び、ゴブリン達を襲う。
合計60個。
通常ゴブリンの数が60って聞いてたからそれだけで倒せる計算だ。
爆弾は範囲攻撃でもあるから、それ以上は確実に倒しているはず。
そして、それだけ倒せば、リーダーにまで攻撃が届く。
砂埃が収まるのを再び待つ。
狙うは、赤いキャップを被ったゴブリンリーダーだ。
「いたぞ! レッドキャップだっ!」
冒険者の一人が叫んだ。
「レッドキャップに向かって投げろ!」
それに向かって、最後の爆弾が投げられた。
レッドキャップのHPは200と聞いている。
だから爆弾の数は、きっちり7個だ。
爆弾を投げられたレッドキャップが慌てて逃げようとするのが見えた。
しかし、ここで投げた7個は冒険者の中でも、投げ物がうまい人のものだ。
無事にレッドキャップの逃げ先を巻き込む形で爆弾が爆発する
さっきよりも、いささか落ち着いた爆発。
そのおかげで、レッドキャップが爆発に巻き込まれて、浮き上がるのが見えた。
「おーっ!」
『おーってwww』
『たーまーやー』
『綺麗に飛んでますなぁwww』
『ちゃんと計算して投げてるの偉い』
「その辺りはGMさんに感謝ですね、数がわかってればそれだけ作って投げるだけですから」
わかってなかったら、さすがにこんな作戦は立てられなかったよ。
GM『まさか、本当に用意するとは思わなかったですけどね』
『それな、一人でこの数用意するのは正直、狂気だと』
『実際のところ、アリスちゃんのこの特殊な状況が整って始めてできることだけどね』
『一番最初のイベントでゴブリンの数とHPがわかってる上で、高レベルの錬金術師がひたすら爆弾作る』
『流石に同じことはできんわなぁ』
『でも、なんかのイベントで一斉爆弾作戦とか楽しそう』
『後で掲示板で募集するか……』
『参加希望で』
私が特殊な状況っていうのが大きいよね。
もっと敵の数が多かったりしたらできないと思う。
飛び上がった、ゴブリンリーダーが地面に落下した。
動かない、どうやら無事に倒したようだ。
リーダーが倒された残りのゴブリンたちは、混乱しているようだ。
「レッドキャップの撃退を確認!」
ギルマスの声に、冒険者たちが沸く。
一番強い敵を倒したと思ったらそれもしょうがないか。
でも、残念ながらこれで終わりじゃないんだよなぁ。
湧き上がる皆をよそに、私は上を見上げる。
そろそろじゃない? そう思っていると、案の定、急に辺りの温度が下がったような感覚。
太陽が雲で遮られ、暗くなる。
『うわああああああ!』
『トラウマが蘇る!!』
『来るぞ! 四天王!』
『あの野郎許せぬ!!』
コメント欄が阿鼻叫喚だ。
黒い雲が飛んできた。いや、雲にしては動きが早すぎるし、何よりも戦場の真上で止まった。
喜びに湧き上がっていた冒険者達が、ピタッと止み、私と同じようにそれを見上げる。
「ふふふっ、まぁ、ゴブリンなどこの程度ですか」
黒い雲から声が聞こえる。
「ですが、遊びはまだまだ続きますよ、ここからは……」
黒い雲が晴れる。
そこにいたのは、骸骨のような見た目をした何かだった。
「私、四天王のネクロと遊びましょう!」
あれが、噂の四天王。ネクロマンサーのネクロか。
ネクロは持っていた杖を掲げると、なにやら唱え始めた。
杖の先から、黒い何かが飛び出して、倒したゴブリンへと吸い込まれていく。
その中には、さっき倒したゴブリンリーダーもいる。
「四天王ネクロが命ずる、死から蘇りし哀れな魂に、狂化という救いを与えよ!」
黒い何かを吸収したゴブリンは、何かに操られるように立ち上がる。
その見た目は、先程とは変わっていた。
『ゴブリンの進化のお時間です』
『さらに暴走状態も付与です』
『エグいよなぁ……』
『初見の時はビビったよなぁ』
『アリスちゃんはさくっと来たけど、俺たちの時は、もっと時間かかったからなぁ』
『敵の数は多かったけど、弱い感じもしてたから爽快感が売りのイベントかと思ってたわ』
『地獄につながるとは誰も思わんかったやろなぁ』
私は聞いていたから知ってたけど、下にいる冒険者達が絶句している。
倒したはずのゴブリン達が、蘇って、更に強化されたのだ。
リーダーとか、さっきよりもかなり大きくなっている。
もう、ゴブリンではなく、オークというような見た目だ。
「さぁ、第二ラウンドの開始ですよ」
ここからが本番だよ。




